短編
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「ぼくが思うに、英雄とは何かを求める者のことなんだよ」
掃除が行き届き、物が少ないせいでどこか閑散とした雰囲気を醸し出している畳敷きの部屋。
執務室であるこの場所の主人は、珍妙な来訪者に怖じけることなくそう言った。
黒髪黒目で痩せ型の、どちらかというと地味な容貌の少年だが、その身に纏う着物はとても上質だ。
「求メル者、デスカ」
来訪者…この時代には不似合いないわゆるデフォルメされたロボットの少女…は顎に手を当て思案げに復唱した。
「生と死、愛や欲望。各々の思うものを渇望し、手を伸ばし続けた者だけが英雄たり得るんじゃないかな。
…そういうものがぼくにはない」
だから、きみの提案は遠慮しておくよ。少年は…彼原家当主
顔立ちは幼さを残しつつも、身の丈以上の年季と諦観をその目に秘めていた。
「それに…ぼくの首は既に先約がいてね。きみも気づいているでしょう?この屋敷」
「…アナタ以外ノ生体反応ガ、アリマセンネ」
「この国は
「予定」
「未来予知とかではないよ。ちょっと話し合って、ぼくの首と領地で勘弁してもらっただけ。決行日が明日なんだ」
ほんの少しの悲しみや寂しさを滲ませた声で、彼原は淡々と告げた。
先代がほうぼうに喧嘩を売っていたがゆえに、それくらいでないと火消しができなかったのだ。
「ぼくは英雄にはなれない。ただの敗北者だよ」
始終を聞いていた少女は、やれやれといやに人間臭い仕草で肩をすくめかぶりを振る。
「人間ハ無駄ナコトニコダワリマスネ…仕方アリマセン、アナタハ
「…ええと?」
もしや話を聞いていなかったのでは、そう思い困惑する彼原をよそに、少女は説明を始める。
「ゴ安心クダサイ、ドチラニセヨアナタノ死ハ覆リマセン。ワタシニ歴史改変ハ許可サレテイマセンノデ。
実際ニ働クノハ、アナタノ記憶ヤ人格ヲ
知らない単語が羅列されたが、彼原は雰囲気でなんとなく理解する。
細かいところはわからなくてもよく、ただ自分の予定が狂わないことだけを安堵した。
「それなら良かった。ぼくで役に立てる事があるなら、ぜひ」
「交渉成立デスネ。アナタノ
にこりと、目元しかないスクリーンの表情で笑いかけた少女は、彼原に右手を差し出す。
彼原がそれに応え、握手が交わされた。
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捏造設定
プレイヤー:さまざまな条件により選別された人物の人格をコピーした、voidollの管理補助AI。
ヒーロー:実在する過去の英雄たちの人格をコピーしたAI。異なる環境、状況でのデータ解析のため複数のサーバーが存在する。
イメソンシリーズ「敗北の少年」
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