第1話 別れと出会い
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真島と佐川は小声で話していた。
チョコレートを1つ食べながらその内容に集中する。
真島は売上金を佐川に渡していたようだ。
真「この調子なら来月にはノルマの1億、達成するで」
1億、という金額に驚くが、今はバブルでさらに相手は裏社会の人間、そのくらいの金額が出てくることもあるかと自分を納得させた。
真島はそのノルマを達成したら、“しまの”の親父に、俺が極道に戻れるよう口利きしてもらうよう約束しているようだ。
『(そんな約束・・・守ってもらえるわけないよ)』
佐「さぁ?そんな約束したっけかな。
あと5億稼げ。
そしたら口利いてやるよ」
『(ほら・・・)』
名前は真島に同情する。
真島は以前は極道だったかもしれないが、今は都合良く使われるだけの金づる。
きっと強く出れず搾取され続けるのだろう。
名前は、メモ帳にうろ覚えの真島の顔を描きながら、もう1枚紙を用意し
「しまの→まじまの組の組長?」
「まじま→極道に戻りたい、さがわに使われる→罰?」
「さがわ→きっとカタギじゃない、胡散臭い」
聞こえた単語や関係性などを書いていく。
佐「何だ、殴らねぇのか。
・・・まぁ、やれるわけないけどな。
そんなことしたら、お前はあの“暗~い場所”に逆戻りだ。それは嫌だろうからなぁ」
『(“暗い場所?”)』
真島は佐川を殴ろうとしたのか、そんな会話が聞こえた。
真「5億やろうが何やろうが、ナンボでも稼いだるわ。極道に戻るためやったら、俺は何でもやったるわ!」
その後、物騒な話が聞こえた。
極道に戻るために“殺し”もするのか、と佐川が真島に問い詰めていた。
真島は口ごもり返答できなかった。
『(真島さんはホントは真面目で素直な人なんだろうな・・・)』
「まじま」の欄に「きっと良い人」と小さく付け足す。
佐川が立ち上がり帰りそうな雰囲気になったため、急いで情報を書いていた紙をポケットにしまい、真島の絵を完成させていく。
佐「あ、そうだ。1つ忘れてた。
ここのホステスに“ノリコ”っているだろ。」
ホステス、ということは真島はキャバクラの支配人なのかとわかる。
真「それがどないした」
佐川は、そのノリコがこのキャバクラのNo.1ホステスだとわかりながら、新しく立ち上げる店に引き抜いたと話していた。
No.1キャバ嬢がいなくなったら、売上が落ちるのをわかっていながらの所業だろう。
『(酷い・・・)』
佐「嬢ちゃん、待たせたな。
お、真島ちゃんの顔か。上手く出来てるな。
気をつけて帰れよ」
佐川は名前をチラッと見、書いているメモ帳に目を移した。
その時の顔が一瞬極道の顔になっていたため、もう1枚紙に書いていたのがバレたのではとヒヤリとするが、ニコリと笑って部屋を出ていった。
真島は、イライラを何かにぶつけたいと思ったが、名前が見ている前で何かに八つ当たりをするわけにいかないと思い堪えた。
真「嬢ちゃん、もうタイムリミットや。お巡りさんのトコ行くで」
『やだ』
真「いつまで駄々こねる気や。
お前はいつまでもこんなとこにいたらアカン」
真島の言い分はもっともだ。
こんな一般人の子どもと一緒にいるなんて警察に見られたら、職質待ったなしだろう。
しかし、私的にはもう家にもいたくない、誰ともわからない子どもたちと施設で共同生活をするのも嫌だ。
やはり裏社会にいた人間だ、同じような環境に身を置いた方が安心できるのかもしれないと思うのは私の我が儘だろうか。
その時、ヒョイと名前を抱き上げ無理矢理連れていこうとする真島。
『わあっ!』
急に高くなる視点に驚くが、そんな場合ではない。
とっさに先程書いていた紙を真島の目の前に突きつけた。
真「何や?」
『見て』
真「・・・近すぎて見えん」
真島は名前を下ろし、紙を見ると目を見開いた。
自分達の話した内容が要約され書かれていたのだ、しかも難しい漢字も、5歳では知らないような言葉も使って。
真「嬢ちゃん、これ・・・」
『私、普通の5歳よりは頭良いの。
あなたの役に立てるかもしれない』
真島は信じられないと言うように紙と名前を見比べている。
真「どういう、ことや?」
『・・・一緒にいて良いなら話すよ。
1ヶ月でいい、もっと短くてもいい・・・。
少しでも自由に、自分の意思で生きたい。
後でちゃんと施設でも何でも行くから・・・
だから、お願い』
真「(自由、か・・・)」
泣きそうな顔で話す名前に、真島は自分を重ねる。
そして、紙に書いてある“まじま”の近くに“きっと良い人”と書かれているのを見てフッと口角を上げる。
真「わかったわかった、ただし、邪魔んなるようやったらすぐに然るべきトコに突き出すで?」
『うん、迷惑かけないようにする』
そこへ、キャバレー・グランドの店長がやってくる。
一瞬名前を見て驚くが、そんなことよりも、と本題に入った。
例のノリコから明日から別の店で働くと連絡が来たと。
真島は、他のキャバクラからNo.1の子を引き抜く作戦に出る。
名前が上がったのはオデッセイという店のノゾミ。
そのノゾミに交渉するべくオデッセイに向かうと言う真島。
真「そや、この嬢ちゃん俺が帰ってくるまでここで預かっといてくれんか?」
真島は名前を見ながら話す。店長は訳がわからないというような表情だ。
『嬢ちゃんじゃない、名前だよ』
真「・・・だそうや。ん?眠いんか?」
あくびをし、目を擦る名前に声をかける真島。
名前は気まずそうに小さく頷く。
店長にタオルケットを持ってくるよう伝えると、名前をソファに寝かせる。
『ちゃんとかえってくる?』
真「(急に年相応な顔になるんやな)
ああ、俺は約束は守る。せやから寝て待っとき」
『うん・・・』
真島の言うことと眠気に逆らえず目蓋を閉じていった。
真島は名前が寝たのを確認すると、ノゾミを引き抜くべくオデッセイへと向かっていった。
第1話 終