第23話 目覚め、そして黒
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病室では、未だに名前が泣き叫んでいた。
やはり人が増えることで恐怖が増幅するようで、医師らが入ると叫び声や身体の震えが大きくなった。
医「鎮静剤を打たせていただきます、腕押さえてください」
看「はい」
『いやっ!!来ないでってば!!離して!離してぇ!!』
腕を押さえられ、更なる恐怖にイヤイヤと首を振りながら声を荒げる名前。
しかし数人がかりで押さえられ、腕に鎮静剤が打たれる。
そして、余計な刺激をしないよう、医師のみが残り他の看護師は退室した。
『いやっ、いやっ!!』
名前は掴まれていた場所を掻きむしる。
掴まれていた場所から自分の腕が腐っていくかのように黒ずんでいく。
それを剥ぎ取ろうと必死に腕を掻いたり擦ったりしていた。
開いたキズの他にも出血場所が増えてしまった。
『いやぁあ、黒いっ、黒い・・・』
医「(黒・・・?)」
しばらく暴れていたが、少しずつ落ち着いてくる。
『はぁ・・・はぁ・・・』
枕を抱き締めながら肩を上下させ、焦点の合わない目をゆっくり開閉していた。
『・・・・・すぅ・・・』
枕に身体を預け目を閉じると、名前の意識は再度闇に落ちていく。
医師はふぅ、と息を吐くと、名前をベッドに寝かせ開いたキズと掻きむしったキズの手当てを始めた。
そして病室を出ると、花枝が待っていた。
花「名前ちゃんは・・・?」
医「今は落ち着いて寝てます。
今後は点滴に少量の鎮静剤を混ぜて不安を軽減してみようかと思います。
キズは治ってもパニックが起こらなくなるまで入院してもらうかもしれません」
花「わかりました、よろしくお願いします」
ところで、と医師が花枝に向かって声をかける。
医「苗字さんは何か黒いものに関して、怖い思いとかしました?
先ほど“黒い”と言いながら私たちが触れたところを引っ掻いてしまいまして」
花「黒いもの・・・いえ、わかりません」
医「そうですか・・・また何か変化がありましたら連絡差し上げますね」
花枝は、病院を出ると真島に電話した。
忙しいかもしれないが、すぐに伝えておかなければと思った。
真島は1コールですぐに出た。
真《何かあったんか?》
花「名前ちゃんが目を覚ましました」
真島は良かった、と言おうとしたが、花枝の雰囲気に不安になる。
花「でも・・・パニックでずっと泣き叫んでて・・・誰も近寄れないんです」
真《・・・怖い思いしたからやろか》
花「だとしても、尋常じゃない感じで。
今は鎮静剤打ってもらって寝てるみたいです」
真《鎮静剤・・・そないヤバかったんか。
すまんのう、そっちに行けんくて》
花「真島さん、名前ちゃんは黒いものに関してトラウマとかあります?
先生が“黒い”って言いながら自分の手を引っ掻いてたって言ってて」
真《黒・・・》
真島には思い当たる節があった。
前世で殺し屋だった名前は、自分が“真っ黒”だと言っていた。
松崎に前世の話を出され、それを思い出して自分が黒く見えてしまったのだろうか。
殺し屋だった前世のことは名前も思い出したくないことの1つだ。
真「あるにはあるが、名前に何が見えとるのかわからん。
話を聞いてみんことにはな・・・」
真島はタイミングの悪さを呪った。
自分がいたら何かが変わるというわけではないが、一番辛さを知っている身だ。
少しは話を聞けたかもしれない。
花「帰ってきたら、すぐ顔出してあげてください。
パニックが起きなくなるまで入院するかもって言ってました」
真島は了承し、電話を切った。
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