第15話 好意
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ーーー
病院に着くと、真島組の組員が病室まで案内してくれた。
病室に入ろうとしたところで真島の声が響く。
真「もう大丈夫や言うてるやろが!
早う桐生ちゃんのとこ行って喧嘩せなあかんねん!」
『・・・・』
呆れて物も言えないとはこのことだろうか。
ガラ、と病室の扉を開けると「あん?」とこちらを見る真島。顔色は少し悪いが元気に動いている。
『はぁ・・・なにやってんの?』
真「お、名前やないか。見舞いに来てくれたんか?」
『そうだけど心配して損した』
こんなに元気そうならもう大丈夫だろう。
その時、病室の外を歩いていたであろう男たちの声がした。
「やっぱ桐生の弱点はあのガキじゃないか?」
「親父もやってたが、あのガキもう一度拐って・・・」
病室にいる真島組の人たちは焦る。
もちろん真島も今回はおちゃらけず珍しくバツの悪そうな顔をする。
『・・・吾朗ちゃん』
真「な、なんや?」
『桐生さんと一緒にいた子どもって、遥ちゃん?』
真「なんや、知り合いやったんか?」
そうとは知らなかったと言う真島に、名前はそういう問題ではないと怒りを帯びた声で話す。
『小さい子人質に取ってまで喧嘩して、勝って嬉しいの?』
最低・・・と呟く名前に焦る真島と組員たち。
真「・・・すまん、もうせんわ」
『桐生さんと喧嘩するのは良いけど、周りに迷惑かけるのはダメ。
人質なんて以ての外!』
組員「(親父、普通に怒られてる)」
組員「(叔父貴との喧嘩はいいのか)」
真島は反省しているようだ。
組員も驚くほどしょんぼりしている。
『とにかく、もう無茶しないで』
真「わかったわかった」
『・・・ホント、心配したんだから』
泣きそうな名前に狼狽える真島組。
真島はもうピンピンしとるで!と踊り始める。
『吾朗ちゃんがいなくなったら、私、生きていけない』
名前が俯くと真島は真面目な顔になり、名前の頭の上に手を置く。
組員「「「(告白か!??)」」」
組員はドキドキしていたが、そんなことにはならず
真「そんな簡単に居なくならん。
俺は超しぶとい男やからのう」
と真島が名前の頭をわしゃわしゃと撫で回しただけだった。
『・・・約束だよ?』
真「ああ」
真島と名前のやり取りを組員たちは「尊い・・・」と呟きながら見ていたとか。
その後は楽しく世間話などをし、名前は帰ることにした。
休みをもらったが、神室町は帰り道にある。
一応花枝のところに顔を出そうと思い弁当屋に向かっていると
翔「あ、名前さん。」
『あー、えっと、松崎さんでしたよね』
翔にバッタリ会った。
翔は手を振りこちらへ向かってくる。
翔「覚えてくれて嬉しいです。
今日はお店にいなかったんですね」
お弁当の袋を見せ、買いに行ったアピールをして話す翔。
名前は今日は休みをもらっていたこと、近くまで来たから顔を出そうとしていたことを話した。
翔「そうなんですね。
・・・・じゃあ、これからって時間あります?」
『ま、まぁ・・・』
弁当屋に顔を出すのもなんとなくだ。
特に用事もなかったため正直に答える。
翔「良かったらお茶でもしません?」
『え?あ、えーっと・・・』
まだあまり仲が良くない人と2人で、ということに戸惑いを隠せずにいる名前。
翔はクスクス笑って名前の様子を見ている。
翔「ちょっとだけで良いですから、ね?」
『・・・まぁ、ちょっとだけなら』
少し考えて了承する名前に、翔は嬉しそうにはにかむ。
翔「ありがとうございます、じゃあちょうどあそこに喫茶店があるから入ります?」
翔が指差したのは喫茶アルプス。
落ち着いた雰囲気のあるお店だった。
とくに拘りがあるわけでもないためそこに入ることにした。
席に着くと、メニューを名前によく見える向きで置いてくれた。
申し訳なく思い、すぐに決めた。
『えっと、りんごジュースで』
翔「ふふっ、りんごジュース可愛いですね」
『かっ・・・』
なかなか面と向かって言われることのない言葉を言われ、顔を赤くする。
翔は名前の反応に満足そうにする。
翔「俺はアイスコーヒーにしようかな」
『・・・ブラックで飲めるんですか?』
翔「まあね。名前さんは・・・聞かなくてもわかりますよ」
『あ、バカにしました?』
翔「してませんよ。
ビールとかもダメなタイプですよね」
『あー、また!』
翔の人懐っこさに話すのが楽しくなってくる。
極道とも、施設時代の人とも全く関係のない人と楽しく会話をしていることを不思議に思う。
翔「名前さんと話してると面白いですね。
もうタメ口で話して良いです?」
周りからはほとんどタメ口のため、名前も敬語で話されるのは違和感が強いと思っていたところだった。
快く了承すると嬉しそうにまた会話を始めていた。
翔「名前さんは何でお弁当屋になったの?」
『え?あー、神室町で探したい人がいたんです。
ちょうど花枝さん・・・店長が神室町でお弁当屋を開くって聞いて、それで』
翔「へぇー。
俺と一緒だ」
『え?』
小さく低く何か聞こえた気がしたが聞き取れなかった。
そんなことより、と続いたのでそちらに集中した。
翔「探してた人には会えたの?」
『はい、会えました』
翔「そっか、良かったね」
そんな話をしていると、飲み物がなくなっていた。
そろそろ帰ろうかという話になると、メールアドレスを教えてほしいとお願いされる。
別に断る理由も無いため、了承し携帯電話を出した。
翔「ありがとう、連絡するね」
『はい』
お店を出ると、空が暗くなってきたので帰ることにした。
翔は、また店にも顔を出すと行って手を振り別れた。
名前は、携帯電話の中に登録されているメールアドレスが増えたことを静かに喜んでいた。
そして自分から世界を広げていきたいと少しずつ思い始めていた。