第12話 探り探られ
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深夜1時
『・・・・・』
名前はとある建物の中に入り込み、パソコンを操作していた。
カタカタ・・・カタカタ・・・・
タン・・・
『(よし、後はダウンロードを待つだけ)』
名前がCIAからの依頼で情報を求められている組織に関わっている可能性のある企業の情報を手に入れたため、入り込んで調査をしていたのだ。
『・・・・・ふぅ』
これから行うことに緊張が走る。ハッカーでもあるが、現場に入り込んで調査をすることも多い名前。
侵入するのは、家でパソコンを使って情報を集めている時と緊張の度合いが全く異なる。
『(潜入捜査官ってやっぱり大変なんだろうな)』
安室や赤井のことを頭に浮かべながら、首元を流れる汗を拭う。
『(防犯カメラは・・・・まだ全部機能停止中。ダウンロードは後1分・・・)』
防犯カメラの位置、個数は把握済だ。防犯カメラにもハッキングして過去の映像が流れるようにしているため、カメラのモニターを見ている人物がいたとしても名前がいることは気づかれないだろう。
『!!』
その時、カツンカツン、と靴の音が廊下から聞こえる。
『(・・・・・)』
靴の音はどんどん近づいてくる。大丈夫だとはわかっていても高鳴る心臓。心臓の音が外まで響いているのではないかと錯覚するほどだ。
『(よし・・・)』
名前はダウンロードが終わったことを確認すると、パソコンを閉じ、パソコンに刺さっているUSBを引き抜く。
そして物音を立てないように窓際に行くと、
ガチャッ
窓を開けた。
「誰だっ!」
その音を聞きつけた足音の男は、すぐに名前のいる部屋に入ってくる。
名前は窓に足をかけると、ダンッと跳んだ。
ここは4階。このまま地面に落ちれば無傷では済まないが、既に建物の造りはリサーチ済みだ。
向かいにある同じ企業の建物3階にはベランダがある。そこへ跳び移った。
チラッと先程までいた部屋の窓を見る。
パーカーのフードを被り、サングラスとマスクをしているため顔は見られないはずだ。
部屋の窓から男が顔を出している。追いかけるのは無理だとわかったのか、名前の動きを見ながらどこかへ電話していた。
『(ついてこないなら余裕だね)』
名前はベランダを渡り歩き、建物の裏手へ回った。先程の男からはもう死角になっている。
塀が建物の近くにある場所まで移動すると、塀に跳び移りそのまま道路へと降り立った。
深夜ということもあり、人も車も少なかった。
タタッと走り、路地裏まで来ると急いでパーカーとサングラス、マスクを取り鞄に詰め込む。
そして何事も無かったかのように早歩きで侵入した建物から離れ、すぐにタクシーを捕まえた。
タクシーに乗り込むとパソコンを広げ、とあるソフトを起動させておいた。
『(これでよし、と)』
運転手に心配されない程度に深呼吸をすると、パソコンを一度閉じて鞄に入れ、窓の外を眺めた。
今日はマンションに帰ってきていた。
時間が遅くなったというのもあるが、侵入する調査をした日には身元がバレないように工藤邸に帰らないようにしている。
尾行や盗聴器、発信器の類は念入りに確認してから。
鞄からパソコンを出し、開いてテーブルに置いてからシャワーへ向う。
汗をかいていたから心地良い。
シャワーを終えたらコーヒーを用意し、パソコンを見た。
パソコンの画面には、先程侵入した企業のパソコンの画面が映し出されている。
名前の侵入に気づいた男か、電話の相手か誰かが、名前が侵入した後、大事な取引先のデータを抜き取られていないか、見られていないか確認していたようだが、その画面が録画され名前のパソコンに送られてきているのだ。
『慌てて確認しちゃダメだよー』
全ては名前の思うツボだ。
慌ててデータの確認をすると逆に全てがバレてしまうプログラムを相手のパソコンに組み込んだ。凄腕のハッカーでない限り気づかないような代物だ。
あとはのんびりデータが集まるのを待つだけ。
その時
たった今メールが届いたと通知が来た。
『なになに・・・・・・うわ』
名前はメールの本文を見て顔を歪めた。
“工藤名前の情報求む”
とあったのだ。
そのうちこれが来ると思っていたため驚きはしなかったが、多少は動揺する。
『わざと、なのかな?』
名前はメールの文章を見て気づいたことがある。
以前毛利小五郎を探ってほしいと依頼してきた人物に、文章の構成や言い回しがそっくりだったのだ。
削除しないで保管してある、受けない依頼フォルダを確認する。
『・・・・わざとだな、これは』
毛利小五郎を探ってほしいという依頼とメールアドレスが一緒だった。
『あー、めんどくさ』
このメールを送ってきた人物には心当たりがある。というより、頭に1人しか浮かばない。
『安室さん・・・』
きっと安室は名前が“ロビン”だと気づいている。それを示唆するようなメールを送ってきたのかもしれない。
しかし何のために?
協力させるため?
『ふー、会って話すか』
メールには返事をせず、明日ポアロに行ってみることにした。