第1話 別れと出会い
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再び生を受けて5年
前世の記憶はまだ健在だった。
そして、他にもわかったことがたくさんある。
今は1980年代のバブル景気。
過去に飛んだのかと思ったが、ただの過去ではないらしい。
全国各地を渡り歩いていたからわかる、聞いたことの無い土地の名前。
きっと前世と世界線が違うのだろう。
過去というだけで面倒なのに、世界線が違うとなるとまた勝手が異なる。
順応しながら生きるのは少し大変そうだ。
そして、5年過ごしてすでに世界を嫌いになりかけていた。
1988年
とある日の夜
大阪のアパートで怒号が飛んだ。
母「名前!どこ!?名前!!」
『・・・ここだよ、なにかよう?』
母「呼ばれたら早く来るんだよ!鈍くさいね!!今すぐ酒持ってきな!私は仕事で疲れてんだよ」
ドカッ
『あぅっ』
母に背中を蹴られる。急いで酒を取りに行かなければまた蹴られる。
足早に酒を取って母のところへ向かった。
母「まったく、役立たずの男からは役立たずしか生まれないのかしら」
『(・・・あなたの血も混ざってるけどね)
もうおふろいってくるね』
酒を勢い良く呷っている母を尻目にお風呂に向かう。
ボロアパートだが、しっかり名前が掃除をしているため綺麗にはなっている。
服を脱ぎ、台に登って洗面所の鏡を見ると痩せ細りアザだらけの身体が見えた。
水道代節約のため、少しだけお湯を張った湯船の中に入り膝を抱えて座る。
前世と今、どっちが良かったんだろう・・・
私が生まれた時、すでに父は他の女を作っていた。
そして母が私に付きっきりになると、父は家に帰らなくなった。
東京から父の実家がある大阪まで追いかけて引っ越して来たはいいが、父は大阪には戻っていないと言われた。
しかし、いつかここに来るかもしれないと大阪に留まった。
そして名前が2歳になった時、祖母から父が病気で亡くなったことを聞いた。
母はそれから豹変した。
私を憎み、必要最低限の育児しかしなかった。
しかも虫の居所が悪いと殴る蹴るは当たり前だった。
『(前世でいっぱい罪を犯したからかな・・・きっとその罰なんだろうな)
っ・・・、ぅう・・・ぐすっ・・・』
浴室に名前のすすり泣く声が響いた。
お風呂から出ると、母はテーブルに突っ伏して寝ていた。
『・・・・』
冷たい目で見ながらも、5歳の自分にはどうすることもできない。近くにあった毛布を持ってきて母にかけた。
自分で物事を決められる年齢になったらすぐに出て行ってやるんだ、と決意して。