第5話 別れ
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名前は真島から離れ、男の元へ向かう。
『・・・ついていくけど、マコトお姉ちゃんに何かしたら許さないからね』
「安全は保証する」
名前がついてくるとわかると、再度歩き出す男。
近くに黒い車が停まっていた。
運転手が降りてきてドアを開ける。
男がマコトを奥の座席にもたれさせると名前に手招きする。
名前は車に乗る。
もう後戻りはできない。
名前の隣に男が座ると運転手はドアを閉め、運転席へ移動した。
そしてエンジンがかかり、発車する。
「総裁、その子は?」
「保護したお嬢さんだ、このままだと近江連合の手中に落ちそうだったものでな」
『・・・あなたは誰なの?』
「申し遅れた、俺は東城会直系“日侠連”の総裁、世良だ。」
『東城会・・・(吾朗ちゃんが戻りたいって言ってたとこだ)』
名前は今まで真島から聞いた話しなどを思い出していく。
世良はそんな名前をじっと見ていた。
世「ところでお嬢さん。前世の記憶があるのは本当らしいな」
『・・・・・』
名前は、世良に会ってから全然5歳児を装っていないと思い返す。
普通に大人の会話だった。
『・・・それ、どこで聞いたの?』
世良は、近江連合の下っ端たちが話していたのを聞いたと言っていた。
世良もそれをわかった上で接触してきたと知り、警戒を強める名前にフッと笑う世良。
世「まぁ、だからなんだという話だがな。」
『?』
世「お嬢さんはただの子どもだ。
落ち着いたらちゃんと年相応の保護をさせてもらう」
名前は複雑そうな顔で俯く。
ヤクザでも全く考え方が違う。信用していいのか不安にも思っていた。
世「そろそろ名前を聞いてもいいか?」
『・・・名前、苗字名前』
世「名前さん、か」
名前は、世良にどこに向かっているのか聞く。
今は大阪にある椿園の弁天屋というところに向かっているらしい。
世「名前さんのような子どもが行くところではないんだが、少しの間匿うにはちょうど良い」
マ「ん・・・」
その時、マコトが目を覚ます。
マ「っ!ここはどこ!?李さん!李さん!?」
『マコトお姉ちゃん!名前だよ、落ち着いて!』
混乱するマコトに、名前は手を握りながら声をかける。
マコトは知り合いがいたことに安心し少し落ち着く。
世「名前さんをつれてきて良かった」
マ「誰?ここは、車?」
『この人は世良さん。ヤクザだけど、殺す気はないみたい』
名前は世良から聞いたことを話す。
しかし名前もわかないことだらけのため、世良からも説明を受ける。
世「まぁ、後は弁天屋に着いてから話す」
車が停まる。
目的地に着いたようだ。
世良が車から降り、次に名前がマコトの手を握りながら一緒に降りる。
『あ、こういう感じね・・・』
椿園は遊郭街だったようだ。
世良は名前にマコトを頼むと前を歩き出した。
弁天屋はまっすぐ進んだところの奥にあった。
その店の一番奥の部屋に通される。
まずはマコトの治療と着替えをすることにし、それが済んでから詳しい事情を話してくれることになった。
『マコトお姉ちゃん、痛いとこない?』
マ「もう大丈夫。名前ちゃんは平気?」
『うん』
マ「あの人は・・・」
『生きてはいたよ、きっと大丈夫』
不安を振り払うように話をしながら着替えをしていく。
着替えを終えると、世良が待つ部屋に行く。
そこで、“カラの一坪”についての話を聞いた。
マ「私が・・・その、土地の所有者に・・・」
『だから狙われてたんだ。
その土地を手に入れれば、神室町の開発計画が進む』
世「ああ。だが俺たちは全うな取引を経てその“カラの一坪”を手に入れたいと思っている。
だから貴女は命にかえても守る」
マコトと名前は、これから神室町に向かうよう伝えられる。
護衛の人間が迎えに来るからと。
世「それと、マキムラさんにこれを。」
世良はマコトに白杖を渡す。
マ「あ、ありがとうございます」
世「この杖には秘密がある」
世良は白杖を持ったマコトの手に自分の手を添える。
そして杖の上部分を引き抜くと
『!』
刃が出てきた。
世「護身用に使うと良い。名前さんにも何か渡したいが、さすがに5歳児に刃物や銃を渡すのは無理だ」
『使えるけど、後々面倒なことになりそう』
世「ああ。だから我慢して守られてくれ」
そう言うと、世良はそろそろ約束の時間だと言って隣の部屋に入っていった。
しばらくして日侠連の組員が部屋に入って来て、迎えが来たからと隣の部屋に行くよう言われる。
名前がマコトの手を引いて隣の部屋まで行く。
部屋には世良と、もう1人強面のおじさん?お兄さん?がいた。
世「こちらの杖を持った方がマキムラさんだ。
一緒にいるのは名前さん。まぁ、妹みたいなものだと思ってくれればいい」
マコトと名前は座布団の上に座る。
桐「立華不動産の桐生です」
マ「マキムラです・・・お世話になります」
『よろしくお願いします』
桐生は、もう1人尾田という人が神室町まで一緒に行くと話す。
マ「護衛ってことですよね・・・」
マコトは、また自分のために人が動くことに申し訳なく思っていたようだった。
マ「この間、私を守ってくれた人も、殺されました・・・。
名前ちゃんだって、今も怖い思いさせて・・・」
『・・・』
マ「お金なんてどうでも良いです。
早くその土地を手放させて・・・お願い」
桐「わかりました」
世「立華さんによろしくな、桐生」
桐生は世良に一礼すると、立ち上がりマコトの介助をしながら部屋を出る。
名前も立ち上がり、桐生とマコトが離れると世良と目を合わせる。
『真島吾朗、知ってます?』
世「ああ。名前さんが一緒にいた眼帯の男だろう?嶋野組の組員だった男だ」
『もし・・・もしも、ここに来ることがあれば
“迷惑かけてごめんなさい”
って伝えてください』
世「ああ、伝えておこう」
世良の返事を聞くと、名前は桐生のもとへ走った。
弁天屋を出ると、1台のタクシーの前に男が立っていた。
派手なYシャツの上にジャケットを着こなしていた。本当にこの人たちは不動産屋なのかと思う名前。
『あの人が、尾田さん?』
桐「ああ」
尾田はこちらに気づくと急ぐよう声をかけてくる。
マ「・・・え?今の声・・・」
『?』
桐「どうかしましたか?」
マコトは何か気づいたことがあったようだったが、尾田は気に止めず、桐生と名前は不思議に思いつつも先を急ごうとする。
全員タクシーに乗り込むと、出発する。
尾田は助手席に乗り、後部座席のマコトと名前に挨拶する。名前は軽く話をするが、マコトは返事をせず俯いていた。
尾「嫌われちゃいましたかね?」
ヘラヘラしながら前を向く尾田。
しかしすぐ後にはルームミラー越しにマコトを睨み付けていた。
しばらくタクシーで進むと、尾行されていることに気づく。
尾行しているのは堂島組の渋澤だった。
なんとか尾行を撒き、高速を降りて工事中のビルに入ることにした。
無事神室町に辿り着けるのか・・・
第5話 終