第29話 敵とは
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横浜九十九課
九「おー!おふたりともご苦労様です。
お待ちしておりましたぞ」
九十九が笑顔で穏やかに向かえてくれると、どこかホッとする名前。
『(九十九くんはお母さんか?)』
八「トバシのスマホは準備してくれてる?」
九「ヒヒ、もちろん用意してありますとも。
ボクを誰だと思っているのです?」
4人はソファに座り、今後の動きの確認をする。
八神は九十九にもわかるよう、トバシのスマホを使いながらもう一度スマホを使った罠について説明した。
九「もちろん、今この場所でやるわけじゃありませんよね?
桑名さんを捕まえた連中がここへ来てしまいます」
八「ああ。どこか人けのないところでやるよ。
公安の手先が送り込まれてきても誰も困らない場所が良いんだけどな。
それでいて、ちゃんと相手の姿を確認できるところ」
九十九は、少し考え、誠稜高校手前に建設中のビルがあると言う。夜遅くなら人はいないから誰も巻き込まないだろうと。
もう少しドローンなどの準備があると言って九十九は自分の椅子の方に向かっていった。
杉「準備が整うまで少し休憩しよっか」
『はーー・・・・頭痛い』
名前は大きく息を吐き、こめかみを押さえながら前のめりの姿勢になる。
八「大丈夫か?」
『八神さんと桑名さんの会話で、いろんな感情やら記憶やら想像したイメージやらが頭の中でぐちゃぐちゃになってる。
ごめん、ちょっと迷惑モードに突入するかもしれないけど頭の中整理していい?』
八神と杉浦は、頭を押さえながら目を閉じている名前を見て、どれだけ気を張って強がって桑名たちといたのかを想像し胸が痛くなった。
八神と桑名が自分の想いをぶつけ合っているため、名前は間を取り持とうとお互いの話に耳を傾け必死に取り繕っていたのだ。
八神は桑名との会話を思い出す。
理不尽に家族を亡くして自身も辛い想いをした名前。結果的に犯人たちは逮捕され法で守られたが、桑名の話を聞いて感情移入し、精神的に辛くなってきたのだろう。
もちろん八神自身も同じ心境だった。
自分も親を殺され、犯人は自殺、復讐をしたくてもできない複雑さを感じながら自棄になっていた昔を思い出していた。
『・・・八神さんさ、方向性の確認だけど』
しばらく俯いて黙っていた名前は、小さい声で隣に座る八神に話しかける。
八「?」
『桑名さんとか楠本さんがしたことは・・・受け入れられない、許されないこと、で良いんだよね?
なんかもう、わかんなくなってきちゃって・・・
私は法で守られた側の人間だけど・・・松金組に保護された直後は、逮捕だけじゃ足りない、悪いやつらみんな死んじゃえばいいなんて思ったこともあって
それを思い出したら、途端に混乱しちゃって・・・』
不安げに八神を見つめる名前は迷子の子どものような瞳をしていた。
八「ああ。確かに、桑名の言っていることは理解できる。
でもやり方は絶対に間違ってる。
復讐で殺人することを正当化なんてしちゃいけないんだ」
『うん・・・なら良かった。
ちょっと不安だったんだ。
桑名さんがあまりにも普通すぎてさ。
復讐が当たり前かのように、むしろ凄いことのように言うから』
名前は力なく笑った。
ずっと桑名が楠本や江原に「復讐を立派に果たした」、間宮たち共犯者を「大事な教え子」と言っていたことが引っ掛かっていたようだ。
杉「名前ちゃん」
今まで静かに名前と八神の話を聞いていた杉浦が声をかける。
『・・・?』
杉「僕も生野に復讐しようとしたときあったよね」
名前は小さく頷く。
真冬たち検事が来たため寸でのところで復讐は完遂されなかった。
杉「あの時は復讐が失敗した、って悔しくてたまらなかった。
でもさ、今は復讐できなくて良かったって心から思ってる。名前ちゃんと幸せに過ごせてるし、尊敬する八神さんたちと仕事してるからね。
もし、あそこで生野を刺してたら・・・って思うだけでも恐ろしいよ。」
『文也くんの人生も、生野の家族の人生も変わってた・・・もちろん良くない方向に。
やっぱり復讐は何も生まないよ。
法が守ってくれなかったからって法を守らないのは違う。
うん、そうだ。そうだよね』
八「頭ん中整理できた?」
『うん。桑名さんともちゃんと向き合える。
ありがとう、八神さん、文也くん』
その時、九十九がドローンの準備が終わったと話す。
八「よし、杉浦と九十九はここにいてくれ。
俺と名前ちゃんで行ってくる。
行けそう?名前ちゃん」
『ん?もう大丈夫、行こう』
名前の目にもう迷いはなかった。
九十九はドローンの操縦をしてフォローすると話す。
『お願いね』
2人は九十九に教わった場所に向かうことにした。