第16話 セレナでの攻防
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名前は桐生の出ていった方を、痛む腹部を押さえながら見ていると2つの影が入ってきた。
1人は遥、そしてもう1人はトレンチコートを着た真島や桐生と同じくらいの年齢の男性だった。
遥「名前お姉さん!」
『遥ちゃん、それと・・・』
伊「警視庁の伊達だ、お嬢さん大丈夫か?」
名前はしがみついてきた遥を支えながら、伊達に目を向け挨拶をする。
『私は大丈夫です・・・守られただけだから。
何が起きてるんです?やっぱり東城会関係ですか?』
伊「・・・知っているのか」
名前は桐生、真島と面識があること、錦山や亡くなった世良や堂島とも昔少しだけ関わりがあったことを話した。
伊達は、特に詮索することなく話を戻した。
伊「わかる範囲だが、聞くか?」
『・・・はい』
伊達は今の状況を話してくれた。
東城会から100億が盗まれ混乱していたことや、世良が殺され跡目争いが始まっていたこと。
そして100億を手にした組が東城会4代目になることが濃厚とされ、その100億の手がかりである遥の母が狙われていること。
そして、錦山は跡目争いで勝利すべく動いていた。錦山の役に立ちたいと思っていた麗奈は、100億の鍵である遥と行動を共にする桐生の動きを錦山に報告していたと。
『・・・麗奈さんはそれをいけないことだとわかって、錦山さんを止めようとしたんですね』
伊「ああ。だが、それがバレてもう麗奈は不要と判断されたんだろうな」
『錦山さん・・・昔はそんな人じゃないと思ってたのに・・・』
それこそ人を殺してしまったような雰囲気の変わりようだった。
『・・・まさか・・・』
名前は気づく。
桐生が服役した理由に。
桐生は錦山の幼馴染みで親友、誰かを庇って殺人の罪を被ったのだとしたら錦山の可能性が高いと。
伊「どうした?腹が痛むか?」
『あ、いえ。』
考え事をしていた名前を不思議に思ったのだろう。伊達は心配そうに名前の顔を覗き込んだ。
そこで伊達の携帯が鳴った。電話の相手は桐生だった。
伊「もしもし、大丈夫か?」
桐《伊達さん、シンジと麗奈が死んだ》
「「『!!』」」
静まり返っていたため、電話相手の桐生の声が漏れて聞こえた。
自分は大丈夫だが遥は、と思いバッと見るとやはり大きな目をさらに見開いていた。
『遥ちゃん・・・』
遥「・・・大丈夫だよ、わかる」
伊達はすぐ電話を終え、名前と遥の方に向き直る。
伊「桐生は賽の花屋んとこに行くらしい。俺と遥はそっちに行くが・・・」
『私は帰ります。関係者じゃないですから、邪魔になっちゃいます』
伊「わかった、何かあったら桐生と連絡とってくれ」
『はい』
セレナから出ると、ふぅ、と息を吐く。
関係者じゃないとは言ったが、頭の中では自分がセレナに戻って話をしていなければ死なずに済んだのではないかと思っていた。
シンジが逃げようと言っていたが麗奈はそれを聞かずに残ろうとしていたことは、奥の部屋で寝かされていた名前は知らない。
『・・・花枝さんに、何て言おう・・・』
そして花枝に何と説明しようか迷っていた。
もう、言わない方がいいのではないか。
きっと麗奈の遺体は秘密裏に扱われる。
セレナはそのまま閉店になるだろう。
知らない振りを突き通せば花枝はショックを受けずに済む。
考えた結果、知らない振りを貫くことに決めた。
しかし、人の死を間近に感じるとこうも動揺してしまうものなのか。
足取り重く歩いていると
翔「名前さん?」
『・・・松崎さん』
偶然翔に会った。
翔は名前の眼の前まで来ると照れたように笑っていた。
翔「また偶然会ったね。運命かな?」
『・・・ふふっ』
笑えているだろうか。
いつも通り、を意識しているが顔が引きつっている感じがする。
翔「何かあった?表情固いよ」
やはりバレていた。
しかし、何も言えない。
『ちょっと、ね』
と濁して終わりにした。
翔は納得がいかない様子で名前を見ていたが、言いたくないことを追求して嫌われてもイヤだと思ったようでそれ以上は聞かなかった。
その代わり
ス・・・
『・・・!』
名前の手を取り、歩き出した。
名前は後をついていく。何故か拒否できなかった。
翔「駅まで送るよ。」
『・・・ありがとうございます』
2人で手を繋ぎながら静かに歩いていた。
しかし、イヤな沈黙ではない。
今は何も聞かないで、言わないでほしいのをわかってくれているようだ。
駅の近くまで来ると、
翔「ちょっと待って」
と言って少し離れる翔。
少しだけ待っていると小走りで翔が近づいてくる。
翔「これ、よかったら飲みながら帰りなよ」
そう言って渡してきたのは温かいミルクティーのペットボトルだった。
『いいんですか?』
翔「うん。あ、ミルクティー嫌いだった?」
『ううん、好き・・・ありがとうございます』
冷たくなった身体を温めるようにペットボトルを抱え、先程よりも柔らかい笑顔で翔にお礼を言う。
翔「気を付けて帰ってね」
『はい』
手を振り合い、名前は駅の中に入っていく。
別れる頃にはだいぶ気持ちが落ち着いていて、足取りも少し軽くなっていた。
“告白されるかも”と花枝が言っていたことが頭に過る。
もしそうなったら・・・
ちゃんと考えてみようと思った。
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