第一章
「で? さっきのはどういう意味だ」
「そっちの抱き心地の意……冗談だ」
再び足を上げかけた俺を見てすぐさま言葉を引っ込めた。
チッ、踏んでやろうかと思ったのに。
「まぁ、俺には憧れっつーか、目標にしてる生徒会長がいるんだ」
「……お前が?」
この実力主義の霞桜学園高等部の生徒会長なんてのになってるこの間宮が、目標にしてる?
……どんな化け物だ、ソイツ。
「高等部からの外部生であるお前は知らないかもしんねぇが、俺は中等部でも生徒会長してたんだよ」
「…マジか」
「あぁ。それで年に一回、合同中学生徒会総会ってのがあってな。複数の中学の生徒会長が集まって功績とか話し合ったりするんだ」
あぁ、そう言えば俺が中学の時もあったなそんなの。
皆忙しいっつってたわ。
「それで俺も参加してたんだが……俺が中学二年の時の集会で、それまで出席したことなかったある中学から初めて生徒会長が出席した」
「出席したことないって…良いのかよ」
「そこ、有名な不良校でな。生徒会なんてあってないようなモンだったんだと。それで功績発表が始まって、その不良校の生徒会長の話を聞いて…純粋に、驚いた。ソイツ、ほぼ一人で学校改革してやがったんだよ」
「…………」
誇らしげに語る間宮に、俺は嫌な予感がしていた。
有名な不良校……学校改革……二年生……いやいや、まさか。
この間宮が憧れる生徒会長がまさかそんな…ねぇよな。
「しかも他の中学の生徒会長は、どうだ凄いだろって顔でたいしてことねぇことを自慢しやがってたのに、ソイツは淡々とっつーか、普通のことをしましたって顔で話してた。そこの不良校はほとんど見捨てられてたのに、ソイツが立て直したんだ」
「……ほんとにソイツが立て直したのかよ。タチの悪い三年が卒業しただけじゃねぇのか?」
「いや、その集会の数日後実際にその中学行って確かめたから間違いはねぇ」
「は!?」
俺は耳を疑った。
仮にも金持ちの坊ちゃんが元不良校に行ったって…バカか、こいつ!!
「たまたま目に入った生徒に、生徒会長ってどんな奴だって訊いてみたら」
「…みたら?」
「そいつが校門に立ってる四人の生徒指差して、逆に訊かれた。『あいつらどういう風に見えます?』ってな」
**
四人の生徒。
一緒に帰るようで、仲が良さそうに談笑していた。
『どうって…友達だろ、あいつら』
『今は、そうですね』
『今は?』
『あの中の二人が不良。残りの二人はあの二人の不良にパシらされてた奴らです』
その言葉に、目を見開く。
パシりの関係には一切見えなくて。
その反応に、にっこりと誇らしげに口元をあげるその生徒。
『不良と一般生徒が仲良くしてもおかしくない、ってことを教えてくれた人ですよ、会長は』
『……慕われてるんだな、ここの会長』
『そりゃあもう。だって───』
**
「──だって、この中学校の神ですから、GODですから、司っちゃってますから、……とか言ってたな。まぁ、神とか司るとかは置いといて、慕われてるその生徒会長みたいになりたいと、俺は思ったんだ」
「……その中学って…いや、言わなくて良い、言うな、聞きたくねぇ」
「確か…鷹宮中学、だったか…? 会長の名前は覚えてねぇんだよなぁ…自己紹介の時点では興味無かったし。霞桜ならまだしも、流石に他校の生徒の情報は調べられなかった」
「たか、みや…中学……」
鷹宮中学。
学校改革をした生徒会長。
それは。
『本当に、かみやんは鷹宮の救世主だな』
『違うってぇ。かみやんは神様なの、鷹宮を司ってるんだよ!! ───神山 司だけにっ!!』
なんてなっ、と楽しげな笑い声が脳内に響きながら、俺は乾いた笑いを浮かべた。
あぁ、言えやしねぇ。
この完璧超人な間宮裕貴が憧れている生徒会長というのが。
現在赤髪の不良街道まっしぐらの俺だなんて……笑えねぇよコノヤロー。
「そっちの抱き心地の意……冗談だ」
再び足を上げかけた俺を見てすぐさま言葉を引っ込めた。
チッ、踏んでやろうかと思ったのに。
「まぁ、俺には憧れっつーか、目標にしてる生徒会長がいるんだ」
「……お前が?」
この実力主義の霞桜学園高等部の生徒会長なんてのになってるこの間宮が、目標にしてる?
……どんな化け物だ、ソイツ。
「高等部からの外部生であるお前は知らないかもしんねぇが、俺は中等部でも生徒会長してたんだよ」
「…マジか」
「あぁ。それで年に一回、合同中学生徒会総会ってのがあってな。複数の中学の生徒会長が集まって功績とか話し合ったりするんだ」
あぁ、そう言えば俺が中学の時もあったなそんなの。
皆忙しいっつってたわ。
「それで俺も参加してたんだが……俺が中学二年の時の集会で、それまで出席したことなかったある中学から初めて生徒会長が出席した」
「出席したことないって…良いのかよ」
「そこ、有名な不良校でな。生徒会なんてあってないようなモンだったんだと。それで功績発表が始まって、その不良校の生徒会長の話を聞いて…純粋に、驚いた。ソイツ、ほぼ一人で学校改革してやがったんだよ」
「…………」
誇らしげに語る間宮に、俺は嫌な予感がしていた。
有名な不良校……学校改革……二年生……いやいや、まさか。
この間宮が憧れる生徒会長がまさかそんな…ねぇよな。
「しかも他の中学の生徒会長は、どうだ凄いだろって顔でたいしてことねぇことを自慢しやがってたのに、ソイツは淡々とっつーか、普通のことをしましたって顔で話してた。そこの不良校はほとんど見捨てられてたのに、ソイツが立て直したんだ」
「……ほんとにソイツが立て直したのかよ。タチの悪い三年が卒業しただけじゃねぇのか?」
「いや、その集会の数日後実際にその中学行って確かめたから間違いはねぇ」
「は!?」
俺は耳を疑った。
仮にも金持ちの坊ちゃんが元不良校に行ったって…バカか、こいつ!!
「たまたま目に入った生徒に、生徒会長ってどんな奴だって訊いてみたら」
「…みたら?」
「そいつが校門に立ってる四人の生徒指差して、逆に訊かれた。『あいつらどういう風に見えます?』ってな」
**
四人の生徒。
一緒に帰るようで、仲が良さそうに談笑していた。
『どうって…友達だろ、あいつら』
『今は、そうですね』
『今は?』
『あの中の二人が不良。残りの二人はあの二人の不良にパシらされてた奴らです』
その言葉に、目を見開く。
パシりの関係には一切見えなくて。
その反応に、にっこりと誇らしげに口元をあげるその生徒。
『不良と一般生徒が仲良くしてもおかしくない、ってことを教えてくれた人ですよ、会長は』
『……慕われてるんだな、ここの会長』
『そりゃあもう。だって───』
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「──だって、この中学校の神ですから、GODですから、司っちゃってますから、……とか言ってたな。まぁ、神とか司るとかは置いといて、慕われてるその生徒会長みたいになりたいと、俺は思ったんだ」
「……その中学って…いや、言わなくて良い、言うな、聞きたくねぇ」
「確か…鷹宮中学、だったか…? 会長の名前は覚えてねぇんだよなぁ…自己紹介の時点では興味無かったし。霞桜ならまだしも、流石に他校の生徒の情報は調べられなかった」
「たか、みや…中学……」
鷹宮中学。
学校改革をした生徒会長。
それは。
『本当に、かみやんは鷹宮の救世主だな』
『違うってぇ。かみやんは神様なの、鷹宮を司ってるんだよ!! ───神山 司だけにっ!!』
なんてなっ、と楽しげな笑い声が脳内に響きながら、俺は乾いた笑いを浮かべた。
あぁ、言えやしねぇ。
この完璧超人な間宮裕貴が憧れている生徒会長というのが。
現在赤髪の不良街道まっしぐらの俺だなんて……笑えねぇよコノヤロー。