第一章
「…そう言われると気になるな。何でだ?」
「雑談してて良いのか、生徒会長」
「息抜きぐらいさせろ」
くぁ、と欠伸をする間宮を横目で見ながら、俺は息抜きに付き合ってやる。
「赤髪にしたのは不良に見えると思ったからだ」
「不良に、なぁ…」
「どう見ても、不良だろ?」
会計に言ったのと同じことを口にした。
そう言った時会計は沈黙したが、間宮はそうだなと肯定するんだろうな、と思っていれば。
「まぁ、見た目は不良に見えるが、中身は違うよな」
「は? 何言ってんだ、テメェは」
「実際接してみれば不良って感じしねぇんだよ」
じーっ、と見てくる間宮の視線に居心地の悪さを覚える。
不良って感じしねぇって…意味分かんねぇ。
「まず、花に笑い掛けてただろ」
「忘れろ」
「写真データバックアップ済みだ。あとは…」
「バックアップ済みとかざけんな消せ」
「掃除すげぇ丁寧だろ」
「無視してんじゃねーぞコラ」
俺の言葉を悉く無視しまくる間宮は、俺の行動を指折り数えていく。
挙げられる行動だけ聞けば成る程、おおよそ不良の行動じゃないことを自覚した。
何となく気まずくて掃除の手を速めると、行動を挙げたことに満足した間宮は少しボーッとした様子で頬杖をついて。
「で、何でだ?」
「あ? だから不良に見えるように…」
「違ぇ。何でお前は、不良に見られたかったのか、ってことだ」
その問いに俺は。
ピタリ、と動きを止めた。
間宮の視線を背中に感じる。
『ねぇ、かみやん…何でこんなことしたの…?』
友達だった奴の声が頭に響いてきた。
俺は振り返らないまま、はは、と笑う。
「不良に見られたかったのかって質問、おかしくねぇか?」
「俺にはお前が、そう言ったように聞こえた」
「たいした理由はねーよ。アレだ、アレ。不良がカッコ良く見える時期が中三の冬に来て…」
「お前がそんな理由でンなことするようには思えねぇ」
何を根拠に言ってんだバカ。
そう言ってやろうと思ったのに、咄嗟に声が出なかった。
失敗した。
何で髪の話なんか間宮にしたんだ、俺。
頼むから、それ以上突っ込むな。
そんな願いとは裏腹に、間宮は言い放つ。
「お前、不良に見えなきゃいけねぇ理由でもあったんじゃねーのか?」
「…っ」
息を、呑んだ。
間宮の言葉は的確に。
真実を、突いていた。
『かみやん、頼むから何か言ってくれ』
『どうして言い訳すらしてくれないの…っ』
きゅ…っ、と胸が縮む。
ははっ…あん時俺は、覚悟を決めただろうが。
……ツラいと思うのは、お門違いだ。
流石にこれ以上黙るとマズイと思った俺は、一呼吸して振り返る。
「間宮、俺は……、…寝てんじゃねぇか間宮の野郎…」
どうりで静かなはずだ。
見ると間宮は、会長席に腕を枕に突っ伏して眠っていた。
近付いてみると、背中が上下していて熟睡していることが窺えた。
間宮は決して、会話してる時に寝落ちするような失礼な奴じゃない。
……普通なら。
「結構な効き目だな…この睡眠薬」
俺はおもむろに、ポケットから睡眠薬の小ビンを取り出す。
さっき間宮のコーヒーに入れたのは、この睡眠薬だった。
あれ以上仕事をすると、ガチで倒れそうだったからな。
会長親衛隊隊長の曾根崎にも間宮を支えてくれと頼まれていた。
でも眠れと言っても素直に聞かないことが容易に想像出来たから、少々強引な手を使わせてもらった。
殴って気絶させなかっただけでも感謝してほしいもんだ。
「雑談してて良いのか、生徒会長」
「息抜きぐらいさせろ」
くぁ、と欠伸をする間宮を横目で見ながら、俺は息抜きに付き合ってやる。
「赤髪にしたのは不良に見えると思ったからだ」
「不良に、なぁ…」
「どう見ても、不良だろ?」
会計に言ったのと同じことを口にした。
そう言った時会計は沈黙したが、間宮はそうだなと肯定するんだろうな、と思っていれば。
「まぁ、見た目は不良に見えるが、中身は違うよな」
「は? 何言ってんだ、テメェは」
「実際接してみれば不良って感じしねぇんだよ」
じーっ、と見てくる間宮の視線に居心地の悪さを覚える。
不良って感じしねぇって…意味分かんねぇ。
「まず、花に笑い掛けてただろ」
「忘れろ」
「写真データバックアップ済みだ。あとは…」
「バックアップ済みとかざけんな消せ」
「掃除すげぇ丁寧だろ」
「無視してんじゃねーぞコラ」
俺の言葉を悉く無視しまくる間宮は、俺の行動を指折り数えていく。
挙げられる行動だけ聞けば成る程、おおよそ不良の行動じゃないことを自覚した。
何となく気まずくて掃除の手を速めると、行動を挙げたことに満足した間宮は少しボーッとした様子で頬杖をついて。
「で、何でだ?」
「あ? だから不良に見えるように…」
「違ぇ。何でお前は、不良に見られたかったのか、ってことだ」
その問いに俺は。
ピタリ、と動きを止めた。
間宮の視線を背中に感じる。
『ねぇ、かみやん…何でこんなことしたの…?』
友達だった奴の声が頭に響いてきた。
俺は振り返らないまま、はは、と笑う。
「不良に見られたかったのかって質問、おかしくねぇか?」
「俺にはお前が、そう言ったように聞こえた」
「たいした理由はねーよ。アレだ、アレ。不良がカッコ良く見える時期が中三の冬に来て…」
「お前がそんな理由でンなことするようには思えねぇ」
何を根拠に言ってんだバカ。
そう言ってやろうと思ったのに、咄嗟に声が出なかった。
失敗した。
何で髪の話なんか間宮にしたんだ、俺。
頼むから、それ以上突っ込むな。
そんな願いとは裏腹に、間宮は言い放つ。
「お前、不良に見えなきゃいけねぇ理由でもあったんじゃねーのか?」
「…っ」
息を、呑んだ。
間宮の言葉は的確に。
真実を、突いていた。
『かみやん、頼むから何か言ってくれ』
『どうして言い訳すらしてくれないの…っ』
きゅ…っ、と胸が縮む。
ははっ…あん時俺は、覚悟を決めただろうが。
……ツラいと思うのは、お門違いだ。
流石にこれ以上黙るとマズイと思った俺は、一呼吸して振り返る。
「間宮、俺は……、…寝てんじゃねぇか間宮の野郎…」
どうりで静かなはずだ。
見ると間宮は、会長席に腕を枕に突っ伏して眠っていた。
近付いてみると、背中が上下していて熟睡していることが窺えた。
間宮は決して、会話してる時に寝落ちするような失礼な奴じゃない。
……普通なら。
「結構な効き目だな…この睡眠薬」
俺はおもむろに、ポケットから睡眠薬の小ビンを取り出す。
さっき間宮のコーヒーに入れたのは、この睡眠薬だった。
あれ以上仕事をすると、ガチで倒れそうだったからな。
会長親衛隊隊長の曾根崎にも間宮を支えてくれと頼まれていた。
でも眠れと言っても素直に聞かないことが容易に想像出来たから、少々強引な手を使わせてもらった。
殴って気絶させなかっただけでも感謝してほしいもんだ。