第一章
「で? さっきのチビたちは何だったんだ?」
「………」
裏庭の木の側に座って幹に寄り掛かる、赤髪不良と無口無愛想会計…なんつー奇妙な組み合わせだと我ながら思う。
しかも俺は会計に寄ってきた小動物に触りまくってるからな。
もう、小動物好きなことを隠すのは止めた。
コイツなら言い触らすこともねぇだろうしな、…写真で脅してきた間宮と違って。
授業開始のチャイムが聞こえたから、教室に戻らないのか訊いたら、行かなくて良い、との答えがボソボソと返ってきた。
あぁ、そう言えば生徒会はそこら辺優遇されてるんだったな、と言えばまた黙り。
そして小動物に癒されてきた所で、俺は再び尋ねたわけだ。
さっきのチビたちは何だったんだ、と。
すると俺と同じように小動物の頭を撫でていた会計の手が止まって、顔を更にうつ向かせた。
それを横目で見ながら、内心そりゃそうかと思う。
敵対心とまでは行かなくとも、良い印象がない俺に訊かれたところで答える気はしないだろう。
さっきまで、俺の一挙一動にビビってたしな。
それにしても……。
「お前、マジで動物に好かれてんな…」
俺は何でか逃げられまくるからな…。
話が逸れたことに肩の力を抜いた会計は、俺の言葉にこっちを見ずに小さく口を開く。
「…動物、警戒、心…つよ、い」
「警戒心…やっぱ赤い髪のせいか」
「……あか」
「あ?」
俺の短い聞き返しの声に、会計はビクッと肩を震わせる。
あー…こういう言い方も怖がられる要素なのかよ、めんどくせぇ。
と思いつつも会計の言葉を黙って待ってやると、チラリと躊躇いがちに俺の頭に目線を向けた。
「あか、…なん、で…?」
「……、赤い髪にしてんのは何でかってことか?」
コイツ特有の単語喋りを文にしてやると、会計は目を少し見開いてコクリと頷いた。
言葉は少ないけど、言いたいことは何となく分かる。
でもやっぱり、ちゃんと喋れるようになった方が良いな。
ま、俺の言うことは聞きやしねぇんだろうが。
俺は自分の髪を触る。
この髪を赤く染めたのは、中三の冬だった。
「赤だったら、不良に見えると思ったからだ」
「…ふりょ…う…」
「どう見ても、不良だろ?」
くっ、と喉を鳴らして笑うと、会計は何とも言えない表情で黙った。
何でこんな奴に質問なんかしてるんだろ、なんてこと思ってそうな表情だ。
無口無愛想かと思ってたが、結構分かりやすいなコイツ。
それに小動物ホイホイでもあるし。
そうこうしてる内に、チャイムの音が聞こえてきた。
あ、やべ、放課後生徒会室に来いって間宮に言われてたな。
俺は立ち上がって、スボンに付いた葉っぱを払い落とす。
「俺はもう行く。テメェはどっか行くなり井川んとこ行くなりしろ」
「…、……おれ…」
眉を下げて言い澱んだ会計を見下ろした。
そして心の中で仕方ねぇなと呟いて、俺は腰を伸ばした。
「ちなみに、この裏庭にはほとんど誰も来ねぇ」
「え……」
「最恐不良、神山司のテリトリーとか言われてるらしいからな」
だから、と俺は続ける。
「俺に小動物提供すんなら、いつでも来て良い。許可してやるよ」
目を見開いた会計にヒラリと手を振って、生徒会室へと向かう。
あの様子からして、井川と何かあったっぽいな。
これからどうなるか分かんねーけど、俺は俺らしく。
流れに身を任せようじゃねぇか。
「………」
裏庭の木の側に座って幹に寄り掛かる、赤髪不良と無口無愛想会計…なんつー奇妙な組み合わせだと我ながら思う。
しかも俺は会計に寄ってきた小動物に触りまくってるからな。
もう、小動物好きなことを隠すのは止めた。
コイツなら言い触らすこともねぇだろうしな、…写真で脅してきた間宮と違って。
授業開始のチャイムが聞こえたから、教室に戻らないのか訊いたら、行かなくて良い、との答えがボソボソと返ってきた。
あぁ、そう言えば生徒会はそこら辺優遇されてるんだったな、と言えばまた黙り。
そして小動物に癒されてきた所で、俺は再び尋ねたわけだ。
さっきのチビたちは何だったんだ、と。
すると俺と同じように小動物の頭を撫でていた会計の手が止まって、顔を更にうつ向かせた。
それを横目で見ながら、内心そりゃそうかと思う。
敵対心とまでは行かなくとも、良い印象がない俺に訊かれたところで答える気はしないだろう。
さっきまで、俺の一挙一動にビビってたしな。
それにしても……。
「お前、マジで動物に好かれてんな…」
俺は何でか逃げられまくるからな…。
話が逸れたことに肩の力を抜いた会計は、俺の言葉にこっちを見ずに小さく口を開く。
「…動物、警戒、心…つよ、い」
「警戒心…やっぱ赤い髪のせいか」
「……あか」
「あ?」
俺の短い聞き返しの声に、会計はビクッと肩を震わせる。
あー…こういう言い方も怖がられる要素なのかよ、めんどくせぇ。
と思いつつも会計の言葉を黙って待ってやると、チラリと躊躇いがちに俺の頭に目線を向けた。
「あか、…なん、で…?」
「……、赤い髪にしてんのは何でかってことか?」
コイツ特有の単語喋りを文にしてやると、会計は目を少し見開いてコクリと頷いた。
言葉は少ないけど、言いたいことは何となく分かる。
でもやっぱり、ちゃんと喋れるようになった方が良いな。
ま、俺の言うことは聞きやしねぇんだろうが。
俺は自分の髪を触る。
この髪を赤く染めたのは、中三の冬だった。
「赤だったら、不良に見えると思ったからだ」
「…ふりょ…う…」
「どう見ても、不良だろ?」
くっ、と喉を鳴らして笑うと、会計は何とも言えない表情で黙った。
何でこんな奴に質問なんかしてるんだろ、なんてこと思ってそうな表情だ。
無口無愛想かと思ってたが、結構分かりやすいなコイツ。
それに小動物ホイホイでもあるし。
そうこうしてる内に、チャイムの音が聞こえてきた。
あ、やべ、放課後生徒会室に来いって間宮に言われてたな。
俺は立ち上がって、スボンに付いた葉っぱを払い落とす。
「俺はもう行く。テメェはどっか行くなり井川んとこ行くなりしろ」
「…、……おれ…」
眉を下げて言い澱んだ会計を見下ろした。
そして心の中で仕方ねぇなと呟いて、俺は腰を伸ばした。
「ちなみに、この裏庭にはほとんど誰も来ねぇ」
「え……」
「最恐不良、神山司のテリトリーとか言われてるらしいからな」
だから、と俺は続ける。
「俺に小動物提供すんなら、いつでも来て良い。許可してやるよ」
目を見開いた会計にヒラリと手を振って、生徒会室へと向かう。
あの様子からして、井川と何かあったっぽいな。
これからどうなるか分かんねーけど、俺は俺らしく。
流れに身を任せようじゃねぇか。