第28話 正義とは
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
桑「江原明弘と同じように彼女も自分の手で息子の復讐を果たした・・・立派にな」
『立派って・・・そんな言い方・・・』
楠本が川井を殺したときに一緒にいたのは桑名だけだったが、楠本が裏切るはずがないと話す。
ただ、公安がRKを使って自分を狙うのには納得できる、自分が楠本にとっての弱みになるからと。
『どちらにしても桑名さんを捕まえることで黒幕が得をするんだね。
楠本さんだとしたら自分の地位が守られる、そうじゃないなら・・・楠本さんの転覆?』
八「彼女の敵か。
厚労省の中の敵、それか政治的に彼女を目障りに思ってる敵。」
また、ただ楠本玲子を引きずり下ろすのではなく、弱みを握り脅して好きに操るれるのであれば公安も動くのではないか、と推察する。
桑名もその節には一理あると言う。
楠本は世論の後押しや若手からの人望もある権力者だから敵も多いのではないかと。
杉「なんかの記事で読んだけど、大臣も彼女に手を焼いてるみたい。
アホの大臣が威張って変な指示出しても遠慮なく反論する、楠本さんに言い負かされて逆に言いなりになってるんだって」
鉄「じゃあ大臣が楠本玲子の弱みを握ろうとしてんのか?」
杉「大臣は例えばの話だよ・・・力を持ってる楠本さんには敵も多いってこと。
話ちゃんと聞いてた?」
失笑しながら鉄爪に言う杉浦に鉄爪はカチンときて反論する。
鉄「おい、口の利き方」
『そうだよ、頑張って聞いて会話に入ろうとしてるんだから許してあげてよ』
鉄「それフォローしてるつもりか?」
『ううん、してない』
鉄「お前ら・・・」
桑「黒幕はずっと楠本さんの弱みを探してたのかもな」
江原の事件があって、黒幕は楠本もイジメ加害者に復讐をしたのではないかと勘づいたのではないか。
そしてそれらの事件を調べているうちに、さらにイジメ加害者が殺害される事件は他に7件もあったことを知ったのだろう。
ついには黒幕は、楠本が復讐を果たしたと確信を持った。
八「そして江原の事件と楠本玲子の事件には共通する関係者がいるとわかる
それが、澤先生だ」
黒幕もそれに気づきRKを澤先生のところに向かわせた。
八「そしてあんたの名前を聞き出した」
『・・・』
桑名が一瞬目を細めたのを名前は見逃さなかった。
きっと澤先生が殺されたのは桑名も予想外だったのだろう。
八「あんたはきっと・・・良かれと思ってイジメ加害者を何人も殺しまわってた。
被害者の無念を晴らすため・・・そして正義のためってところか?」
八神も感情的になってきたのか立ち上がり桑名と目線を合わせる。
八「でも・・・それが澤先生を巻き込んだ」
桑「そんなつもりはさらさらなかった」
八「いや・・・ただの結果論だなんて言わせねぇ。
遅かれ早かれあんたは自分が破滅するとわかってた。
間宮由衣やほかの教え子たちも道連れにだ。
そしてその時周りで何が起きてようが、ケツを拭く気は最初からない。もう捨て身だからだ。
イジメをするようなクズを何人も地獄に引きずり込めればあとは何も知らねぇってわけだ!」
ずっと八神と目を合わせ静かに聞いていた桑名は目を逸らす。図星のようだ。
それを見た八神はさらに続ける。
八「澤先生の死に顔を、あんたは見てないな?・・・怖い想いをしてたのがよくわかる顔だった。
あんたや江原、楠本玲子・・・人を殺して罪を逃れたやつらのツケをなんで彼女が払わなきゃならねんだ?
あんた、あの世で彼女にあわせる顔があんのか?」
強い怒気のこもった口調で桑名を問い詰める八神。
桑「ないな・・・永遠に頭を下げ続けるしかない。
ならどうしたらいい?警察に自首でもしろってか?」
八「でないと彼女がなんで死ななきゃならなかったのか、誰にも分からずじまいになる。
何も悪くなかった彼女の死を誰もが腫れ物扱いする。今の警察みたいに」
桑「できない相談だ」
今桑名が自首すれば確実に公安に消され、黒幕の思い通りになる。桑名は楠本を売る気はないようだ。
桑「彼女がやった復讐は完全に正当だし、許されなきゃならない」
『っ・・・・(頭、いたい)』
全く相容れない考えの2人。
しかしそれはどちらも他人のための正義。
名前はいろんな感情や記憶、イメージが頭に流れ込み頭痛を感じている。
八「なんだと・・・?」
桑「彼女は自分のひとり息子を辱しめて自殺に追いやったクズを始末した。
法が甘いと泣き寝入りせずに裁くべきを自分の手で裁いただけだ」
ふと名前が杉浦を見ると、桑名の主張に聞き入りながら下唇を噛み締め、手を強く握っていることに気づく。
桑「彼女を罰する資格なんて誰にもない。そんなことは絶対に俺が許さない」
桑名も怒鳴るように八神に言いながら近づいていく。
鉄「おい、そこの茶髪と嬢ちゃん」
睨み合う八神と桑名を見上げ、鉄爪は杉浦と名前に声をかける。
杉浦と名前は顔をずらし鉄爪を見つめる。
鉄「もう話し合いだけじゃ終わんねぇみたいだ」
鉄爪はアゴで端に行こうと誘う。
杉「だね」
『どうしたって相容れないもん。やるしかないでしょあの2人は』
鉄爪、杉浦、名前の3人は壁際に寄り、2人の邪魔にならないようにする。
八「俺のことも殺すのか?自分の正義を邪魔するモンは、もう誰だろうが殺すしかないんだよな?」
桑「俺は殺しをしてきたんじゃない、罰してきたんだ。
何もわかっちゃいねえやつが口をはさむな!!」
八神と桑名の正義をかけた拳がぶつかり合う。
『・・・』
名前は杉浦の様子を見る。やはり飄々としているように見えるが手は固く握りしめられていた。
名前がそっと手を重ねると一瞬ビクッとする杉浦だったが「ありがとう」と小さく呟き優しく握り返してきた。
杉「名前ちゃんは大丈夫?」
『ん?頭使いすぎて頭痛がしてきた』
鉄爪が話している2人を見ると、手を繋いでいることに気づいた。
鉄「なに、お前らそういう感じ?」
『まぁね』
話している間にも八神と桑名はお互い譲り合わない。
八神が拳を入れたら桑名も入れる、互角の戦いだった。
杉「何分経ったっけ?」
鉄「けっこう経つな」
杉「・・・止める?」
鉄「いや、気のすむまでやらせとけ
これもそれなりのコミュニケーションじゃねぇのか?」
『そうなの?』
3人はボロボロでフラフラの八神と桑名を見るとため息をつく。
ついには八神と桑名は立ち上がれなくなった。
鉄「とはいえ、ここまでかな」
杉「うん、さすがにね」
鉄爪は八神のところへ、杉浦は桑名のところへ向かい声をかける。
杉「いい加減にしなよ」
それでも2人は睨み合うが、八神はフラフラと椅子に向かいドカッと座る。
桑名は地面に座り込んだまま八神の様子を見ていた。
もう喧嘩する気はないようだ。
八「あーあ!こないだ憶えた必殺技まだ食らわしてねえんだけどなぁ!!」
桑「俺もこっから切り札出してぶっ倒すとこだったのによぉ!!」
『子どもじゃないんだから・・・』
鉄「あーあー、しっちゃかめっちゃかしてくれやがって」
取り敢えず場所を変えて話し合いをすることにした。
お腹もすいてきたということで、鉄爪の上司の中華料理屋に行く一同だった。
第28話 終