第1話 別れと出会い
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1週間後
夜、母はおもむろに蒼天堀へ名前を連れてきた。
ネオンでギラギラしている街、名前はここが少し苦手だった。前世でも今も陰でこそこそ生活していたからだろう。
母「ちょっとここにいなさい、お母さんはご用を済ませてくるわ」
公園のベンチに名前を座らせると、家の中の母の表情とは真反対の優しい笑顔を向けてくる。
名前はそんな母に鳥肌が立ち訝しげな顔で見るも、母は返事を待たずに走っていってしまった。
『(もしかしたら、もしかするかもね・・・)』
頭の中は大人だが身体は5歳、憶測で動き回ったら疲れて動けなくなるのが関の山。
もしかしたら帰ってくるかもしれないとベンチに座って母の帰りを待った。
2時間近く経っても母は戻ってくる気配が無かった。
名前の脳裏に浮かんだ“捨てられた”という文字。
『まぁ、べつにいいけど・・・』
精神的には母がいない方が穏やかに過ごせる。しかし、現実的にはそれは難しいだろう。
5歳の身体で1人で生きていけるわけがない、もし警官に見つかったら母のもとへ連れていかれるか施設に預けられることは容易に想像できた。
どちらにもならないで済む方法は無いものか。
『どうしよっかな』
「あれぇ?こんなとこに女の子ひとり?」
「危ない人に連れてかれちゃうよ?ぎゃはは!」
どうしようか考えていると聞こえる声。
一瞬でわかった、この人たちが危ない人だと。
『お母さんすぐ来るからだいじょうぶ』
「こんな可愛い女の子置いてどこに行っちゃったのかなぁ。一緒にお母さんの所行こう」
名前に向かって手を差し伸べる男。
もっとわかりにくく悪事を働けないものかと思いながら公園の出口に向かって走り出した。
「あ!」
追いかけてくる男たち。
普通の人は追いかけてこない。やっぱり危ない人だった。
人身売買とかかな・・・?怖っ
と思いつつ子どもでしか入れないような細い道などを通り、路地裏へ辿り着く。
『はぁ・・・はぁ・・・さすがに、疲れた』
路地裏のビルの脇で蹲っていると、カン・・・カン・・と微かに横のビルの外階段を降りてくる音が響く。
『!!』
疲労で音に気づくのが遅れてしまった。
顔を上げると目の前にはすでに黒服、眼帯の男が目の前まで来ていた。
『(この人・・・さっきの男たちよりやばい。
けど・・・)』
そう思うが、ここは袋小路。
そして前世に培った勘が、この人はやばいけどすぐに害を与えて来るタイプではないと言い、とりあえず睨むだけ睨む。
眼帯の男「上から見えてたで、あない走って。
何かに追われとったんか?」
落ち着いた声色。
しかし油断はできない、今までも優しそうな顔で人を騙し陥れる連中を何度も見たことがある。
とりあえず距離をとりながら話をする。
『こわい人に おいかけられた』
眼帯「ここは危険な場所や。子どもが1人でおるとこちゃうで?」
『お母さんにおいてかれた、たぶんすてられた』
眼帯の男は目をパチクリさせる。
眼帯「嬢ちゃんが、捨てられた?」
『うん。いつも私を叩いたりけったりしてたから、もういらないんだとおもう』
眼帯「はぁ?それって虐待ってことやないの。
じゃあお巡りさんのとこ行かな」
『やだ』
眼帯「は?」
『おまわりさんは、にがて。』
これは前世の時がそうだったから。
情報屋の仕事も殺し屋の仕事も警察に見つからないように慎重にしていた。
その時の拒絶感が未だに残っているようだ。
『お母さんのとこにもどるのも、どこかにあずけられるのも、やだ』
眼帯「そう言われてもなぁ。ほら、行くで」
また逃げようとするが、体力に限界が来ていて足が震えている。
震える足を無理矢理動かしながら繁華街の方に出ようとする。
眼帯「ちょお待ちぃや」
眼帯の男がゆっくり追いかけてくる。
『・・・・・ぁ・・・』
《ークク、どこまで逃げるつもり、名前?もう体力も限界じゃない?》
疲労やストレスから、前世で男に追われた最期の記憶が甦る。
『!!っ・・・ぃた・・・』
ズキズキと激しい頭痛に襲われ、眼帯の男が何か叫んでいるのを聞きながら意識は闇に飲まれていった。