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一ヶ月目

 ああ、どうして男の人ってこうなのかしら。たしかに私はフリルもシフォンも大好きですけれど、だからって頭の中にまで詰まってるわけじゃないのよ。それとも、あなたの頭の中には鉄やスチールが詰まっているの?そりゃあ大好きでしょうとも。でなきゃあんな馬鹿げた建設計画なんて立てるはずがないわ。ずっとそうして囲まれてないと落ち着かないんでしょう。女達は部屋の中で慎ましくやってるっていうのに。やれ大粒のジュエリーがはしたないだの口紅が汚らしいだの、ならその腕に付けているゴテゴテブサイクな金時計は何。まともに手入れしているの?手垢がついて盤面が見えなくなってるじゃないの。せめて肌管理ぐらいの注意は払うべきだわ。それからそのネクタイ!まさか奥さんが選んだんじゃないでしょうね?浮気対策ならすごくよくやってると思うけど。ほら、そこにいる子とかネクタイに釘付けじゃない。早く気づきなさいよ。ああウインクなんか送っちゃって。まだ後ろを向いてたほうがセクシーに見えるってもんだわ。
「ウェンディーヌ」
 あら。待って、聞き覚えのない名前、と思って耳をそばだてると──なんてこと!向こうからやってきたのはなよなよした、色の悪いこまどり。貧相な体に、夏に着るような薄いドレスを纏って、クジャクやフラミンゴの求愛の中で縮こまるようにして立っていた。けど、その求愛が自分に向けられたものだとは思っていないみたい。その子は私と目があってびくりと肩を震わせた。あらごめんなさい、口元を隠したのは貴方を笑ったからじゃないのよ。ただ開いた口が塞がらなかったの。黒鳥がこまどりを見初めるだなんて変な話だけれど、貴方の表情筋はよく動くのね。それから潤みやすい目、不安に傾きやすい眉。腕には青い血管が走って、ここからでも血が流れているのが見えるようだわ。貴方の手首を掴んだらとくとくと脈打っているのが分かるのかしら?
 そうね、貴方は私の噂をどれだけ知っているのかしら。けれど、貴方はこうして目を逸らさないんだもの。私がいつも黒しか纏わない理由を、チュールたっぷりの服を着る理由を、そこまでして隠したいものを──貴方はもう見抜いているのかも知れないわね。
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