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第一章

馬鹿にしたりせずに、コッチだよと案内してくれるようだ。
バカとか言っちゃって悪かったなぁ。


「先輩も呼ばれたって、生徒会の手伝いにですか?」
「ふふ。やっぱり僕のこと、知らないんだね」
「え?」
「まぁ、そんな所かな。生徒会の手伝いってことは、蓮君は首席で合格したんだね、凄いよ」


はぁ、どうも、と頭を軽く下げながら俺たちは木々による包囲から脱出した。
色白先輩はまるで自分の庭のように生徒会棟へと進んでいく。
二年生にもなると迷わなくなるんだな。


「はい、着いたよ」
「…うわぁ」


俺は生徒会室の前に立って声を出す。
うわぁ↑じゃないぞ?
うわぁ↓っていう引いた声だ。
だってこれ、扉が見た目からして重厚過ぎる!
なんつーか、洋風の城みたいな華やか~な感じ。
一般家庭の平凡には既に目に毒だ。
開けて開けて、と色白先輩に背を押されてトントンとノックして扉を開ける。
見た目と違って意外と簡単に開くその扉に、流石金持ちと妙に感心した。


「失礼しまーす、一年の如月 蓮です。手伝いに来ましたー…」
「あぁ、来たか」


中を見るとまた煌びやかな内装で…機能的にはどうなんだよってつい疑問が湧く。
俺に応えた人を見ると、眼鏡をした真面目そうな人だった。
デキるイケメンさんって感じだ。


「待ってたよ~、レンちゃんっ」


俺より少し小さい先輩がニコニコと笑いかけてきた。
また可愛らしい子供みたいな雰囲気の先輩だな。


「よぅ来たなぁ、蓮クン」


金髪の人が笑みを浮かべる。
イントネーション的に関西の人かな。
人の良さそうなイケメンさん。
…奏の言う通り、皆さん容姿端麗でした。
そりゃ親衛隊も出来るわ。


「入ってくれ。あと一人いるんだが、まだ…」


困惑した雰囲気だったデキるイケメン先輩は、俺の方を見て目を見開いた。
…いや違うな、俺の後ろの方だ。


「真白!!」
「やぁ、こんにちは神谷」
「こんにちは、じゃないだろ! 何回連絡しても反応せずに…何やってたんだ!?」
「いつも通りかな」
「寝ちゃってたんだ~、ユイちゃん」
「相変わらずおっとりさんやなぁ、結クンは」


あはは~、と笑い声が湧く中で、笑い事じゃないだろ!! と一人説教を始めるデキるイケメン先輩…改め神谷先輩。
ん~…? これどういう状況?
つまり色白先輩…改め、真白先輩(ニアピン!!)は手伝いをサボって寝てたってことか?
なら俺も一緒に寝れば良かった…。
神谷先輩も無邪気先輩も関西先輩も(←俺命名)、生徒会役員だからと言ってお高くとまってはないみたいだけど、手伝いはサボれるならサボりたかった。


「はぁ…で? 何故真白は如月と来たんだ?」
「蓮君に起こしてもらったんだ」
「起こしてもらった? …珍しいな。お前が他人に起こされても機嫌が悪くならないのは」
「むしろ機嫌良いよね、ユイちゃんっ」


え!? 真白先輩って寝起き悪い人だったの!?
やっべー…俺そんな人に開口一番バカとか言っちゃったよ。
外でうつ伏せで寝るとかバカか、みたいなノリで。


「如月。真白を連れてきてくれて感謝する。じゃあ早速……」
「ちょっと待って神谷。蓮君、生徒会役員のこと知らないんだ」
「えぇ!? 俺らのこと知らん生徒、まだ聖条におったんか!?」
「確かに、赤面とかじゃなくて困っちゃってるって感じだもんね~。そっかそっかぁ」


驚く関西先輩に、何故か面白そうに頷く無邪気先輩。
神谷先輩なんて目を瞬かせた後眉根を寄せた。


「そうか…傲慢だったな。自己紹介もせずに頼み事をするなんて恥ずべきことだった」
「いや、俺が色々興味無かっただけなんで」
「ふふっ。レンちゃん面白いね~。じゃあ自己紹介!! 僕は書記の木下 恵! よろしくね、レンちゃんっ」
「俺は会計の野崎 隼人って言いますぅ。よろしゅうな、蓮クン」
「はい、お願いします」


無邪気先輩が木下先輩で、関西先輩が野崎先輩か。
じゃあ次は、と神谷先輩が俺を見る。
神谷先輩は生徒会長だろ、聞かなくても分かるって。


「俺は副会長の神谷 潤だ」
「…副会長? え? 生徒会長じゃないんですか?」


神谷先輩は苦笑して頷く。
まさかの副会長?
じゃあ生徒会長は…あ、そう言えばさっきまだ一人来てないって言ってたよな。
じゃあ後で来るのかな。
そう思っていると、柔らかな笑い声と共に後ろから肩に手を置かれた。
振り返るとニコリと微笑む真白先輩。


「? 真白先輩、どうかし…」
「そして僕が、聖条学園生徒会長の、真白 結です。よろしくね? 蓮君」
「……っうえぇぇぇえ!?」


場違いな平凡の驚愕の声が、煌びやかな生徒会室に響き渡った。
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