第一章
改めて目の前の青年を見る。
顔は生徒会に選ばれるだけあって整ってはいるが、いかんせんうつ向き気味なんだよな。
それにしても身長高ぇな、コイツ…俺より高いとか相当だろ。
何となく一歩足を踏み出した。
すると会計は一歩足を引いた。
少しの沈黙が降り注ぐ。
「……逃げてんじゃねーよ」
「………」
無言を返す会計に、俺はもう一歩歩み寄る。
するとまた、会計は一歩足を引く。
…何なんだ、この食うか食われるかみたいな雰囲気は。
はぁ、と息を吐くと、会計は再び肩を震わせた。
俺が怖くないから逃げなかったのかと思いきや、逆にビビりすぎて逃げ遅れただけだな、コイツ…。
野生の動物界だったら真っ先に食われるタイプだ。
俺はヒラリと手を軽く挙げて敵意が無いことを示す。
「テメェに手を出す気はねーから、そんなにビビんな」
「……お、まえ、おこ…って、る」
会計はまだ若干警戒しながらも、喋りかけてきた。
ビビってんのに俺を『お前』呼びとは…肝据わってんのか据わってねぇのか分からない奴だな。
にしても、俺が怒ってるっつーのは…、あ。
「あ~…、さっきのはスズメが…」
「さっき、…違う。…食堂、で、お…まえ怒っ、た…」
食堂? と首を傾げかけて思い出した。
あぁ、そう言えば色ボケたガキじゃねぇか、とか言ったな。
まだ気にしてやがったのか。
「怒っちゃいねぇよ。つーか、何日も怒るほどお前らに興味ねーし」
「………」
正直にそう言うと、会計は俺をじっと見てうつ向いた。
何か、食堂で会った時より覇気がなくねぇか…?
あん時は、優馬に近付くなって睨んできやがったクセによ。
「おい会計。どうかしたのか?」
「…おまえに、は…関、係な…い」
「まぁ…、確かにな」
さっきまで、関係ないからめんどくさくなったとか考えてた俺が、会計の言葉に頷くのは道理だろう。
気にならないわけじゃないんだけどな。
何で裏庭なんかに居るのかとか、いつも一緒にいるらしい井川はどうしたのかとか。
でも明らかに拒絶されてるし、俺もそんな奴いちいち構いたくない。
お互い黙ったが、その内、会計はうつ向いたまま踵を返そうとした。
流れ的にその背を見送る形になった俺…だったのだが。
「……っ、待て会計ッ!!」
「え…っ」
声を上げた俺に、思わずといったように足を止めて振り返った会計。
俺は親衛隊隊長から頼まれたことを思い出して呼び止めた、…わけではなく。
「お前…肩の、それ…」
「え、……スズ、メ…?」
くりっ、と困惑したような表情で首を傾げた会計の肩には。
スズメが一羽、乗っていた。
当たり前のように振る舞う会計の周りには、いつの間にかスズメや小動物系が集まってきていて。
「何でそんな集まってんだ…」
「…かって、に…集まっ、て…くる…」
「はぁ? 何だそれ、羨まし…、っ」
ばっ、と慌てて自分の口を塞いだ俺と肩のスズメを交互に見た会計は。
指に乗せ換えたスズメを、おずおずと無言のまま、俺に差し出してきた。
最恐赤髪不良と無口無愛想会計の間に。
奇しくも妙な関係が形成された瞬間だった。
顔は生徒会に選ばれるだけあって整ってはいるが、いかんせんうつ向き気味なんだよな。
それにしても身長高ぇな、コイツ…俺より高いとか相当だろ。
何となく一歩足を踏み出した。
すると会計は一歩足を引いた。
少しの沈黙が降り注ぐ。
「……逃げてんじゃねーよ」
「………」
無言を返す会計に、俺はもう一歩歩み寄る。
するとまた、会計は一歩足を引く。
…何なんだ、この食うか食われるかみたいな雰囲気は。
はぁ、と息を吐くと、会計は再び肩を震わせた。
俺が怖くないから逃げなかったのかと思いきや、逆にビビりすぎて逃げ遅れただけだな、コイツ…。
野生の動物界だったら真っ先に食われるタイプだ。
俺はヒラリと手を軽く挙げて敵意が無いことを示す。
「テメェに手を出す気はねーから、そんなにビビんな」
「……お、まえ、おこ…って、る」
会計はまだ若干警戒しながらも、喋りかけてきた。
ビビってんのに俺を『お前』呼びとは…肝据わってんのか据わってねぇのか分からない奴だな。
にしても、俺が怒ってるっつーのは…、あ。
「あ~…、さっきのはスズメが…」
「さっき、…違う。…食堂、で、お…まえ怒っ、た…」
食堂? と首を傾げかけて思い出した。
あぁ、そう言えば色ボケたガキじゃねぇか、とか言ったな。
まだ気にしてやがったのか。
「怒っちゃいねぇよ。つーか、何日も怒るほどお前らに興味ねーし」
「………」
正直にそう言うと、会計は俺をじっと見てうつ向いた。
何か、食堂で会った時より覇気がなくねぇか…?
あん時は、優馬に近付くなって睨んできやがったクセによ。
「おい会計。どうかしたのか?」
「…おまえに、は…関、係な…い」
「まぁ…、確かにな」
さっきまで、関係ないからめんどくさくなったとか考えてた俺が、会計の言葉に頷くのは道理だろう。
気にならないわけじゃないんだけどな。
何で裏庭なんかに居るのかとか、いつも一緒にいるらしい井川はどうしたのかとか。
でも明らかに拒絶されてるし、俺もそんな奴いちいち構いたくない。
お互い黙ったが、その内、会計はうつ向いたまま踵を返そうとした。
流れ的にその背を見送る形になった俺…だったのだが。
「……っ、待て会計ッ!!」
「え…っ」
声を上げた俺に、思わずといったように足を止めて振り返った会計。
俺は親衛隊隊長から頼まれたことを思い出して呼び止めた、…わけではなく。
「お前…肩の、それ…」
「え、……スズ、メ…?」
くりっ、と困惑したような表情で首を傾げた会計の肩には。
スズメが一羽、乗っていた。
当たり前のように振る舞う会計の周りには、いつの間にかスズメや小動物系が集まってきていて。
「何でそんな集まってんだ…」
「…かって、に…集まっ、て…くる…」
「はぁ? 何だそれ、羨まし…、っ」
ばっ、と慌てて自分の口を塞いだ俺と肩のスズメを交互に見た会計は。
指に乗せ換えたスズメを、おずおずと無言のまま、俺に差し出してきた。
最恐赤髪不良と無口無愛想会計の間に。
奇しくも妙な関係が形成された瞬間だった。