空獄SS詰め②
ここ数日、三十度を上回る日が続いている。
季節は盆に入りこの波羅夷空却も寺の仕事で檀家回りをする事が多くなった。
ジリジリと肌を焦がす陽射しと雨をたっぷりと吸ったアスファルトから放出される蒸気に溜め息が漏れる。
既に限界を迎え、懐に隠し持っていた布で袖をまとめて縛り何食わぬ顔で父親の後ろを歩いたが数秒もしないうちに見つかりみっともない格好で歩くなと大目玉を食らってしまった。
「で、そのたんこぶが出来たと?」
「たんこぶよりこっちのほうが痛ェんだよ…」
仕事を終えた空却は獄の自宅に転がり込み大いにくつろいでいた。
お互い約束していた訳ではないがなんとなく次の日が休みの日になった際は彼の家に泊まり込むのが習慣になった。荷物は携帯機器と財布のみ。
以前の泊まりの際に何回も泊まるんなら着替え置いていけよと提案され部屋着は下着等も全てここに置いていた。
獄は日焼けしたという空却の隣に席を移し腕を捲って見せてみろと言うと空却はラフな甚平の袖をサッと捲って見せる。
「随分焼けたな。白いとこと日焼けの境目、俺のジャケットみてえじゃねえか」
「変なもんに例えるなっつの」
俺のジャケットが変って言いてえのか!と騒いでいる獄をよそに空却は近くの棚を漁り始める。
「お、あったあった。ヒトヤこれ貸してくれ」
「それ俺の…」
「ああ?んだこれ清涼感も一ミリも入ってねえタイプか」
「お前のバカの一つ覚えみたいにスースーするもんばっか買わねえんだよ」
さりげなく悪口を言われたが気にせずのそのまま手のひらに液を何滴か落として反対側の手の甲に塗り込んでみると微かにムスクのような匂いがした。
獄の匂いと同じだった。
空却は少しの間黙りこんで獄のほうに右腕を差し出した。
「なにしてんだよ」
「お前が塗ってくれ」
「はあ?何で」
「何でもだよ」
空却の無茶に獄も訳がわからんと言い返し何度か口論を続けたが最後は獄が折れたようだった。
「腕貸せ」
「んー」
獄は自分の手を皿のようにし何滴か液を落として空却の右腕に伸ばし始めた。
「俺をこきつかって満足かよクソガキ」
「んー、まだ満足できねえな」
こっちも、と左腕も差し出せば露骨に表情を歪ませるので空却は心底面白いといった意地の悪い笑顔を浮かべていた。
「なあ拙僧もあんたにこれ塗りたい」
空却はソファーに腰かけていた獄の胸を押して背もたれに身体を縫い付けた。
「お前に腕擦られてたらそういう気分になっちまってよ」
拙僧もお前に同じことがしたいと、そう言って獄の手からボトルを奪い取り乱暴に首筋に液を垂らした。
「バカお前これ安くねえんだぞ!」
文句は言うが抵抗する気は無いようだった。
「こんなもんの心配するくらいなら自分の心配した方がいいぜヒトヤ」
後日、結局空却は化粧水の中身を全て使いきってしまい朝から父親より長い説教を聞く羽目となった。
季節は盆に入りこの波羅夷空却も寺の仕事で檀家回りをする事が多くなった。
ジリジリと肌を焦がす陽射しと雨をたっぷりと吸ったアスファルトから放出される蒸気に溜め息が漏れる。
既に限界を迎え、懐に隠し持っていた布で袖をまとめて縛り何食わぬ顔で父親の後ろを歩いたが数秒もしないうちに見つかりみっともない格好で歩くなと大目玉を食らってしまった。
「で、そのたんこぶが出来たと?」
「たんこぶよりこっちのほうが痛ェんだよ…」
仕事を終えた空却は獄の自宅に転がり込み大いにくつろいでいた。
お互い約束していた訳ではないがなんとなく次の日が休みの日になった際は彼の家に泊まり込むのが習慣になった。荷物は携帯機器と財布のみ。
以前の泊まりの際に何回も泊まるんなら着替え置いていけよと提案され部屋着は下着等も全てここに置いていた。
獄は日焼けしたという空却の隣に席を移し腕を捲って見せてみろと言うと空却はラフな甚平の袖をサッと捲って見せる。
「随分焼けたな。白いとこと日焼けの境目、俺のジャケットみてえじゃねえか」
「変なもんに例えるなっつの」
俺のジャケットが変って言いてえのか!と騒いでいる獄をよそに空却は近くの棚を漁り始める。
「お、あったあった。ヒトヤこれ貸してくれ」
「それ俺の…」
「ああ?んだこれ清涼感も一ミリも入ってねえタイプか」
「お前のバカの一つ覚えみたいにスースーするもんばっか買わねえんだよ」
さりげなく悪口を言われたが気にせずのそのまま手のひらに液を何滴か落として反対側の手の甲に塗り込んでみると微かにムスクのような匂いがした。
獄の匂いと同じだった。
空却は少しの間黙りこんで獄のほうに右腕を差し出した。
「なにしてんだよ」
「お前が塗ってくれ」
「はあ?何で」
「何でもだよ」
空却の無茶に獄も訳がわからんと言い返し何度か口論を続けたが最後は獄が折れたようだった。
「腕貸せ」
「んー」
獄は自分の手を皿のようにし何滴か液を落として空却の右腕に伸ばし始めた。
「俺をこきつかって満足かよクソガキ」
「んー、まだ満足できねえな」
こっちも、と左腕も差し出せば露骨に表情を歪ませるので空却は心底面白いといった意地の悪い笑顔を浮かべていた。
「なあ拙僧もあんたにこれ塗りたい」
空却はソファーに腰かけていた獄の胸を押して背もたれに身体を縫い付けた。
「お前に腕擦られてたらそういう気分になっちまってよ」
拙僧もお前に同じことがしたいと、そう言って獄の手からボトルを奪い取り乱暴に首筋に液を垂らした。
「バカお前これ安くねえんだぞ!」
文句は言うが抵抗する気は無いようだった。
「こんなもんの心配するくらいなら自分の心配した方がいいぜヒトヤ」
後日、結局空却は化粧水の中身を全て使いきってしまい朝から父親より長い説教を聞く羽目となった。
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