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202X年
バケツをひっくり返したような大雨の中、バシャバシャと水飛沫を上げながら走る2つの影。
前を必死に走る女性とは対照的に、追いかける男は楽しそうにニヤけている。
『はぁっ、はっ、はぁ・・・』
「クク、どこまで逃げるつもり、名前?もう体力も限界じゃない?」
男の声は聞こえているが、返事なんてしたくもないし、するような状況でもない。
『っ・・・うそ、行き止まり・・・?』
路地を曲がると、そこは行き止まりだった。
壁に背を向け、男と向き合う名前と呼ばれた女性。
ぎり、と歯軋りをしながら男を見る。
「追いかけっこは終わりだね。
さぁ、どうする?
僕の手を取る?
それとも
死ぬ?」
男は名前に向かって手を伸ばす。
反対の手は懐に入っている拳銃を取り出せる位置に置いている。
名前は一度俯くが、次の瞬間には不適な笑みを浮かべて男を見据えた。
『ふざけないで。
死んでもあんたの手なんか取らないから』
「・・・そっか、残念。
じゃ、バイバイ」
パシュッ・・・
銃声とともに崩れ落ちる身体。
『(・・・
殺してくれてありがとう、最低な人生だったよ)』
走馬灯が頭の中に流れてくる。
生まれたときから裏社会の人間に情報屋、殺し屋になるための知識とノウハウを詰め込まれた。
子どもらしいことをしたことも、青春もなかった。
誰かに愛されることも。
毎日言われた情報を取り、暗殺してきた。
この汚れた手を何度血が出るまで擦って洗い流そうとしたことか。
毎日が辛かった、毎日が灰色だった。
ただ、自ら命を捨てる覚悟は無かった。
誰かに命を狙われることも怖かった。
しかし、いざその時が来ると不思議と心は穏やかで感謝の気持ちすら持てた。
さよなら、大っ嫌いな世界
名前の視界は真っ暗になった。
ーーーーー
真っ暗な視界が明るくなった。
死ねなかったのか?
また殺し屋として生きなきゃいけないのか。
しかし目が開かない、そしてうまく声が出せない、息ができない。
ただ、暖かい何かに包まれている感覚がする。
思いきって声を出してみる。
『ぉぎゃぁ!』
・・・・・・え?
名前は自分から出た声に驚く。
そして一度声が出ると、酸素を求めるため息を吸う。息を吸うと次は反射的に声が出る。
『おぎゃあ!』
まさか、まさか・・・
生まれ変わってしまったのか、記憶を保持したまま。
周りの声が聞こえてくる。
元気な女の子ですよ、とかおめでとう、とか。
まったく嬉しくない。
しばらく本能的に泣いていたが、徐々に眠気が襲ってくる。
生まれて間もないときは前世の記憶がある子もいるらしい。
だから目が覚めたらもう記憶がないかもしれない。
そうなっていたら良いなと思いつつ睡魔に身を任せた。
ただいま、世界
次は好きになれるといいな
プロローグ 終