ここで教えてくれたこと、みんなが知ってくれるんだよ。
最初の物語
ますたーのプロフィールは?
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「オー!どこにいるの!」
散歩をしている途中で大事な魔導書 と離ればなれになってしまった。
ここは街の中心部から少し離れた住宅区。石畳の床と白いアパートが並んでいて機械感があまりない。何軒かポツポツと小さなお店は存在している。
「うっわ、どうしよう……」
「何かお困りですか?」
「ん?」
声がした方を向く。何か期待しているような黒い瞳の黒髪の青年(少年かもしれない)がにこにこしながらこちらを見ている。
あまり背が高いとは言えない彼はだぼだぼの黒いコートの右側だけ袖を通していて、シャツにグレーのベストを重ね着している。髪はボサボサに跳ねていて、左目だけ悪いのかモノクルを掛けている。
彼が出てきたらしい建物の看板には『ライアード探偵事務所』と書かれていた。
「何かお困りなんですよね?」
「え、あ、いや……」
「遠慮をする必要はまったくありませんよ!このシャン・ライアードにお任せください!」
口調は丁寧だが、随分と強引な人だ。あれ?シャンって名前、何処かで聞いたような。
「初回特典で今なら半額でなんでもやりますよ!浮気調査、失せ物探し、ペットの捜索、事件の調査。なんでもやっちゃいますよ!にょほほ♪」
「は、はぁ……」
「お願いします!どうか、どうか何でも依頼してください!」
「ええっ!」
泣きつかれて仕方なく頷くと、彼はパッと表情を明るくして頭上高くガッツポーズした。
「で、何を依頼してくださいますか?」
「価格は……」
そんなに高くもない値段を言われて安心する。
「実は魔導書 とはぐれてしまって」
「そうなんですね!大丈夫です!発見率120%を誇るこの僕が、確実に見つけてあなたの元に連れ帰りますからね!」
「100%越えてるし、かえって胡散臭いの何でだろー……」
「気のせいですよ!では!」
シャンは手をひらひらさせながら事務所に戻っていく。
「え?今から探してくれるんじゃないの!?」
「探しますよ!でもその前に僕の魔導書 を連れてこなくては」
「ああー、そういうことか」
「おーい!シャン!」
事務所とはまったく反対の方向から呼び掛ける声がする。
「え!いつの間に出掛けてたんです!?まさかサボり!?」
「はぁ!?何言ってんだ!事件探してこいって言ってたのお前だろうが!」
「き、記憶がないです……」
「お前寝てたんじゃねえの!?」
彼は見覚えのある魔導書 だった。
黒い毛の猫。尾の先にクリスタルのようなものがついていて、今思うと動物らしくはないと思える。
「ニオン!」
「あれ?お前この前の迷子か」
「迷子じゃないよ!バビロンに来たばかりでビックリしてただけ!」
「だっけか。あ、伝言見たか?」
「うん。助かったけど、どうやって連絡先知ったの?自分が魔導書 購入出来たかどうかも教えてなかったのに」
「ま、俺たち」
「僕たち」
ニオンが素早くシャンの足元に駆け寄り、後ろ足で立ち上がって腕を組む。主人の方はキリッとした表情のまま右手で顔を半分隠すと、少し上半身を捻った。
「探偵ですから!」
『ええー!なんかすごい格好つけてる!』
「で、お前が探してんのはあいつだろ?」
「え?」
よちよち歩きで気まずそうに、建物の陰からこちらに向かってくるのは明らかに自分の魔導書 だった。
「ますたー、まいごになっちゃ、だめだよ。ニオンといっしょに、さがしたよ」
「迷子になったのオーでしょ……」
安堵のため息が出る。その光景を見ていたひとりと一匹(という単位でいいのだろうか)が優しく微笑んでいる。
「あ、お支払いを……」
「いえ、今回は構いませんよ。ニオンのお人好しですぐ見つけられましたから」
「え、でもお金が欲しいからあんなに強く依頼するよう頼んできたんじゃ……」
彼は目を丸くして首を横に振る。
「いえ?僕はただ事件を解決して困っている人たちのお手伝いをしたいだけですよ?」
「あー、悪いな。こいつ人助けジャンキーなんだよ。お陰で財布がスッカラカンなんだけどな」
ニオンが鼻を鳴らす。首輪に紋章のようなものが描かれた飾りがぶら下がっていて、風に揺れている。
「あれ?それって……」
「お、これ初めて見るか?俺『印章 』付きの魔導書 なんだよ」
犯罪者予備軍として監視対象にされるという印章魔導書 。街中でこんなに普通に出会うなんて思いもしなかった。
「軽蔑しますか?」
正直なところ、彼らがどんな人たちなのか知らないから少し驚いたし、恐怖感が全く無いわけではない。でも、ニオンもシャンもお人好しなんだろうというのは触れあってみてすぐ分かった。
「詳しくないからよく分からないけど、シャンもニオンもいい人そうだと思う」
「やっぱ外国人だな。この街の連中なんか俺とシャンに向かって毎日のように出てけって言ってくるくらいなのによ」
「印章魔導書 を持っている人は差別に苦しんで放棄する人も多いんですよ。僕は絶対にニオンを手放したりしてあげませんけどね!」
「単に俺がいないと生活力が下がるからだろうが!」
本当に信頼しあっているというのが素人目でもよく分かる。とてもいい関係性を築いているみたいだ。
「引き留めてすみませんでした。オーさん見つかって良かったですね!にょほほ♪」
「うん。ありがとうございました」
オーを連れて元来た道に戻る。ひとりと一匹は嬉しそうにこちらを見ながら手を振っていた。
散歩をしている途中で大事な
ここは街の中心部から少し離れた住宅区。石畳の床と白いアパートが並んでいて機械感があまりない。何軒かポツポツと小さなお店は存在している。
「うっわ、どうしよう……」
「何かお困りですか?」
「ん?」
声がした方を向く。何か期待しているような黒い瞳の黒髪の青年(少年かもしれない)がにこにこしながらこちらを見ている。
あまり背が高いとは言えない彼はだぼだぼの黒いコートの右側だけ袖を通していて、シャツにグレーのベストを重ね着している。髪はボサボサに跳ねていて、左目だけ悪いのかモノクルを掛けている。
彼が出てきたらしい建物の看板には『ライアード探偵事務所』と書かれていた。
「何かお困りなんですよね?」
「え、あ、いや……」
「遠慮をする必要はまったくありませんよ!このシャン・ライアードにお任せください!」
口調は丁寧だが、随分と強引な人だ。あれ?シャンって名前、何処かで聞いたような。
「初回特典で今なら半額でなんでもやりますよ!浮気調査、失せ物探し、ペットの捜索、事件の調査。なんでもやっちゃいますよ!にょほほ♪」
「は、はぁ……」
「お願いします!どうか、どうか何でも依頼してください!」
「ええっ!」
泣きつかれて仕方なく頷くと、彼はパッと表情を明るくして頭上高くガッツポーズした。
「で、何を依頼してくださいますか?」
「価格は……」
そんなに高くもない値段を言われて安心する。
「実は
「そうなんですね!大丈夫です!発見率120%を誇るこの僕が、確実に見つけてあなたの元に連れ帰りますからね!」
「100%越えてるし、かえって胡散臭いの何でだろー……」
「気のせいですよ!では!」
シャンは手をひらひらさせながら事務所に戻っていく。
「え?今から探してくれるんじゃないの!?」
「探しますよ!でもその前に僕の
「ああー、そういうことか」
「おーい!シャン!」
事務所とはまったく反対の方向から呼び掛ける声がする。
「え!いつの間に出掛けてたんです!?まさかサボり!?」
「はぁ!?何言ってんだ!事件探してこいって言ってたのお前だろうが!」
「き、記憶がないです……」
「お前寝てたんじゃねえの!?」
彼は見覚えのある
黒い毛の猫。尾の先にクリスタルのようなものがついていて、今思うと動物らしくはないと思える。
「ニオン!」
「あれ?お前この前の迷子か」
「迷子じゃないよ!バビロンに来たばかりでビックリしてただけ!」
「だっけか。あ、伝言見たか?」
「うん。助かったけど、どうやって連絡先知ったの?自分が
「ま、俺たち」
「僕たち」
ニオンが素早くシャンの足元に駆け寄り、後ろ足で立ち上がって腕を組む。主人の方はキリッとした表情のまま右手で顔を半分隠すと、少し上半身を捻った。
「探偵ですから!」
『ええー!なんかすごい格好つけてる!』
「で、お前が探してんのはあいつだろ?」
「え?」
よちよち歩きで気まずそうに、建物の陰からこちらに向かってくるのは明らかに自分の
「ますたー、まいごになっちゃ、だめだよ。ニオンといっしょに、さがしたよ」
「迷子になったのオーでしょ……」
安堵のため息が出る。その光景を見ていたひとりと一匹(という単位でいいのだろうか)が優しく微笑んでいる。
「あ、お支払いを……」
「いえ、今回は構いませんよ。ニオンのお人好しですぐ見つけられましたから」
「え、でもお金が欲しいからあんなに強く依頼するよう頼んできたんじゃ……」
彼は目を丸くして首を横に振る。
「いえ?僕はただ事件を解決して困っている人たちのお手伝いをしたいだけですよ?」
「あー、悪いな。こいつ人助けジャンキーなんだよ。お陰で財布がスッカラカンなんだけどな」
ニオンが鼻を鳴らす。首輪に紋章のようなものが描かれた飾りがぶら下がっていて、風に揺れている。
「あれ?それって……」
「お、これ初めて見るか?俺『
犯罪者予備軍として監視対象にされるという
「軽蔑しますか?」
正直なところ、彼らがどんな人たちなのか知らないから少し驚いたし、恐怖感が全く無いわけではない。でも、ニオンもシャンもお人好しなんだろうというのは触れあってみてすぐ分かった。
「詳しくないからよく分からないけど、シャンもニオンもいい人そうだと思う」
「やっぱ外国人だな。この街の連中なんか俺とシャンに向かって毎日のように出てけって言ってくるくらいなのによ」
「
「単に俺がいないと生活力が下がるからだろうが!」
本当に信頼しあっているというのが素人目でもよく分かる。とてもいい関係性を築いているみたいだ。
「引き留めてすみませんでした。オーさん見つかって良かったですね!にょほほ♪」
「うん。ありがとうございました」
オーを連れて元来た道に戻る。ひとりと一匹は嬉しそうにこちらを見ながら手を振っていた。