第20話 告白
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シャルルで杉浦を見ることになった東と名前。
東「なんか飲みもんでも持ってくるわ」
『うん』
バックヤードに入っていく東。残ったは良いがどう話していいか迷い、とりあえず隣に座って杉浦の背中に手を当てたまま思案する名前。
『・・・杉う「文也」・・・え?』
杉「文也って呼んで。名前ちゃんには・・・偽名じゃなくて本名で呼ばれたい」
『わかった・・・文也くん。』
杉「うん」
『まぁ、八神さんも海藤さんも・・・東も、偽名だとかそんなの気にしないと思うけどな。人の内面を見てくれる良い人たちだから』
杉「(そういう問題じゃないんだけどなぁ。)うん、そうだろうね。今まで疑って申し訳ないと思ってる」
そんな話をしていると少しずつ落ち着いてきたのか、深いため息をつき顔を上げる杉浦。顔だけ名前に向けるとずっと疑問に思ってたことを口にする。
杉「ねぇ、名前ちゃん。前にさ、僕が昔の名前ちゃんと同じような悲しくて憎しみの籠った目をしてたって言ってたよね。・・・名前ちゃんの過去も、知りたい」
『ああ、それね・・・』
チラッと杉浦を見た後、フッと寂しげに笑い自分の手元に視線をやる。
ガチャ。
東「今大丈夫か?とりあえず茶ぁ持ってきたぜ。」
『ありがと。東も一緒に飲もうよ』
東「お、おう。別に構わねぇけど・・・」
少しの沈黙の後、東が暖かいお茶を持ってきてくれた。
何だかんだ優しい東に感謝の気持ちになる。
そんな優しい東を蚊帳の外にしておくのも気が引けたので一緒にいるのはどうか誘うと、いつもの店員用カウンターに体を預け、自分用に用意してあったであろう酒を飲み始める。
杉「東さんも聞いちゃって大丈夫な話なの?」
東「あ?内緒話か?」
『え?あぁ、東はもう知ってるから大丈夫。むしろ助けてくれた側だしね。
・・・私ね、両親と大切な人たちを殺されてるんだ。目の前で。』
お茶を一口飲み、コップから目を離さずに話す名前。名前から紡がれた言葉に杉浦は目を見開く。
東は若干ここに残ったことを後悔しつつ、妹分が寂しそうな目で話しているのを見つめていた。
名前は依然コップに目を向けたまま過去の話をはじめた。
『私は、東城会系末端の檜山組に属していた両親の元に産まれた。
父母や組の人がとても優しく育ててくれて。
私はあまり気にしてなかったんだけど、人よりも記憶力が良くて。一度見たものを一瞬で覚えたり・・・瞬間記憶能力とか呼ばれてた。
裏社会で生きてる人からすると、そういう特殊能力的な何かがある人は狙われやすいらしくてね。
末端の弱い組織にいた私は格好の的だったみたい。マフィアに事務所が襲われてさ。
私以外は皆殺された・・・。しかも私の抵抗心を折るために見せつけながらね・・・』
杉「ひどい・・・」
~~12年前、10歳の時
母「やっぱり名前は天才ね!何でも覚えちゃうわね」
名前は持ち前の記憶力の良さで、テストはいつも100点。組の大人たちの簡単な手伝いもしていた。もちろんそれは人を傷つけるのではなく、金額を覚えたり書類の内容を覚えたりするものが多かった。
父母も含め、組員はみんな名前を存分に褒め、可愛がっていた。
ただ、父は名前の能力が裏社会で波紋を呼ぶことを知っていた。そのため、名前に護身術を身に付けさせた。
3年後
事件当日、今日も平和で穏やかな1日になると思っていた。
夜、事務所の扉が勢い良く開く音がするまでは・・・
バァンッ!!
「!?」
「誰だ!?ぐあっ」
音がした方に顔を向ける組員たち。しかし奇襲した方がやはり優勢で、組員が臨戦態勢をとる前にやられてしまう。
母「名前っ!逃げてっ!」
母が大声で叫び後ろの扉から逃げるよう言われるが、足がすくんで動けず回り込んできた大男に捕まってしまう。
『んんっ!』
名前は大声を出さないよう口元を強く手で覆われ、身動きがとれないように腕を捕まれる。
そして耳元で
「てめえがとんでもねぇ記憶力を持ったガキだな?よく見とけ。てめえが持っちまった能力のせいで回りの奴が死んでいく様をなぁ・・・」
にやけ顔で話す男。
組員たちは必死に抵抗するが多勢に無勢、敵うはずもなくやられてしまう。父、母もまた・・・。
名前は目を閉じることもできないまま、凄惨な場面を見続けることしかできない。目からは大粒の涙が頬と男の手を流れ落ちる。
すぐにシン・・・と静まり返り、立っているのは襲ってきた組織の人間だけだった。
「てめえの目はこれから俺らだけのために使われるんだ。分かったな?抵抗したらてめえの回りにいる奴らが順番にやられていくだけだ。てめえはもう逃げられねぇんだよ!」
『・・・・』
下卑た笑いを浮かべる男の声を聞き、光を無くした名前の瞳からは止めどなく涙が溢れる。
引きずられるようにワゴンに乗せられ、アジトへ連れられていく。
ワゴンの中の話で、組を襲った組織はハルクというマフィアだと分かった。最近神室町で我が物顔で勢力を伸ばしているとのことだった。
ワゴンが止まり、アジトへ着くと狭い部屋に入れられた。