第12話
夢小説設定
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翌朝
ナマエが起きると、隣でシエルが眠っていた。
昨日儀式の間を再現した部屋に入ってから心がざわつき、トラウマを引き起こされた後から何もわからなくなった。
“あの日”の恐怖、絶望、痛みに囚われていた。
『ふぅーー・・・』
寝て起きたらだいぶ冷静に昨日のことを振り返ることができた。シエルに心配かけたろうな、と思いながら隣りにいるシエルの柔らかい髪を撫でた。
シエ「ん・・・・姉様・・・?」
するとシエルが目を覚ます。
ナマエは心配かけてごめんと額にキスをしながら謝った。
シエ「落ち着いたようで良かった」
『うん。もう大丈夫』
シエ「今日、ケルヴィンが援助していた貧救院に行こうと思っているが、姉様は?」
『私も行く』
そう話しているとセバスチャンが紅茶や新聞を持って部屋に入ってきた。
セバ「おはようございます。早朝の紅茶をお持ちしました」
『セバスチャン・・・部屋の片付けしてくれたの?』
鏡台が綺麗になっていたことに気づくとセバスチャンに声をかけた。自分が枕を投げて鏡台に当て、上に置いてあったものは床に落ち、鏡も割れていたのだ。
セバ「ええ。あのままではお怪我をされてしまいますからね」
『ごめんね』
2人は紅茶を飲み終えるとそれぞれ部屋に戻って着替え、貧救院に向かう準備をした。
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ロンドンの駅に着き、汽車に乗り換える。
駅の中を歩いていると、シエルよりも小さい少女がオレンジを売っていた。
シエルはオレンジを買ってあげるようセバスチャンに伝えた。
『ありがとう』
ナマエは少女に優しく笑いかけながら声をかけ、汽車の中に入っていく。
一等室に入る3人。セバスチャンはいつもなら三等席を取るのだが、今日はチケットが取れず一緒にいることに謝罪していた。
シエ「別にかまわん」
『私も気にしないよ』
シエルは1人で座り、その対面席にナマエ、セバスチャンが並んで座った。
汽車が発車すると、シエルは窓の縁に肘をつけ外を見ていた。
セバ「ひとつ、質問をしてもよろしいでしょうか?」
セバスチャンはオレンジの皮を剥きながらシエルに向かって問う。
セバ「なぜ彼らの育った貧救院へ?」
シエ「・・・パトロンがいなくなったんだ、貧救院を運営するには新しいパトロンがいる。バートン伯あたりなら寄附に嫌な顔をしないだろうし紹介してやってもいい」
後始末までがファントムハイヴの仕事だ、裏社会の事情で表社会の人間が犠牲になる必要はないと話す。
セバ「では、なぜあの子どもたちを?」
ケルヴィン男爵の屋敷で子どもたちごと燃やし尽くしたことを話しているのだろう。
セバスチャンは切り終わり、取りやすくしたオレンジをシエルとナマエの前に出す。
シエ「ああいう子どもを昔たくさん見たことがある。ああなってしまってはもうもとには戻れない。それなら・・・」
『・・・・』
セバ「いっそ死んでしまったほうが幸せだと?傲慢ですね」
シエ「はっ、傲慢でない人間などいるのか?」
セバ「クス、私はお会いしたことがありませんね。強いて言えばお嬢様でしょうか」
『・・・そんなことないよ。私だって傲慢だよ』
オレンジをパク、と食べながら返事をする。
優しいと思われがちだが、基本的に自分とシエルのことしか考えていない。自分とシエルに被害が出るのであれば他の人だって足蹴にする。
シエ「僕らはたまたまお前を喚び出せたから立ち上がる力を手に入れただけだ。
僕は傲慢だ。だが、無責任に誰かを救えると豪語できるほどじゃない」
セバ「さようでございますか」
窓辺にはオレンジの皮。
オレンジを売っていた少女は救えたのだろうか。
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ケルヴィン男爵が援助していたレイボーン貧救院の近くまで辿り着いた。
近所に住む人に詳しい場所を聞くと、すぐそこの丘の上だと言われ、向かうことにした。
しかし丘の上にあったものは瓦礫の山。
ケルヴィン男爵は嘘をジョーカーたちに伝えていたのだ。すでに貧救院は無人になっていた。ジョーカーたちが守りたいと言っていた子どもたちなどいなかったのだ。
『きっと、子どもたちはみんな・・・』
幸せに貧救院を出ていったとは考えにくい。
となればみんな医師やケルヴィン男爵の手によって命を落としているという線が濃厚だろう。
『酷い・・・わっ』
セバ「お嬢様、お手を」
丘の上は風邪が強かった。強風でバランスを崩したナマエをセバスチャンは支える。
その時シエルが笑い出した。
姑息で残酷で醜悪で、人間の方が悪魔よりもよっぽど悪魔らしいと。
シエルの笑いは心の底からの笑いではなく、心が壊れてしまいそうな危うい笑いにも思えた。
『シエル・・・・』
シエ「あはははは!
僕も同じだ。僕にもあいつらと同じ醜い中身が詰まってる。これが人間だ!人間なんだよ!!セバスチャン!!」
必死に足掻き、他人を蹴落とし、奪い奪われ言い訳を繰り返しながら、それでも丘を越えた彼方を目指す。
セバ「だから人間って面白いんですよね」
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