最終話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
新宿での決戦で、高専関係者の被害は五条のみに留まった。
乙骨もとりあえずは無事だという連絡を受けている。
天元の結界もまだ作動しており、高専内も何時も通りとは行かないが、建物もある程度修復して過ごせるようになった。
『・・・・・』
名前は自室にいた。
傷ももう治り、あとは伏黒や乙骨の意識が戻るのを待つだけとなっている。
カタ・・・
名前は引き出しから母からの手紙を取り出し、ベッドに座って読み返す。
読み返すと、五条とのたくさんの思い出が頭の中に駆け巡る。
“名前が独りにならないよう、幸せに笑顔いっぱいで過ごせるよう、近くで見守っていただけると幸いです。”
独りじゃない、独りではない。
しかし、大事な人がいないではないか。
この手紙を受け取ったこの世で一番大切な人と出会った時のこと、“あの日”のこと、恋人になった日のこと・・・今でも鮮明に思い出せる。
『悟っ・・・悟ぅ・・・ぅああ・・・』
今まで堪えていた涙が溢れる。
どうして悟が死ななければならなかったのか、自分はこれからどうしたらいいのか、何もわからなくなり、悲しみと混乱で涙が止まらなくなる。
ポタポタと母からの手紙に涙の跡がつく。
『最強、なんだからっ・・・死なないでよぉ・・・』
あの不敵な笑み、悪戯な笑み、優しい笑み・・・そして時折見せる寂しそうな笑み。
頭の中で浮かんでは消えていく。
『っ・・・うぅ・・・』
何分くらいそうしていただろうか、
コンコン・・・
ノック音が聞こえる。
自分は今涙でグシャグシャの顔だ。呑気に扉を開けることなどできない。それに、今は誰かと話すことができるような気持ちではない。
きっと泣き声などが外に漏れているだろうが、居留守を決め込むことにした。
コンコン
硝「名前、いるんだろ?家入だ。ちょっとだけ話がある」
ノックをしていたのは家入だった。
さすがに五条の同級生である家入を突っぱねることはしたくない。きっと家入もショックは大きいのだから。
『ちょっと待って』と鼻声で答えると、涙を強引にティッシュで拭き、フラつきながら扉を開けた。
扉の前にはいつもよりも隈が濃い家入が立っていた。新宿決戦の後始末が忙しいこともあるが、やはり家入も五条が亡くなったことでダメージは受けているようだ。
3人だけの同級生。
苦楽や青春を共にした悪友たちがいなくなったのだ。孤独感を感じているのかもしれない。
しかし家入は名前の顔を見るとフッと鼻で笑った。
硝「・・・酷い顔だな」
『・・・・』
硝「ごめんごめん・・・五条から預かってるものがあってさ」
まさか傷心中なのに泣き腫らした顔を笑われるとは思わなかった。
涙で真っ赤になった目、腫れた瞼で家入を睨んでいると、何か紙を渡された。
『何?手紙・・・?』
硝「万が一、絶対ないと思うけど、自分に何かあったら渡してくれって言われてたやつだよ」
家入はそれだけ言うと部屋から出ていった。
名前は渡された手紙を見る。封筒に入っており、可愛い字で名前の名前とともに、自分のデフォルメした似顔絵が描かれていた。
自分にもしものことがあった時のことを考えて何かを遺すなんてらしくないなと思い、少し笑ってしまった。
カサ・・・
ゆっくり封筒を開け、中の手紙を取り出す。
そこには短い文章でこう書いてあった。
“自分を大切に。名前を大切にしてくれる人と幸せになってねー。僕以外の男と結婚とか・・・・まぁ、僕が認める男ならしてもいいよ!”
『っ・・・・・』
自分がいなくなった時に名前が混乱することを予想していたのだろう。
きっと自分の死を引き摺ってしまう。それで名前の人生を狂わせたくなかったのだ。
まだ未来ある若者。
まだまだ幸せはたくさん掴める、と。
たくさん愛を伝えたかっただろうが、まったくその言葉は無かった。自分に何かあった時の手紙に“愛してる”なんて書いた日には、それこそ“呪い”をかけることと同義だ。
だから“願い”を書いたのだ。幸せになってくれと。
『らしくない、らしくないなぁ・・・』
再び流れる涙。
しかし、今は少し気分が良かった。
五条からの手紙を母の手紙と同じ引き出しにしまうと、涙を拭き部屋を出た。
俯いてなんていない、しっかり前を向いて。