第10話 14年後
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家に帰るとどっと疲れが込み上げてきた。
今まで静かな田舎で暮らしていたため、神室町のようなガヤガヤした街で疲れてしまった。
軽くご飯を食べ、お風呂に入ることに。
ちゃぷん・・・
湯船に浸かり、自分の手を眺める。
“今のお前はこないにキレイな手、しとる”
昔真島に言われたこと。
依然として前世の記憶は消えることなく頭の中に黒い影を落としている。
その度にその言葉を思い出し、落ち着けるようにしていた。
『吾朗ちゃん・・・会いたいよ・・・』
別に恋愛感情を持ったわけではない。
ただ、そこ以外に自分のいる世界は灰色に見えてしかたがないのだ。
施設でも職員や花枝は気にかけ愛情を与えようとしてくれた、それでも頭の黒いモヤが辺り一面に混ざってくすんでいく。
自分には前世の記憶があり、さらに殺し屋だったなんて言えるはずもなく、ずっと14年間隠し事をしていたからだ。
いくら職員が愛情を与えてくれようとしても、その隠し事が名前の回りにとても分厚く高い壁を作り上げてしまっていた。
表面上は笑顔たっぷりの思いやりのある良い子、しかし心はいつも空っぽだった。
鳥が、生まれた瞬間に見たものを親だと思うようなものなのだろうか。
一番最初に心から全てを受け止めてくれた人だから、また会いたい。また自分の世界に色を与えてほしい。
ただの、私のわがまま。
でも、きっと吾朗ちゃんなら受け入れてくれるはず・・・
そんな淡い期待を抱いていた。
『・・・のぼせる前に上がろ』
明日から仕事なのに体調を悪くしてはいけない、と思いお風呂から出て寝る支度をする。
なんだかんだ、お弁当屋の仕事は楽しみだ。
まずは花枝に迷惑にならないように仕事に集中しよう。
そう思いながら眠りについた。
ーーーー
『いらっしゃいませー』
翌日、早速会計を任された。
会計のカウンターで客と話しながらお金の受け渡しをしていく。
お店は開業したばかりだというのに、昔からあったかのような客の入り具合だった。
きっと花枝の弁当と人柄の賜物なのだろう。
『あ、昨日の・・・』
「お、いきなり接客?頑張ってね!」
会計のカウンター前には昨日店に来て花枝と話していた男が。
男はここの焼肉弁当が最高なんだよねと、焼肉弁当を2つ買っていく。
『ありがとうございました!』
「ははっ、美人のスタッフが増えたって組の連中にも伝えとくよ!また来るわ」
そう言って去っていく男。
吾朗ちゃんと知り合いとかじゃないよね・・・と思いつつ仕事に集中する。
お客さんが少ない時間にはお弁当作りのサポートもした。まだ盛り付け程度だが、自分が手を掛けたお弁当が売れると嬉しかった。
花「お疲れさまー」
閉店の時間になり、客がいなくなると花枝が声をかけてくる。
『お疲れさまです。凄い人気ですね』
花「嬉しいことにね。」
花枝は片付けて帰ろうと話す。
すぐに片付けを済ませ、翌日の準備をできるところはしておく。
花「いやぁ、助かるわー。
てきぱき動いてくれる人がいるだけで大助かり!
また明日からもよろしくね」
『は、はい!ありがとうございます!』
2人は店を出て家路についた。
ーーー
1ヶ月後
弁当屋“晴れ屋”には開店前から客が並んでいた。
美味しい弁当と、噂の美人店員2人に会うために。
花「ふふ、名前ちゃんが来てから客足が伸びたわ。」
『お弁当作り頑張らなきゃですね!』
花「そうね。
ところで、名前ちゃんが探してる人は見つかった?」
『いえ、まだ・・・』
花「そう・・・早く会えるといいわね」
そんな話をしていると開店時間になっていた。
急いで開店作業をし、並んでいた人の接客をしていく。