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Give Healing, Get Love.




また終電を逃してしまった。
まぁいいや、今日は久しぶりの休みなんだから、ゆっくり帰れば。

「……え、」
「よォ」

思いがけない人物がいた。
本当に、何故この人がいるのか、さっぱり分からなかった。
派手な車に寄りかかり、煙草を吸っている彼に恐る恐る近づいてみる。

「えっと、碧棺さん……?」
「乗れ」
「え?」
「早くしろ」
「はっ、はい!」

訳もわからず、車に乗り込んだはいいが、彼は一言も喋らない。
このまま山に連れていかれ、埋められるのではないのか? それとも海に沈められるのか? 嫌な妄想が駆け巡った。
が、着いた先はいかにも高そうな焼肉店。

「あの……」
「さっさと降りろ。肉食うぞ」
「え、あ、はい?」

流石、こんな深夜でも、人は多くいるらしい。
個室しない店内でも、話し声が所々から漏れている。

「テキトーに頼むぞ」
「はい……」

こんな個室の店に来たことがないだけでも、緊張するのに、目の前に居るのはヨコハマディビジョンの碧棺左馬刻だ。
何故、こんなことに。
もう何連勤もやって働かない頭を、動かそうとしても、動かないものは動かない。
まぁいいや。
かんがえることを止め、肉を食べることに専念した。



こんなにも美味しい肉を、満腹になるまで食べれるなんて。
不眠続きで、満腹になったのだ、眠くもなる。

「あ、お支払いは……」
「いい。次行くぞ」
「え、あの、」

あの目に睨まれれば、逆らうことは出来ない。
何故、こんな事に。
さっきもだが、この人は一切話さない。
ただ、車を運転し、肉を食す。
何がしたいのだろうか。

「着いたぞ」

先程の店から十分もしない所に着いた。
促されるように、店に入ると、なんだか少し中は薄暗い。

「碧棺で予約を」
「お待ちしておりました。お一人様のご予約ですが、どちらの方が?」
「コイツを」
「かしこまりました。では、奥へどうぞ?」
「え、え?」

丁寧な接客の女性に連れられて、奥に向かうが、彼は煙草を咥えると外に出ていってしまった。

「あ、あの、ここは、なんですか?」
「ここは、ヘッドスパを専門にやっているリラクゼーションルームですよ。この店は土地柄朝までやっているんですよ」
「へぇ……」
「では、お客様に最高の二時間をお届けしますね。きっと良い二時間の眠りです」

その後のことは、覚えていない気が付いたら、寝ていたし、肩こりも目の霞もスッキリしていたのだから。
すごい。
後で聞いたら、半年は予約が埋まっているらしい。
こんなに気持ちいいなら、半年待ってでも来たいかもしれない。

「終わったようだな」
「はい……」
「あの、ずっと待ってたんですか?」
「……行くぞ」
「……はい」

何を考えているのだろうか。
やはりさっぱり分からない。
それにしても、二時間をマッサージしてもらったおかげか、余計に眠気が襲ってくる。
ダメだ、寝たら、ここで寝たら……。



それからどのくらい寝ていたのか分からないが、目が覚めた時、車は家の前に着いていた。

「着いたぞ」
「あれ、えっと、すいません。寝てしまって」
「ただのうたた寝程度だったから、別に」
「はぁ……」
「じゃあ、またな」
「は、はい……」

去りゆく車を見送るが、首を傾げていることに自分でも気が付かなかった。

「なんだったんだ……」

まぁ、美味しい肉に、気持ちのいいマッサージを受けられたから、今日はいい日かもしれない。
一二三が帰ってくる前に、朝食を用意して、寝てしまおう。
休みを寝て過ごすと、決めていたのだから。

「はぁ……」
「独歩!?」
「え、」
「独歩くん!」
「あれ、一二三? それに先生まで……」
「独歩ぉぉお!!」
「いってぇ……。なんで、一二三が帰ってきてるんだ……」
「独歩君、もう朝の六時になろうとしているんだよ」
「え? そんな時間?」
「俺っちが帰ってきても、独歩いないし! 電話しても出ないし! 先生に連絡して、それで」
「あぁ……」

記憶だと、あの人の車に乗ったのは、三時過ぎだったはずだけど、俺が起きるまで待っててくれたのか?

「独歩君?」
「え、あぁ、すいません。先生にまでご迷惑をお掛けしてしまって」
「君が無事なら、それでいいんだよ。それで、何処に行ってたんだい?」
「それが……」

この日から、俺が休みの日が訪れる度、彼が現れるとは思いもよらなかった。











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