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四季綺譚



ほんのりと暖かい風が吹いてくる春の夜。
冬を司る天使たちが、各々の寝床へと帰っていく。
次の冬が来るまで、起きることがない天使たちは、深く深く眠りにつく。
春月は、自分を起こしてくれた冬を司る天使が、眠りにつくのを見守ると、月へと手を伸ばす。

「暖かい……」

優しく包み込むように、抱きしめていると、ふと緑色の葉が目に止まった。
モミジとイチョウ。
小さくまだ小さな葉だけれど、この葉が大きく育ち、紅葉は紅く、イチョウは黄色へと変わると聞いた時、とても驚いたことを春月は思い出した。
春が終わると、自然と眠りについてしまう春の天使たちは、秋を見ることはこの先もきっとない。
だからこそ、春月は見てみたかった。
どんなに美しいものなのか、見てみたかった。

「きっと、綺麗なんだろうな……」

春に咲く花々も美しい。
けれど、もう見飽きてしまったとも思っていた。
初めて、夏に咲く向日葵を見た時、彼女は言葉を失った。
自然と眠りについてしまうはずなのだが、その時は夏の花の天使に言われたことが忘れられなくなり、頑張って起きていた。
そして、一面に咲く向日葵畑に目を奪われた。
その日から彼女の瞳の色は向日葵のような色に染まってしまったくらいに。

「また、向日葵見たいな」

そんなことを考えていると、また夜が明けてきた。
夜の天使が眠りにつく時、春月も月を抱えて、共に空から降りていく。
再び夜になる時まで、春月は他の天使たちの所へと向かった。
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