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第一章

俺が内心そう思っていることを知らず、マリモはむっとする。


「友だちのこと悪く言っちゃダメだろっ!」
「彼は…神山君は、不良なんです。皆恐れているんですよ」
「優馬は優しいから、すぐカモにされちゃうよっ」
「病院送りにされちゃうよっ」
「……ちか、づかな…い、で…」


言われたい放題だな、俺。
まぁ、別に構いはしねぇけど。
言われ慣れてるしな。
また笑ってんだろうなと間宮を見ると、意外にも不機嫌そうに腕を組んでた。
イキナリ何だ…情緒不安定か。


「司、暴力はダメなんだぞっ! こんな風に言ってくれる友だちがいなかったんだな! これからは俺が司をまともな人間にしてやるから、安心して良いぞ!」


そこで俺は間宮の言葉を理解した。
宇宙人、確かにこいつは宇宙人だ。
言葉が通じる気配がない。
友だちだとか言いながら、これっぽっちも俺を信じてる言葉がないし。
面倒だ…とてつもなく。
中学の時なら相手してやったが、今はそんな気力ないぞ。
ガタリと俺は席を立つ。


「余計なお世話だ」
「あっ、司、どこ行くんだよっ!」
「生徒会室の掃除に行くんだよ」
「あっ、昨日綺麗にしてくれたの司だったのか、ありがとなっ!」


マリモの言葉に引っ掛かって足を止める。


「何で綺麗になってたのをテメェが知ってる」
「生徒会室に行ったからなっ!」
「何でテメェが生徒会室に行ったんだ」
「お菓子すげー美味しいんだ! 司も来いよ!」


無邪気に笑うマリモに、殺意が湧いた。
今日の午前中で昨日と同じレベルに汚くした犯人はこいつか。
俺が間宮からの命令っつー屈辱を味わいながら掃除をした生徒会室を汚くしたのは。
バンッ、とテーブルを叩いた。


「生徒会室は部外者立ち入り禁止だろーが」
「何怒ってんだよっ! 慎也たちが良いって言ったんだぞ!」
「優馬は俺たちの友だちだからっ」
「優馬は特別なのっ」
「それに部外者というなら貴方でしょう、神山君」


副会長の冷淡な視線に言葉を濁す。
命令だとか言うと変な誤解をされてしまう…。


「お、れは…暇だから間宮の手伝いしてやってんだよ」
「何言ってんだよ司! 裕貴はセフレと遊んでばっかで仕事全然してないんだぞ!」
「……は?」


セフレ? セフレって…恋愛感情の伴わない性欲を吐き出すためだけの行為をする友人のことだよな。
間宮が、セフレと遊ぶ…?


「何言ってんだお前。間宮は真面目に仕事してんだろうが」
「でも慎也たちが言ってるんだ! 裕貴が仕事しないから、部屋にまで仕事持ち帰らなきゃいけないから大変だって!」


俺は座っている副会長たちを見下ろした。
皆気まずそうに視線を逸らしている。
それで俺は、全てを察した。
あの汚い生徒会室はこいつらのせい。
間宮の席にだけ異常なまでに積み重なった書類も、生徒会全部の仕事を請け負っているせい。
そして昨日間宮が俺を撮った時にいた場所───保健室。
それも、頑張りすぎて休みたいけど生徒会室にはいられなかったせい。
ほんと、噂ってのはアテになんねーな。
どこが有能だ。


「ただの色ボケたガキじゃねーか」
「っ、神山君、貴方は…っ!」
「間宮、行くぞ」
「逆だな立場」
「黙れ。俺は今機嫌が悪い」


肩をすくめて間宮は立ち上がる。


「待てよっ! 俺と一緒に……っ!」
「神山君、貴方優馬に失れ……」
「───人の話や噂だけでしか人を判断しない野郎どもは黙ってろ」


静かに言い放った俺の言葉にマリモや役員共も黙った。
他の食堂に来ていた生徒たちも何も言わない。
そうして俺と間宮は食堂をあとにした。
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