第22話 焦燥
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店長はんとの電話を切り、頭を回転させる。
昨日は俺は弁当屋に行っていない。
出勤していたか組員に確認すると、出勤してはいたと。
退勤後は何をしていたか聞くと、松崎と一緒にコンビニに寄って帰ったと話す。
何も変わらない。
それなのに今日突然連絡が付かない。
性格的に、酔いつぶれて二日酔いになって寝坊なんてするわけがない。
30分後
~♪~♪
携帯が鳴る。
名前の家に向かっていたヤツからの連絡だった。
急いで受話ボタンを押す。
真「・・・俺や!名前はおったか?」
組員《それが、誰もいませんでした・・・》
真「わかった、他の可能性考えるわ。一回帰って来い」
家にいなかった、となると・・・
松崎、か?
真「昨日名前と松崎が帰る時に変わったことは?」
組員「いやぁ・・・・」
組員「あ、昨日は渋谷の家に帰ってました。初めてそっちの家に帰るところ見ました」
真「・・・・それやな」
最初に松崎を見たときに感じた冷たい雰囲気、以前名前と話しているときに探るように前世の話を持ち出していたこと、それらを繋ぎ合わせると1つの可能性が見えてきた。
真「名前は松崎に監禁されとるかもしれん」
「「!!」」
真「松崎が名前を独占しようとしとるのか、他の理由があるのかはわからんが、きっと松崎は最初から名前だけを狙って接触しとったんや」
急いで車を回させ、渋谷にある松崎の家へ向かった。
神室町を出る前、運転していた組員が何かに気づいた。
「親父、あれ桐生の伯父貴じゃないですか?」
真「桐生ちゃんや・・・・・車止めぇ」
桐生ちゃんに訳を話して同行してもらおうと考えた。
桐生ちゃんのすぐ脇に車を停めると驚いていた。まぁいつも喧嘩を売っていたから仕方ないのかもしれないが。
急いで窓を開け、桐生ちゃんに声をかけた。
真「桐生ちゃん、今暇か?」
桐「あ、ああ。遥も今はいないしな」
喧嘩をすると思っているのか臨戦態勢を取る桐生ちゃん。
真「桐生ちゃん名前と知り合いやったな」
肯定する桐生ちゃんに、名前が監禁されとるかもしれないから手伝って欲しいと話す。
桐「名前が・・・わかった、俺も行こう」
狭い車内に男がぎゅうぎゅうになり進んでいく。
渋谷までの距離がとても長く感じた。
渋谷駅を通りすぎる頃には12時を過ぎていた。
店長はんに電話をかけ、今の動きを伝えておいた。
店長はんは、自分が“人生経験だから”と付き合うことを進めてしまったからこんなことになってしまったと自分を責めていた。
そんなことはないとフォローを入れ、一度電話を切った。
「もうすぐ着きます!」
真「乗り込むでぇ!」
松崎の家に入り、名前たちを探した。
どこにも見当たらないと思ったとき、足元からくぐもった声が聞こえてくる。
下か、と見ると取っ手が付いていた。
引いてみるが開かず、鍵がかかっていたようだった。
真「桐生ちゃん!床壊すで!!」
桐「ああ」
桐生ちゃんとともに近くにあった家具などを床に叩きつけ、扉を壊そうとした。
ゴンゴンゴンゴン!!!
ドゴォ!
床が壊れ、階段が見えた。
そしてそれと同時に鉄の、いや、血の匂いが広がってくる。
急いで階段を下りると、ベッドに両手両足を縛られて血まみれの名前に跨がり、首を絞めている松崎が見えた。
一気に頭に血が上る
真「名前に何してくれとんじゃあ!!!」
大声で叫び、名前から離そうと思い切り殴りかかった。
〈真島sideおわり〉
ーーー
ガシャァアン!!
真島の一撃に翔が吹き飛んだ。
息をきらし、翔を睨み付ける真島。しかし桐生が焦ったように声をかけてくる。
桐「兄さん、兄さんは名前の介抱をしてくれ。
俺はこいつを拘束しとく」
桐生も怒っていた。しかし今は名前を助けることが先決であり、それは真島に任せた。
真「名前・・・、名前!!しっかりせぇ!」
血だらけで目を閉じている名前を見、顔を青ざめる真島。
急いで胸に耳を当て心臓が動いているか確認する。
真「・・・動いとる・・・」
一瞬ホッとしたが出血が多いことや首を絞められていたことで危険な状況であることには変わりないとわかり、警察と救急車を呼んだ。
名前を拘束していたロープをほどく。ロープを触っただけで真島の手は赤く染まっていた。
真「手と肩のキズが酷い・・・」
桐「こっちは終わったぜ」
真島が桐生の方を見ると、翔が名前を縛っていたロープで拘束されていた。
もう手も足も動かせないだろう。
翔「ぅ・・・ってぇ・・」
警察と救急車が到着する間、まだ意識のあった翔を尋問することにした。
真「何でや。何でこんなことしたんや。
お前は名前を大事にしてたんとちゃうんか」
翔「ははっ!大事に?
大事にしてたよ?最期の絶望を増幅させるためにさ。
名前の“何で?”って顔、最高だったなぁ!
ナイフを刺した時に痛がる顔も良かったけど、名前自身を否定する言葉を言った時の悲痛な顔もそそられたな」
ガッ!
桐「兄さん!」
真島は翔の答えを聞いて頬を殴る。
真「ふざけんなや!
お前は何なんや!?名前に恨みがあったんか?」
必死な真島とは反対に、ククッと笑いながら答える翔。
翔「恨み、ねぇ。
俺、名前を一回殺したときに感謝されてさ」
目を見開く真島。桐生は訳がわからず静かに聞いていた。
翔「その反応、真島さんは知ってたんだ。名前に前世の記憶があること。
前世で名前を殺したの、俺なんだよね。
でも、名前の死に方が気にくわなくてさ。
だから生まれ変わって名前を探して、今度は苦痛の顔で死んでもらいたいって思ったんだ。その為だけに生きてきた」
真「・・・狂っとんな」
翔「ははっ!誉め言葉として受け取っとくよ」
ピーポーピーポー・・・
遠くから救急車の音が聞こえる。先に救急車が到着するようだ。
真「話しは終いや。もうすぐ警察も来る、観念しぃ」
桐生が外に出、救急隊を誘導する。
地下室に入ってきた救急隊は絶句した。
そして急いで名前を担架に移し、止血を開始していた。
真「桐生ちゃん、俺は名前の付き添いに行くから、そいつを頼むわ」
桐「わかった」
真島は名前と一緒に救急車に乗り、病院に向かった。