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HQ!!


「日向だけ、ズルいよね」

そう呟いたのは、勉強に飽きつつある山口だった。
学年も1年上がり、2年生へと進学して初めての中間テスト前。
日向、影山、山口、月島、谷地の5人は、谷地の家に集まりテスト勉強をしていた。
山口、月島、谷地は、テストへはなんら不安が無かったのだが、案の定、日向と影山が危うかった。
2人が赤点回避出来るように、開催された勉強会。
月島は嫌々だったが、なんとか参加してくれた。
そして、先程の発言だ。
ふと、何を思ったのか、机に頬杖を付いたまま、日向のことを見て呟いた。

「何が?」
「いやさ、日向だけ、谷地さんに『日向』って呼び捨てだよね」
「へっ!?」
「あぁー確かにな」
「俺が日向でいい! って言ったんだよ!」
「いいなー、なんか特別感ある」
「なんだよ、なら山口も呼んでもらえよ!」
「……谷地さん」
「へあっ!」
「俺も呼んで!」
「えぇ!?」と、顔を真っ赤にする谷地を他所に山口はワクワクした表情で谷地を見つめる。
「あ、待って!」
「え?」
「名前はどう?」
「な、ま、え……?」
「俺は忠で、ツッキーのことは蛍って!」
「えぇ!?」
「ちょっと山口、僕のこと巻き込まないでくれる?」
「ごめんツッキー。でもさ、澤村さんたちの代見てたら羨ましいって思わない?」
「澤村さんたち?」
「そうそう! みんな信頼し合って、呼び捨てにしてる感じあるじゃん!」
「あぁ、それ分かる!! 清水先輩が澤村って呼んだり、大地さんが清水って呼んだりしてるのなんかいい!」
「いいよな!」

何故か盛り上がる日向と山口に呆れて、自分の勉強に戻る月島。
この会話に一切参加しないと影山は、必死に谷地の書いたノートを写していた。

「ねぇ、ねぇ、谷地さん! 名前、名前で呼んで!」
「え、えぇ……え、えっと……た、忠くん?」
「……う、うん」
「なんで、照れてるんだよー! 山口が呼べって言ったんだろ?」
「そうだけど、なんか照れるね……」
「うぅ……、私なんぞが呼んでいいのでしょうか……」
「谷地さんだから、いいんだよ! はい! 次ツッキー!」
「え、僕のことはいいんだけど」
「け、け、け、蛍、くん……」
「……はい」

真っ直ぐな瞳で見つめられながら、呼ばれるのはやはり恥ずかしいものなのか、珍しく月島が赤くなっていた。

「よし、次は影山!」
「えっと、とび、お、くん」
「おう」
「お前なんとも思わないのかよ……」
「別に」
「はいはい! じゃあ最後俺!」
「えっと、翔陽?」
「おおお! 俺だけ呼び捨て!」
「いや、なんか、日向って呼んでたから……」
「なら、俺らも呼び捨てで!」
「俺『ら』もって、山口」
「はい! はい!!」
「はい、日向!」
「谷地さんのことも、みんなで仁花って呼ぶのはどうでしょう!」
「えぇー!?!?」
「ダメ?」
「いや、そんなことは!」
「仁花!」

ニカッと笑う太陽のような笑顔。
谷地には少し日差しが強すぎたのか、目を覆い隠した。

「ねぇ、勉強しなよ」
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