歌
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『~♪』
名前はイヤホンを付け、歌いながら夕飯の支度をしていた。
マンションだが角部屋で、隣の住民はどこまで聞こえているかわからないが特に気にしないでくれているようなので迷惑にならない程度に歌っている。
ガチャ
杉浦が合鍵を使って家に入ってくるが、歌と料理に集中していて気づかなかった。
杉「名前ちゃん、お邪魔してるよ」
廊下を歩く音にも全く気づかず、背中を向けて料理を続ける名前に声をかけるがそれにも気づいていないようだった。
料理中にびっくりさせて怪我させたらイヤだと思ってどうしようかと思っていると、名前が振り返った。
『わあ!??』
杉「ちょ!危ないって!」
杉浦がいきなり視界に入ると肩をビクつかせ、腰が抜けたように後ずさりする名前。
後ろには調理中のフライパンがあり杉浦が咄嗟に名前の手を引き自分の方に引き寄せる。
『ご、ごめん。びっくりしちゃった。
来るって言ってた時間までまだあると思ったから、ボーッとご飯作ってたよ』
杉「それに関してはごめん。連絡すれば良かったね」
2人で謝り合うと、目が合い思わず笑ってしまった。
杉「なに作ってたの?」
『ん?鶏の照り焼き。もう完成だよ』
名前は火を止めて一息つく。
時刻を見ると丁度夕飯時。
『ご飯どうする?もう食べる?』
杉「うん、もらおっかな」
盛り付けしてご飯をよそい、一緒にテーブルまで運んでいく。
杉「うん、美味しい。」
『ありがと』
テレビをつけながらご飯を食べていると、歌番組が始まる。
杉「そういえば名前ちゃんってよく歌聞くよね」
好きなアーティストとかいるの?と聞いてくる杉浦。
『んー・・・特にそういうのは無いかな。気になったら聞くみたいな』
杉「へー」
『文也くんは?』
杉浦も僕も好きなアーティストとかは無いかな、と答える。
広がらない話に笑うしかなかった。
ご飯も食べ終え仲良く洗い物をすると、お風呂に入ることにした。
『じゃあお先行ってくるね』
パタン、と浴室へ続くドアが閉められる。
とすぐに名前が歌う声が杉浦の耳に入る。
杉「クスッ・・・どんだけ好きなの」
杉浦は聞こえてくる名前の歌声に耳を傾けながら微笑む。
『お待たせー』
数十分後、名前がホカホカ湯気を纏いながら浴室から出てきた。
杉「じゃ、僕もお風呂いただこうかな」
次は杉浦が浴室へ入っていく。
ーーー
杉「ふぅ。お風呂ありがとう。
え?」
しばらくして杉浦が浴室から出てくると唖然とする。
杉浦が見たのは、ソファに座りテレビに目を向けたまま無表情で涙を流す名前だった。
杉「名前ちゃん!どうしたの!?」
杉浦が驚きのあまり大きな声を出す。
『・・・え?』
名前は杉浦に言われてハッとする。
そして頬を流れる涙に気づくと戸惑う。
『あ、あれ?またやっちゃった』
杉「なになに、なにがあったの。」
『えっと、テレビ見てて・・・
初めて聞いた歌でさ、なんか、いろいろ考えちゃって』
杉浦は名前の若干支離滅裂な話に戸惑うが、テレビを見ると、今は“泣ける歌特集”というコーナーをしていたため、なんとなく理解した。
杉「泣ける歌に感情移入して泣いちゃったってこと?」
『・・・うん、時々あるんだ。なんか歌詞がさ、自分と重なる部分があるとさ・・・』
杉「感受性が豊かなんだね。
前から人の感情とかに敏感だとは思ってたけど」
しかも歌は漫画やアニメなどの視覚的な情報で制限されるものと違い、いくらでも解釈、イメージできる。
杉「・・・1人で歌番組観るの禁止にしようかな」
『なんで!』
杉「それでしんどくなったことないの?」
杉浦は、初めて聞く歌に感情移入し、昔のことを思い出してしまうことを心配していた。
『今のところはないよ。
さっきみたいに気づいたら泣いてた、っていうのは何回かあったけど』
杉「それならいいけど。
名前ちゃんから好きな歌を取り上げるわけにいかないしね。」
ただ、と杉浦は続けた。
杉「せめて泣いちゃった時は僕に連絡してくれない?
心配してんだからさ」
『ふふっ、文也くんは過保護だ』
杉「大事な人が泣いてたら誰だって心配するよ」
『ありがと』
2人は横に並んで歌番組を見続けていた。
おわり