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第一章

☆☆



「お前放課後、生徒会室に行け」
「はぁ?」


昼休み、俺は貴志たちと昼食をとっていたら携帯が震えだした。
それはまたも奏からの呼び出しで、校内放送される前に急いで駆けつけると開口一番こう言われた。


「生徒会室に俺が? 何で」
「入試で首席だった奴は強制的に生徒会の雑用係になる」
「辞退します」
「強制だっつってんだろ」


雑用係って…奏のだけでも面倒なのに。


「雑用だったら最下位にやらせりゃ良いじゃん」
「最下位ごときがあの生徒会に近付けるわけねーだろうが」
「あの?」


俺が首を傾げると奏は目を丸くした。
そんな顔してもイケメンって…世の中不公平だな。


「如月、まさか知らねぇのか? この学園の生徒会」
「知らないけど?」
「…お前入学式サボったろ」


何故バレた!? ってまぁ、生徒会が入学式で挨拶したんだろうな、失言でした。
お前は外見と中身のギャップがなぁ…と呆れたように呟かれた。
平凡がサボるわけないって? 甘い甘い。
つーかギャップについて奏には言われたくないよ、このホストヤーさんが。


「良いか? 聖条学園の生徒会は人気投票で決まるんだよ」
「人気投票って…」
「容姿端麗、文武両道、家柄良し、外面良しの集団だ」


…外面良し、に軽く寒気を覚える。
つまり性格悪い奴もいるかもしんないってことだよな。


「因みに俺は好かん」
「僻むなよ奏…いだっ」


バシッと教科書で頭を叩かれた。
ちょっと先生方見ましたー?
奏に苛められてんですよ俺。


「そんな奴らの中に最下位のバカ入れてみろ」
「あー、足手まと…」
「他の生徒から職員に苦情来るだろーが、面倒くせぇ」
「結局自分らの為かっ!」


俺たちの会話が耳に入っている先生方は目を泳がせて、しれっと仕事に集中しているフリをする。
くっそ~、我が身可愛さに優秀な生徒を売るなんて!


「でも首席のスーパー天才入れても苦情来るだろ」
「何気に自分の株上げんな。まぁ、苦情来ても俺らはそれに『テメェらがバカなのが悪ぃんだよ』と言える。楽な仕事だ」


な、なんつーヒドいことを…ん? ちょっと待てよ。
超天才(庶民)特待生の頭が気付いてしまった。
苦情が受理されないってことは、その怒りの矛先は何処へ向かう?
その答えはきっと、その最下位の奴でも分かるだろう。


「ねぇ俺…ヤバくない?」
「頑張れ、如月」


ニコリ、と爽やかな笑みで奏は俺の肩に手を置いた。
うわー、奏の満面の笑みなんてレアショットー…じゃなくて!!


「嫌だイヤだ辞退するーっ!! 俺バカなんですカスなんです平凡なんです生徒会役員様に近付くなんて恐れ多いですー!!」
「心にもねぇこと言うなよ、スーパー天才特待生」
「だってそんな奴らなら普通に親衛隊とかいるだろ!?」
「たーくさんいるぞ~」
「イヤだー!! 貴志の親衛隊の嫌がらせにも最近慣れてきたばっかなのに!!」
「──如月、大丈夫だ」


涙目になりながら辞退を訴える俺の頬に奏の手が触れる。
その手つきはこの上もなく優しくて、不覚にも胸が高鳴る。
奏の瞳が俺の目を真っ直ぐに見つめてきていて。


「俺が、護るから」
「か、かなで…?」
「…つーわけで、ちゃんと行けよ生け贄」
「~ッ死ねぇぇぇぇっっ!!」


職員室中に響き渡る声を残して俺は走り去った。
そんな捨て台詞を言われた奏はふぅ、と息をつく。
すると後ろからクスクスと笑い声が聞こえた。


「奏相手になかなか言うね、あの子」
「総司」


体の線が細い、どこか女性的な雰囲気を持つ国語教師であり奏の友人である北里 総司は蓮が去っていった方を見ていた。


「あれが奏お気に入りの如月 蓮君か。生徒会とお近付きになるなんて可哀想だな。ただでさえ一般家庭だからこの学園では苦労しているだろうに」
「良いんだよ…俺が護るから」
「おやおや、本気だったんだ、さっきの。素直じゃないねぇ、奏は」
「うるせぇ。…お前も頼んだ」
「はいはい」


総司の視線を誤魔化すように、奏は不機嫌な顔でパソコンに向き直った。
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