第1話 別れと出会い
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ーーー
目を開けると、暗くて狭い空間にいた。
頭痛は治まってきているが身体がだるく、うまく動かせない。
まさか、あの眼帯男も人身売買の人で私は売りに出されるのではないか
とぐるぐる考えていると、この空間の外から何か話し声がすることに気づいた。
「聞いたよ、さっきもご活躍だったらしいじゃない
さすがは真島吾朗・・・
蒼天堀の“夜の帝王”だ」
『(知らない声・・・真島吾朗?誰?)』
聞いたことのない声の男は、話し相手に客との喧嘩を見世物に仕立てて、ついでに飲み代まで取り上げるなんて、気が利いていると話す。
そして
「やっぱりお前、カタギが向いてるって。自分ではそう思わねぇの?」
知った単語が出てくる。
『(・・・カタギ?極道とかなのかな、やっぱり私売られたのか)』
眼帯「アホぬかせ。誰がこんなこと好きでやるかっちゅうねん」
『(あ、さっきの眼帯の人の声。“まじま ごろう”って名前なのかな・・・)』
先程聞いた声も聞こえ、眼帯の人、真島吾朗はもしかしたらカタギの人間ではないかもしれないと推察する。
「皮肉なもんだ。
金も地位も名誉もある、そんな誰もが羨む立場を得たお前だけがただひとり、この街で別の“何か”を求めてる・・・」
真「今日はずいぶんお喋りやないか」
「しけたツラのお前を見てたらなんとなくな。
でもまぁ、この現状をお前が気に入らないのは当然だ。
これはお前への“罰”・・・なんだからな」
罰・・・何のことか全くわからなかったが、その後の沈黙で真島が気まずそうにしていることが伺えた。
真「そろそろ本題に入ってくれまへんか。俺はいつになったら極道に戻れるんや?
“オーナー”」
『(極道に、戻る・・・?)』
カタ・・・・
少し驚いて身体を動かした拍子に音を立ててしまった。
「誰だ!?」
ガラッ
『っ・・・わぁっ!』
急に目の前が明るくなり目が眩む。
目を瞑ったまま動いたことでバランスを崩し、転倒してしまった。
目の前には白髪交じりの短髪の中年がこちらを見ていた。
「何だ?子ども?」
名前はキョロキョロと周りを見渡す。名前が入っていたのは大きめのキャビネットだったようだ。
真「チッ・・・」
バツが悪そうにする真島に、申し訳なくなる名前。
これ以上迷惑をかけないようにと頭をフル回転させる。
真「さっき行き倒れてたんですわ。そのままにしとくのも気が引けたもんで、ここに連れてきたっちゅうわけです。
もちろん後で交番に連れてこ思うとります」
名前を優しく起き上がらせながら真島が話す。
白髪交じりの男と共犯というわけではなさそうだ、しかも交番に連れていくと言っている。
人身売買ではないかもしれない。
「そうか。嬢ちゃん、あんた何歳だ」
『・・・5さい。おじさんだれ?』
普通の5歳児なら少しビクビクしながら話すだろうか。
そんなことを考えながら演技をする。
そしてあわよくば情報も手に入れたい。
「おじさんは佐川って名前だ。こっちの真島っつう兄ちゃんとは知り合いでな、よろしく。」
うっすらと笑みを浮かべながら名前に声をかける佐川。
すぐに真島に向き直り小声で話す。
「5歳ならほとんど話わからんだろう。
真島ちゃん、嬢ちゃんに何かお菓子でもあげてあっちにいてもらえ」
・・・わかってますけどね、と名前は心の中で呟く。
白髪交じりの男、佐川は部屋の真ん中に置いてあったパーテーションの奥を顎で差した。
真「・・・。
ほれ、こっちきぃ。確かチョコがあったわ、食べ」
真島は名前を後ろから押し、パーテーションの奥、佐川の視界に入らないデスクに座らせた。
そして戸棚からチョコレートやせんべいをいくつか出し、メモ帳とペンも渡してくれた。
食べながらお絵描きでもして待ってろ、ということなのだろうか。
『ありがと』
お菓子をもらって嬉しそうな顔でお礼を言う。
真島は「堪忍な」と小さい声で言って佐川の方に向かっていった。
さて、どうしよう。
ま、聞き耳は立てるんだけどね。