第15話
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空のグラスをもらった男性はとある部屋に入っていった。
その場所を突き止めるとナマエたちは念のため変装してその扉の前に行く。
「“完全浄化水”はいかがでございますか?30ポンドでございます」
かなりお高い水だ。
しかし、そんな高い水を買える者でなければここに入る資格が無いということ。
シエルが早速乗り込もうとすると、セバスチャンに止められる。“暁学会”には決められた挨拶があり、それを知らないと退場させられるとの情報を得ていたようだ。
『どんな挨拶?』
セバスチャンはナマエとシエルの耳元でその挨拶の仕方を伝えた。それを聞いたシエルは唖然とする。
しかし、できなければ即退場。
息を呑み覚悟を決めると、水をもらい部屋の中に入っていった。
中に入るとすぐ身なりの良い初老の男性に初めての方かと声をかけられる。
ここで先ほどセバスチャンに聞いた挨拶をするのだと一瞬で把握した。
シエ「“完全なる胸の炎は”」
『“何者にも消せやしない”』
「『我ら・・・・・不死鳥(フェニックス)!!』」
片足を上げて両手を広げ、鳥が飛び立つようなポーズをしながら合言葉を言う。
こんな恥ずかしいポーズが挨拶など馬鹿げていると顔を赤らめながら思うシエルだったが、見ていた男性も同じポーズで「不死鳥!!」と応え、正解なのだと分かった。
「ようこそ、暁学会へ。会員証のバッヂです」
バッヂをもらいセバスチャンに付けてもらっていると、聞いたことのある笑い声が響いた。
葬儀屋「イーッヒッヒッヒ!まさか伯爵とナマエ嬢があんなマネするなんてねぇ〜〜」
シエ「葬儀屋!」
そこにいたのは、笑いながら涙を流す葬儀屋だった。
変装していても、知り合いにはすぐにわかる程度のものだったためバレてしまったのだろう。
まだ笑い転げている葬儀屋になぜここにいるのか聞くと仕事だと言う。
続けて人体実験の件も聞いてみたところ、その情報を渡すには対価(笑い)が必要だと、もう一度あのポーズをして欲しいと言われた。
シエ「誰が・・・」
「不死鳥!!」
シエルが恥ずかしくて突っぱねようとした時、これまた聞き覚えのある声がした。
そこには、例の挨拶を自分流にアレンジしているドルイット子爵がいた。
彼も医師免許を持っているため、この学会に参加していたのだろう。
闇オークションといい、人体実験といいどれだけ裏社会に足を突っ込んでいるのだろうか。
そんなことを思いながらドルイットを見ていると、見たことの無い会員だったからか、真っすぐこちらへ向かって来て声をかけてきた。
子爵「おや?君たちどこかでお会いしたことがあるかな?」
ドルイットの美しいもの大好きセンサーが働いたようで、変装しているシエルとナマエの顔を覗き込む。
シエ「い、いえ!間違いなく初対面です!」
『お、お会い出来て光栄です!』
子爵「確かに、君たちのような美少年美少女、一度見たら忘れるはずがない」
ゾワゾワ鳥肌を立てながらドルイットの応対をしていると、葬儀屋がいなくなっていることに気づいた。
そしてざわつく会場。そろそろ会合が始まるようだ。
奥の扉が開き、入ってきたのは棺桶を持った人たちと、白衣の茶髪さわやかイケメンのお兄さんだった。
まだ近くにいたドルイットは、彼がこの学会の創立者だと教えてくれた。
リアン「完全なる胸の炎は、何者にも消せやしない・・・不死鳥!!」
『(彼がこのポーズも作ったのかな・・・)』
勢い良く、そして誰よりもキレのある動きで挨拶をしていたリアン。
しかし次の瞬間には身体を戻し、創立者らしく挨拶している。
リアン「完全なる救済とは何か・・・それは完全なる健康です!
健康な肉体!健康な歯!健康な肉体に宿る健康な精神!そして健康な天気!健康は実に素晴らしい!!」
医師らしく健康を重視する学会なのだろうか、と思っているとリアンの表情が急に険しくなった。
リアン「しかし我々にはどんなに努力しても克服できない最大の不健康がある。それは何か?
死です!」
『!』
雲行きが怪しくなってきた。
リアンは、この厄災から救ってくれる素晴らしい力が暁学会の医学だという。
そしてその研究の成果を見せてくれると。
『(怪しいことこの上ない・・・)』
棺桶の蓋が開けられる。
そこには、事故で亡くなった若い女性が横たわっている。
もしかしたら死体のフリした人間で、信者を騙そうとしているのではないかと思ったが、セバスチャンの嗅覚で本物であるという話になる。
リアン「では皆さんにお見せしましょう!医学の力を!!完全救済を!!!」
リアンは棺桶に入っている死体に電流のようなものを流し込んだ。
すると、死体の女性はムクッと起き上がる。
死を克服したとざわつき拍手喝采の会場。遺族も泣いて女性を抱きしめながら喜んでいた。
どういうことだと困惑しながらシエルとナマエは見ていたが、次の瞬間
ゴリッ
女性が抱きしめていた母の首筋に咬み付いたのだ。しかも強い力で咬んだようで肉がちぎれる音もする。出血量、咬まれた場所などを見ても母は助からないことがわかる。
『なっ・・・』
シエ「セバスチャン!」
セバ「御意、ご主人様」
死体が人間を殺した、とわかると会合に参加していた人たちはパニックを起こし逃げ惑う。
シエルがセバスチャンに倒すよう命じ、胸にナイフを数本刺したが未だ動き続けている。
シエ「こいつは、一体・・・」
『心臓に、刺さってるよね』
セバ「ええ・・・私には解りかねる存在です」
セバスチャンでも解らないということは、魔のものでもなく神のような存在でも無いということ。
創立者のリアンは、混乱に乗じて逃げていた。
それに気づくも、追いかけるよりこの動く死体をなんとかするほうが先決だと、死体と向き合う。
しかし、どう倒したら良いかわからずにいると、「こいつらは頭潰さなきゃ殺せない」とどこからか声がした。
声の主は死体に向かって跳び、芝刈り機で頭部を潰していた。
芝刈り機で死体を倒した男はノートを見ながら、“やっぱり死んでる”“回収したはず”など話している。
『死神・・・』
その男は、死体に咬み殺された女性の亡骸とノートとを見比べながら、こっちはリストに載ってると言い、仕事を始めた。
死神の仕事・・・魂を審査すること。
死神は、仕事が一段落するとナマエたちの方に顔を向ける。
「その格好・・・もしやアンタが噂のセバスちゃん?」
グレルが噂を流しているのだろうか。
セバスチャンはその呼び方は不本意だと正しい名前を名乗る。
ロナ「死神派遣協会回収部ロナルド・ノックス。ウチの先輩がお世話んなってマース」
いかにも最近の若者という喋り方や仕草だ。
『死神たちはこの状況知ってたの?』
ロナ「あー!君がセバスちゃんを先輩から奪おうとしてる女の子か」
『な、なに』
ロナルドはナマエの近くに来てジロジロ上から下までじっくり見る。
ロナ「めっちゃ可愛いじゃん。先輩はホント美しい男にしか興味ないのか。ドン引き。
ねぇ、今度遊びに行かない?」
『えっ、いや、行かない』
手を握られデートに誘われるナマエは戸惑いながら拒否していた。
その時、後ろにいたセバスチャンがナマエとロナルドの間に入り、ロナルドに攻撃を与えようとしていた。
ドドッ!
『わっ』
セバ「お嬢様に触れないでいただけますか?」
ロナルドは芝刈り機を振り応戦する。セバスチャンは軽々と芝刈り機を受け止めていた。
ロナ「なに、本当にそういう関係なの?」
セバ「・・・契約主なので」
ロナ「へぇ。ま、いいや。可愛い女の子なら世の中にごまんといるしね。
とりあえず、悪魔が乗船してるってバレたらメンドーなことになりそージャン?そんで残業とかマジ勘弁なんで、ここで消えてくんない?」
ロナルドはセバスチャンに敵意を向け始めた。
しかし、ロナルドに構っている時間はない。リアンを追いかけなければ、と思いシエルとナマエは先に行くことになった。
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