第10話 14年後
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14年後
2002年
『わぁ・・・久しぶりに来たけど相変わらずゴチャゴチャしてるなぁ』
1人の女性が神室町に降り立った。
それは14年前に大阪蒼天堀で母に捨てられ、東北の施設に入っていた名前だった。
『さて、道に迷わないで着けるかなぁ』
名前はある場所に向かっていた。
『あ、ここかな?』
名前が見上げた先にあったのは、“お弁当 「晴れ屋」”
名前はそこの奥にいる女性に話しかけた。
『こんにちはー、名前ですけどー』
名前は高校を卒業する時、神室町で働くべく職を探した。
オフィスの中でもなく、夜の仕事でもない仕事を探していると、施設でご飯を作ってくれていた人がこれから神室町でお弁当屋を開くという偶然に出会った。
その人に自分も一緒に働きたいとお願いすると快く了承してくれた。
「あー!待ってたよ、やっと卒業?」
奥から出てきたのは施設の調理師だった、店長の“森川花枝”だった。
『はい、無事家も決まりました!』
花「良かったね、じゃあ今日はお店休みにしてるから、簡単に説明したら終わりにしようか」
『え、わざわざすみません』
申し訳なく思うが、新人を1人抱えてお店を切り盛りする方が大変なのだろう。
花枝は30代後半の姉御肌の女性だ。ハキハキしていて教えるのも上手だった。
一通り仕事の内容などの話を終え、店内でお茶をしていると窓から覗くチンピラのような男が。
『花枝さん、誰か見てますよ?』
名前がそう言うと、花枝は窓を見てため息を付いた。
男はトントントン、と窓を叩きアピールをしている。
花「なに?今日は休みって書いてあるでしょ?」
「いやぁ、中に店長が見えたからつい、さ。
休みなんて珍しいね、どうしたの?」
花「今新人教育中だから。明日また来てちょうだい」
男は少し話せただけで満足だったのか、「へーい」と返事をして帰っていく。
花「ごめんね、神室町だからああいうのがいっぱい来るのよ。
あいつはヤクザの下っ端なんだって。ここが開店してすぐからの常連さん」
『ふふっ、ここ神室町ですもんね』
名前は神室町で出会い、別れた人たちのことを考えていた。
頭に浮かんだ顔はヤクザがほとんど。
そんな名前を見て、花枝は気になっていたことを聞いた。
花「名前ちゃんは何で神室町に拘ってるの?」
『え?』
花「施設では全然自分のこと話さないタイプだったからさ。
神室町にお店出すってなったときの食いつきが凄くて気になってたのよね。」
『えっと・・・小さい時お世話になった人がこの辺で働いてて・・・
もしかしたらまた会えるかなぁって思ったんです』
10年以上も前のことだ。
もうここにはいないかもしれないと思いつつも、希望を持って神室町に来たと話した。
花「そっか・・・会えるといいわね」
花枝は名前が入所した時から知っているが、その時からかなり大人びていて全く手のかからない子だった。
他の入所している子の世話や職員の手伝いも率先して行っていた。
勉強も中学生レベルのものまではだいたい満点だった。
反面自分のことを全く話さない名前を、花枝は気にかけていた。
そんな名前が自分で選んだ道なのだ、応援してあげようと心に誓った花枝だった。
花「さて、明日からは忙しくなるわよ!
今日は帰ってゆっくりしましょ」
『はい!』
花「あ、ちなみに!
昔のことはわからないけど、今の神室町はヤクザがウロウロしてるから絶対に夜は1人で出歩いちゃダメよ?
名前ちゃんみたいな若くて可愛い子はすぐに狙われるんだから」
『・・・ヤクザの怖さは重々承知してます』
花「?ならいいけど」
遠い目をしながら答える名前を不思議に思うが、分かっているのであれば大丈夫だと帰ることにした。