第9話 さようなら
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名前が行こうとしているのは東北の児童相談所。
新幹線で向かい、着いたのは夕方だった。
すでに場所は調べてあったため、地図を見ながら進んでいく。
『・・・ここだね』
真「ああ・・・」
『・・・そんな悲しそうな顔しないでよ』
真「無理言うなや」
『じゃあ・・・』
ピンポーン
施設の入り口のインターホンを鳴らす。
「はーい」
優しそうな初老の女性が出てくる。
「どうしました?」
名前は、母に虐待を受け東北まで逃げてきたと話す。
「そちらの方は?」
不審そうな顔で真島を見る女性。
真島は、虐待を受けて逃げていた名前をここまで連れてきたと答えた。
女性はなぜその場の警察や施設に行かなかったのか聞くが、名前ができるだけ離れたいと言ったと言い訳をしておいた。
「そう、わかりました。
名前ちゃんね。ちょっと奥でお話しましょう」
『え、吾朗ちゃんとは、もうバイバイ?』
「まだ大丈夫よ。貴方が良ければですけど」
女性は真島に向けて話した。
真島は、自分はまだ時間があるから最後までいると言った。
『じゃあ、ちょっと行ってくるね』
名前は、奥にいる職員と話をしに行った。
母についての聞き取りや様々な確認をしていた。
一方入り口では、先程の女性と真島が話をしていた。
「貴方はどのくらいあの子と一緒にいたんですか?」
真「・・・数日や」
数日間何をしていたのか聞かれるかもしれないと思ったが正直に話した。
今日の午前中も時計屋に行って、一緒にご飯を食べてから来たと。
「そう、数日・・・虐待を受けていたにしては元気そうだったから。そういうことだったのね。
あなたの存在は想像以上に大きかったのかもしれないわね」
真島はそう言われると目頭が熱くなってくる。
真「・・・あの子は愛されることを知らんのや。
ずっと、ずっと長い間愛されてこんかった」
「・・・そうなんですね」
真「せやから、仰山愛したってや。
この世界がええモンだと思わせてあげてくれ・・・
頼む・・・」
「わかりました、お任せください」
真島の心からの懇願に、女性は目を細めて答えた。
その時、名前が真島の方へ戻ってきた。
『吾朗ちゃん、私、近くの施設に入れるかもだって』
真「そうか・・・。
じゃあ、これでお別れやな」
お別れという言葉に、堪えていた涙が溢れてくる。
『吾朗、ちゃん・・・
ありがとう・・・ありがとう』
真「礼を言うのはこっちや。
楽しかったで。じゃあの」
真島は踵を返し、歩き出す。
これ以上ここにいると泣いてしまいそうだった。
『大きくなったら、きっと会いに行くから!』
真島は涙を見せないように下を向き、手をヒラヒラさせて去っていった。
『行っちゃった・・・』
「優しい人だったのね」
『うん・・・』
名前は、真島が去っていった道をずっと見続けていた。
真島との思い出を思い返しながら。
あの数日間のおかげで
少しは世界が好きになれたかな・・・・・。
その思い出があれば、頑張っていける気がする
第9話 終