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空獄SS詰め①

琥珀みたいだと、思った。

普段は光を受けて太陽みたいにきらきらと輝くのに、木陰で陰るとそれはがらりと深い色へと変わる。
「見惚れたか」
どこまでも自信過剰なこどもだ、自らへの好意を全く疑いもせずに平気でこのようなことを言ってみせるなんて。
しかし見惚れているのもまた事実で咄嗟に話題を逸らした。
「よく見ると金色じゃねえんだな」
「目の話かァ?確かにそうかもな、ガキなんかは怖いっつって泣くんだが…」
「色じゃなくてオメーの目つきが悪いからじゃねえの?」
なんだと、と怒ったふりをされた。
本気で怒った訳じゃない、戯れ合いのようなやりとりを面白がっているだけだ。
覆い被さって、空却はいつものように目を細めて笑う。

ああ、ほんとうに琥珀みたいだ。

自分を映す時だけ、甘い蜜のように深い色に変わるそれは狂おしいほどに美しかった。
流れ落ちる樹脂と共に取り込まれていった生き物もこんな気分だったのだろうか・
お前の目に取り込まれて、お前と共に生きて、死ぬ。
美しい琥珀に変わる虫を羨ましいなどと、全く俺もとことんおかしくなっちまったもんだな。
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