【名探偵】3万Hit記念
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『私バニラにしよ』
安「じゃあ僕はイチゴにしようかな」
それぞれソフトクリームを買うと、店の前のベンチで食べることにした。
安「名前さん、バニラ少しください」
『え』
安「ほら、今日は恋人でしょう?恋人ならそのくらいするじゃないですか」
怪しまれますよ、と言う脅し文句を言われてしまったら断れない。
恐る恐るバニラソフトクリームを安室の方へ近づける。もちろん自分が食べた方と反対側を安室に向けて。
安「あまりこういうのはしないタイプです?」
回し食べが苦手なタイプも時々いる。
しかし、それは別に大丈夫だ。男友だちとだってしたことがある。
『いや・・・なんとなく・・・』
安室の下心が見えているなんて言えるわけがない。
安室は名前がまだ食べていない方を少しだけ食べた。
安「やっぱりバニラも良いですね。イチゴの方食べます?」
食べるかどうか尋ねる言い方ではあるが、先ほどのやり取りを思い出すと、きっと断れない状況に持っていかれるはずだ。
『ちょっとだけ』
そう言うと安室は満足そうに自分のソフトクリームを名前の前に差し出す。
パク、と控え目に食べてみる。バニラにイチゴの甘酸っぱいソースがかかっていて美味しい。
『美味しいですね』
安「良かったです」
そろそろ集合時間だ。集合場所へ向かうとすぐ他のメンバーも集まってきてバス移動再開。
昼食を決められたお店で食べたあとは、また桜の見える観光名所に向かうことになっている。
『わぁ・・・』
最後の名所に着いたのは夕方。
夕日と大きな桜のグラデーションが素敵だ。
小高い丘に一際大きい桜の木があり、そこへ向かうことに。
安「今回は先頭で行きましょうか」
ガイドはもう下で待っていると言っており、ツアーの参加者だけで登っていく。
『そうですね。上から調査対象を見れますもんね』
安「ふふっ」
もうすぐこのツアーも終わりだ、調査対象の浮気現場をしっかり撮るぞ、と意気込む。何度も調査しているうち、名前も探偵のようになり始めたのだ。
その様子を見て安室は微笑ましく思っていたとか。
2人でズンズン丘の上まで登っていく。
『大きい桜ですね』
桜の木の目の前まで来ると、桜を見上げた後、後ろの景色も見たくて振り返った。
『あれ?』
その時、あることに気づいた。
後ろに誰もいない。人っ子ひとり。先ほどまで後ろを歩いていたはずの人も。そしてバスも見当たらなかった。
しばらく前の桜だけを見て歩いていたため何も気づいていなかった。
『え、私たち集合時間間違えちゃいました!?もうみんなバスで行っちゃったとか・・・』
突然誰もいなくなったため、あたふたしながら安室に問う。置いていかれたらどうしようと。
すると、安室はクックッと笑ってスマホを見せた。
『なに?』
《名前さーん!どお!?楽しんでる!?》
安室のスマホは誰かと電話が繋がっているようだ。
この声は知っている。
『園子ちゃん?』
安室のスマホから聞こえてきた声は新一の友だちの鈴木園子だった。
『いや、今、ちょっと』
園《アワアワしてるってことは、作戦成功ね!》
『作戦・・・?』
名前は安室の顔を見る。申し訳なさそうにウインクしていてイライラした。きっと安室もグルなのだろう。
園《そう!鈴木財閥主催の、名前さんと安室さんを近づけよう大作戦!》
『なにそれ!?』
園子は、今日のことは全て自分たちが立てた計画だったと言う。浮気調査の話も嘘で、ツアーに参加した人や周りの人々は基本的にエキストラだったらしい。
今は、安室と名前を2人きりにするために、ツアーの参加者のフリをしたエキストラたちは名前にバレないようにその場を去ったようだ。
『もう、信じらんない』
園《あははっ、気を悪くしたなら謝るわ。でも楽しかったでしょ?》
笑いながら話す園子。名前は安室のスマホを奪い取り通話を切った。
安「すみません、怒らせてしまいましたか?」
『・・・どうせ園子ちゃんに誘われたんでしょ?』
ポアロで作戦会議をしている姿が頭に浮かんだ。
きっと蘭も一緒だったのだろう。女子高生たちがキャイキャイ言いながら立てた作戦。ちょっとムカついたが、可愛らしく思った。
安「こうでもしないと、名前さんとお出かけなんてできないだろうって、園子さんが」
『・・・はぁ・・・』
名前は小さくため息をつくと、大きな桜の木に向き直った。
『花見くらいなら、真正面から誘ってくれたら行ったのに』
安「!」
安室は目を見開く。名前がそんなことを言うと思っていなかったのだ。
後ろを向いているため表情は見えなかった。
しかし、きっと怒っているのでも、笑っているのでもないだろうと思った。
安「(照れているのでしょうかね)」
『でも、一緒に写真撮れないのが難点ですね』
安「あ・・・」
安室は公安で、潜入捜査官だ。気安く写真を撮ることなどできない。そのせいで自らや周りを危険な目に晒してしまうから。
安「思い出は心の中に残ってますから」
『ははっ、すぐに記憶から消してください』
安「まさか。一番大事な記憶フォルダにでも入れときます」
『いや、仕事関係を一番にしてくださいよ』
2人はそんな話をしながら戻った。
バスがあった場所には車が一台。園子が手配したようだ。
きっと運転手に何を言ってもちんぷんかんぷんだろうから、帰ってから園子に怒ろうと思う名前だった。
『まぁ、でも、それなりに楽しめましたよ。探偵のフリ』
安「恋人のフリだったんですけどね」
おわり