第13話 桐生一馬とお話
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2005年
神室町で真島と名前が再会して3年が経った。
今でも変わらず、真島組の人たちは弁当屋に頻繁に顔を出してくれていた。
真「おはようさん、今日も繁盛しとるなぁ!
焼肉弁当1つくれや~」
『あれ、何か今日はご機嫌?』
今日の真島はどこか嬉しそうだ。何かあるのかと聞いてみると、よくぞ聞いてくれたとでも言うように話す。
真「そろそろ桐生チャンが帰ってくるって聞いたんや!
もう嬉しゅうて嬉しゅうてたまらんくてのぅ!!」
そういえば服役していたんだった、と思い出す。
10年ぶりに神室町に戻ってくる桐生に会いに行くという真島は生き生きとしていた。
『桐生さんか・・・挨拶も出来なかったな』
名前が桐生のことを思い出して呟いているのを見ると、真島は桐生にもこの弁当屋を紹介しておくと話した。
『ありがとう、桐生さんに会えると良いね』
真「おう!」
弁当を受けとると名前に向け手を振り、スキップしながら去っていった。
花「今の真島さん?」
『はい、仲の良い友だちみたいな人に久しぶりに会えそうで喜んでました』
自分も10年以上会えなかった真島と会えたときは嬉しかったのだ、真島だって同じだろう。
『真島さんも楽しそうで良かった』
そう言って仕事に集中することにした。
ーーー
数日後
『あれ?』
仕事をしていると見覚えのある顔が前を通った。
『桐生さん・・・?』
独特のスーツに赤紫のシャツ姿で堂々と歩いている桐生を見つけた。
10年経っても見た目はほとんど変わっていなかったためわかりやすい。
桐生もこちらの視線に気づいたようで見てきた。
しかし桐生は弁当屋の店員が昔会ったことのある人だとは思わなかったようで不思議そうに見る。
桐「・・・何か用か?」
『え、あ、桐生さん・・・ですよね?
15年くらい前に立華不動産にいた』
桐生はじーっと名前を見て、さらに目を閉じて立華不動産の社員時代を思い出していた。
しかしずっと難しい顔をしている桐生は、あまり覚えていなそうなので説明することにした。
『名前です。“カラの一坪”の件の、マキムラマコトさんと一緒にいた子どもです。』
そこまで言うと思い出したようで、微笑みながら「でかくなったな」と頭をポンポンしてきた。
この弁当屋を知らないということはまだ真島に会っていないということだろうかと疑問に思う名前。
『吾朗ちゃんには会った?』
桐「・・・・・・?」
『あ、真島吾朗』
名前が“吾朗ちゃん”と呼んだことに驚く桐生。
そういえば桐生の前で“吾朗ちゃん”呼びをしたことがなかったと思い出したため、真島吾朗のことであると伝えた。
『桐生さんに早く会いたいって言ってたから、会えたかなぁって思って』
桐「昨日の夜会ったな。」
『え?』
弁当屋を紹介してくれると言ったのに、何を話していたのだろう、他に盛り上がる話がいっぱいあったのかなと不思議に思っていると
桐「真島の兄さんがいきなり喧嘩を吹っ掛けてきたんだ」
『は?』
真島は何を考えているのだろうか、と混乱した。
まさか人にそんな簡単に喧嘩を吹っ掛ける人だったとは。
何か理由があったのではないかと聞くことにした。
『どうして?喧嘩になる理由とかあったんですか?』
桐「いや、兄さんが言うには俺がムショにいる間に鈍っちまったから、昔の強さを取り戻してほしいらしい。
これからも街中で襲いかかってくるって言ってたな」
『・・・わかるけどわからない』
きっと真島は桐生の強さを認めているのだろう。
だから服役して体が鈍ってしまった桐生さんを強くしたいと願うのかもしれない。
しかし、街中で、いたるところで襲いかかるとは何なのだろうか。
極道あるあるなのかと思って桐生の表情を伺うと桐生も迷惑そうな顔で話していたため、やはり真島の考えは突飛なのだとわかる。
『吾朗ちゃんは桐生さんが帰って来て嬉しいんですよ』
桐「そうなのか?
ところで、名前は兄さんとどういう関係なんだ?
なかなかあの人を“吾朗ちゃん”と呼ぶ人はいないからな」
また来たこの質問。
しかし、桐生はカラの一坪の件に関わっているから話しやすい。
虐待を受け、捨てられたところを真島に助けてもらって行動を共にしていたこと、たまたまカラの一坪の件に巻き込まれていたことや、その後施設に行っていたことも話した。
桐「そうか、虐待を・・・。大変だったな」
桐生は優しく声をかけてくれた。
今は真島は変になってしまっているが、根っこの部分が真島と桐生は似ていると思った。
嫌味の無い、真っ直ぐな感情。
そしてそれを人に無意識に向けられる。
桐生も真島も街行く人に意外と道聞かれたり声かけられるんだろうなと思った。
『(だから吾朗ちゃんも桐生さんが好きなんだろうな)』
桐「今、そこで飯を食ってきちまったから弁当は今度買いに来てもいいか?」
『もちろん。からあげとか焼肉弁当とかありますからね』
名前がそう言うと、桐生は手を振り去っていった。
『(桐生さん、殺人事件起こしたって聞いたけど、そんな風に見えないな・・・)』
人を殺めてしまえば多かれ少なかれ、その前後で精神的に変化が起こることが多い。あまりのサイコパスでない限り。
しかし、桐生は昔の性格となんら変わりがないように思えた。
本当に桐生がやったのか、と疑い始めていた。
極道だから、上の者が殺しをした罪を若衆が被ったのかもしれない。
それか他の大切な誰かを庇っているか・・・。
『(ま、考えても仕方ないか)』
桐生もきっと何かしら背負っているものがあるのだろう。無理に聞く必要も探る必要もない、下手に関わって堂島組の恨みを買うわけにいかない。
花枝さんのお弁当で神室町が平和になればいいのに。
なんて思いながら仕事を続けていた。