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焼き付けて

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熱い、痛い、熱い、痛い。
苦しくて、辛くて、痛くて。
初めて両親から聞いた時、理解が出来なかった。
自分の家系は、呪われていると。
他人に直接触れられると、肌が焼けてしまう。
火傷をしてしまうらしい。
けれど、一つだけその呪いが解ける方法があるらしい。
それは『運命の人とのキス』
熱くて、痛くて、苦しいけれど、運命の人とキスに耐えられれば、それが無くなるというらしい。
どこのお伽噺かと思うほど、馬鹿らしかったが、この歳になるまでにたくさん経験したから、よく分かっていた。
初めて好きになった人と、キスをした時、熱くて、痛くて、苦しくなった。
それからしばらく火傷に苦しんだ。

「痛い……熱い……痛い……」

真っ赤に焼き付いた後が、痛々しく残っていた。
それから、人を好きになっても、あの痛みが蘇ってきて一歩を踏み出せないでいた。
だから、君を好きになった時、怖くて仕方なかった。

「……もう少し、待って」

と言えば、優しく笑って頷いてくれた。
触るのが、触られるのが、怖かったのに、君が優しく滑らせた指が、熱くても平気だった。
くっきり残った火傷跡は、熱くて痛かったはずなのに、それ以上に愛おしく感じていた。
もっと触れて、もっと、もっと、もっと。
そっと置くように、腫れ物を触るように、君が僕の首筋にキスを落とせば、唇の形をしっかり残して火傷跡が浮き上がる。
愛おしいかった。
もっと欲しいと、湧き上がった。

「痛い、でしょ?」
「……うん。でも、もっと触って」

キスしたら、包帯を巻く。
腕に、足に、首に。
包帯なんていらない。
直接触って。
もっと、もっと、もっと、僕に触れて。
君が運命の人でなくていい。
僕にもっと、焼き付けて。








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