隣の席の設楽くん
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…
ホクホクと戦利品を片手に羽ばたき駅前を歩いていると、「何やってるんだ?」と聞き慣れた声が聞こえ後ろを振り向くと銀髪にくるくる設楽くん。
「あ、設楽くん。こんにちは。」
「あぁ。」
設楽くんは本屋さんの袋を持っていた。きっと駅前にある大きな本屋さんに行ってきたのかなと勝手に予想をしてみた。
いつもの私なら声に出していたところだが、今はそんな暇はない。
「じゃあ私は急ぐのでさよなら。」
“こんにちは”から“さよなら”まで1分もなかったと思うが気にせずに設楽くんへ手を振り家に帰るべく横を通ろうとするが、私を阻むように設楽くんの大きな手で手首が掴まれた。
「なに?今ちょっと忙しいの。」
「なんだよ、せっかく会ったのにそんな冷たくすることないだろ。」
確かにちょっと急いでいるとはいえ、もう少し優しくする心は持たねば。
仕方がないので近くの空いてるベンチに設楽くんの腕を引きながら連れて行き、ベンチへ腰掛ける私達。
「忙しいって今からどこに行くんだ?」
「家に帰ってご飯食べるから忙しいの。」
私の手にもつビニール袋には限定カップラーメンが入っている。このカップラーメンが食べたくてわざわざ休日に外に出て何件もハロゲンを周ったのだ。
まさか、家の近くにはなくて駅前近くのハロゲンには置いてあるなんて誰が思うのだろうか。
「俺も昼食はまだだ、それなら一緒に食べよう。」と提案をくれる設楽くんに少し驚きつつ、「ごめん、設楽くん。今日はカップラーメンを食べたいからまた学校で食べようね。」とお断りをするも、設楽くんの目は丸くなっていた。
「なに?カップラーメン…?だと…?」
そういえば前に学食に行ったときに食券機の使い方も知らないくらいだった。これが本気だったらカップラーメンも知らないのも一理ある。
コンビニ袋からカップラーメンを取り出し、設楽くんへと差し出した。
「3分でおいしいラーメンができるんだよ。」
「お湯を入れて3分…?なんだって?」
興味津々の設楽くんは「俺も食べてみよう、行くぞ。」と離してくれず、先程から掴まれていた手首をそのまま引っ張られ家とは違う方向へ足が進む。
内心、大切なカップラーメンは1人で食べたかったが、設楽くんがカップラーメンを初めて食べる瞬間を間近で見ることができるほうが面白いし大切だ。
「ん?どこに行くの?」
「俺の家だ。いつかお前を連れて来ようかと思ってたからいい機会だったな。」
しばらく談笑しながら、高級住宅街へ入り暫く歩き、立ち止まる設楽くん。
「ここだ。うるさくするなよ。」
「え?なにここ?」
「俺の家だが?」
カップラーメンを手に入れたことよりも驚きの大きなお屋敷が目の前にあった。家と言うよりも邸というのが正しいはずだ。
「いや、あの、なんか緊張するから私の家に来なよ?」
「なに怖気づいてんだ、あほか。…お前の家はまた今度にお邪魔しよう。」
設楽くんの後に続き、大きな玄関へ足を入れ、お手伝いさん?と言うのか使用人さん?と言うのかわからないが、お掃除をしていたり、別世界だった。
そりゃこんな世界に住んでたら入学式の日にあんな態度取るわな。と一人納得して笑ってしまう。
「何笑ってんだ?」
「入学式の日を思い出しちゃって。」
「やめろ、忘れろ。ほらこっちだ。」とシックな扉を開け通された設楽くんの部屋。
「おおぅふ。」とキョロキョロする私に、「ほらこっちに座れ。」と椅子を引いて座らせてくれる設楽くん。
こんな素敵でシックなお部屋で紳士的対応をされると、ちょっとだけ、ほんの少しだけときめいた気がした。
「何もないだろ。」
「おしゃれなモデルルームみたい。私の部屋なんて漫画だらけだよ?」
「俺の部屋においてないだけで映画のDVDくらいはもってるぞ?」
「なんだ、設楽くんも人間だね。」
「そういうお前は宇宙人じゃないだろうな?」
唐突な宇宙人発言にちょっと笑いつつ「さぁ?」と返し、カップラーメンを袋から出してテーブルへと置いた。
「本当に…、本当にお湯だけでできるんだな?」と再度確認するかのように聞いてきたのでまた笑ってしまった。この反応を見れただけで198円のカップラーメンを食べるよりいい1日だ。
「私を信じなさい!」
「わかった。お湯、持ってくるから少し待ってろ。なにか他に欲しいものとかないか?」
目を輝かす設楽くんに負けて、我慢していた単語が口に出た。
「じゃあ白米!」
「炒飯じゃなくていいのか?」
「ふふふ、カップラーメン初心者の設楽くんは黙って白米とお湯を持ってきたらいいのです。」
「わかった、持って来よう。コシヒカリでいいか?」
「えっ!コシヒカリ!?やったー!」
早速お湯とおひつに入っている白米を持ってきてくれて、うきうきとお湯を入れて3分、いつもは長く感じる3分は隣にいる設楽くんとおしゃべりをしていてあっという間にたった。
「よし、開けるぞ。」
「ふふ、どうぞ」
蒸気と共に笑顔になる設楽くん。そんな顔を見たら学食のときのように全部あげたくなる。まぁ今回のカップラーメンは少しだけは食べたいので、取皿用の小皿に少しラーメンとスープを取り分けて、カップの方のラーメンを設楽くんへ譲った。
「お前、いいのか?俺がこっちを食べて。」
「せっかくの初カップラーメン、カップのままいっちゃえ!」
学食の時も思ったが、高級な老舗の名店の蕎麦を啜るかの如く、上品に198円のカップラーメンをすする設楽くんは芸術そのものだと感じる。
「お湯を入れて3分でこのクオリティだなんて、こんなものが溢れたらシェフという仕事がなくなってしまうかもな…。」
お母さん…いや、お母様はやはり本当にシェフなのかもしれない。お母様のお仕事の心配をするなんてセイちゃんは優しいなぁ。と思いつつ、正直インスタントまずいわ!までは言わなくても微妙な反応が来ると思っていた。
美味しいものをたくさん食べてきたはずなのに同じ視線で語ってくれる設楽くんはやっぱいいヤツだなって思う。
「ふふふ、ラーメンを啜るだけじゃなくて、一度白米の上にダンクさせてーの、啜ってからダンク白米を食べるってのもいんだよなぁ〜。」
「なっ、そんな食べ方があるのか!?」
見本を見せるや、まるでピアノを弾くかの如くに上品に白米の上にラーメンを寝かせそして啜る設楽くんは、そしてすぐに上品にスープでテカテカになったまるでダイアモンドを箸でつまむようにお米をとりパクリと食べた。
「ほう、程よくスープがつくことに米の旨さが増した。一石二鳥がこれほど合う言葉もない。」
設楽くんはラーメンもご飯も上品に食べ、あっという間にカップの中は空になっている。
「ふふふ、そして最後に残ったスープにご飯をどーーんといれちゃえば一石三鳥!」
「一石三鳥…?だと?」
とっくにラーメンを食べ終えていた私は、おひつに入っていたご飯をスープの入った器へ入れてみせた。
設楽くんもご飯をカップへ丁寧にいれ、早速食べた。
「うん、これもうまいな。」
「でしょでしょ!では私も…」
「あ…おい、ちょっと貸せ。」
食べようとしていたのに、私の器をサッと取り上げると自分のカップも持って「大人しく待ってろよ。」と言い残し部屋を出ていってしまった。
んーーーいいところで持っていくなんてひどい!!うおーーーー
待ちきれない私は、椅子からふかふかのソファに移動してジタバタと足を動かしていた。
「なにやってるんだ?お前は馬鹿か?」
「あっ、設楽くん。ジタバタしてて戻ったの気が付かなかったよ。」
「ほら、早くこっちに来いよ。」
ダッシュで元の席へ戻ると、器には雑炊ではなくお雑炊というか、ラーメンスープでつくったリゾットというかなんというか素晴らしい一品料理が盛り付けられていた。
「はい、最高のやつ来ましたとさ。」
もう食べずにわかるほどの美味しい見た目だ。
「ネギと溶き卵を足してもう一度火にかけてもらったんだどうだ?」
「セイちゃん大好き。結婚しよ。」
「なっ…!」
「ほらほらセイちゃん食べよう!いっただーきまーす!」
「うるさい、セイちゃん言うな!」
ほかほかのラーメンスープリゾットはそりゃ美味しくて今日一番美味しかった。
「カップラーメンより、こっちのほうが美味しい。」
「そうか…?俺は…お前とのカップラーメンの方が…あ…、それなら夕食はうちで食ってけよ。シェフも喜ぶ。」
「設楽くんのお母様のご飯!?楽しみ!」
「何言ってるんだ?シェフだ。」
その発言でやっと気がついた。シェフはお母様ではなく、シェフはシェフだと。
メイドさんやお手伝いさんがいるレベルの設楽くん邸だ。そりゃシェフの1人や2人いてもおかしくはない。
「えっと、本当にいいの?」
「あぁ、今日の礼だ、気にするな。」
「やった!シェフに日頃のお礼を言わないと!」
「仕方がない。後で会わせてやるよ。」
楽しくカップラーメンを食べ終えた午後13時過ぎ。ごろごろソファに座り、設楽くんのピアノを聞いてたら睡魔に負けて眠ってしまった。
ゆさゆさと揺すられ目を覚ますと、テーブルには優雅なティーセットとお菓子が並べられていた。時計は15時。そう。3時のおやつタイムだ。
優雅に紅茶と焼き菓子を食べてそこから夕食の時間まで設楽くんのおすすめのB級映画をプロジェクターで鑑賞した。感想を言い合ったり、設楽くんにピアノを教えてもらったり楽しい時間だった。
そして夕食は素晴らしいほど美味しかったし、シェフの方にあえて嬉しかった。でも、なぜか設楽くんと一緒に色々したカップラーメンが一番美味しかったなと思う。
夕食を食べ終え、「散歩がてら外まで送る」と言う設楽くん。今日一日で設楽くんの色々な一面が見れてよかった。
お喋りをしながら歩いてるとあっという間に家の前についてしまい、カップラーメンにお湯を入れて待つ3分よりももっと短く感じたと思う。
「今日は有意義な時間だった、ありがとうな。」
「こちらこそ、お礼に美味しい夜ご飯までごちそうになりまして、ありがとうございました。じゃ…」
「なぁ、次の日曜日、空いてるか?」
「…?空いてるよ?どっか遊びに行く?」
「また俺に色々教えてくれ。礼ははずむ」
色々ってなんだろうと聞くのは野暮だと思ったので、聞くのはやめた。
「いいけど、礼は弾まないでよ。」
「じゃあいつでも夕食食いに来いよ。」
「ふふ、わかった。じゃあカップラーメン作る時、また誘うね。」
「ふっ楽しみにしてる。じゃあな。」
お家へ戻る設楽くんの背中はスキップをしているようになんだか楽しそうで、私もスキップしながら部屋へ戻った。
…
ホクホクと戦利品を片手に羽ばたき駅前を歩いていると、「何やってるんだ?」と聞き慣れた声が聞こえ後ろを振り向くと銀髪にくるくる設楽くん。
「あ、設楽くん。こんにちは。」
「あぁ。」
設楽くんは本屋さんの袋を持っていた。きっと駅前にある大きな本屋さんに行ってきたのかなと勝手に予想をしてみた。
いつもの私なら声に出していたところだが、今はそんな暇はない。
「じゃあ私は急ぐのでさよなら。」
“こんにちは”から“さよなら”まで1分もなかったと思うが気にせずに設楽くんへ手を振り家に帰るべく横を通ろうとするが、私を阻むように設楽くんの大きな手で手首が掴まれた。
「なに?今ちょっと忙しいの。」
「なんだよ、せっかく会ったのにそんな冷たくすることないだろ。」
確かにちょっと急いでいるとはいえ、もう少し優しくする心は持たねば。
仕方がないので近くの空いてるベンチに設楽くんの腕を引きながら連れて行き、ベンチへ腰掛ける私達。
「忙しいって今からどこに行くんだ?」
「家に帰ってご飯食べるから忙しいの。」
私の手にもつビニール袋には限定カップラーメンが入っている。このカップラーメンが食べたくてわざわざ休日に外に出て何件もハロゲンを周ったのだ。
まさか、家の近くにはなくて駅前近くのハロゲンには置いてあるなんて誰が思うのだろうか。
「俺も昼食はまだだ、それなら一緒に食べよう。」と提案をくれる設楽くんに少し驚きつつ、「ごめん、設楽くん。今日はカップラーメンを食べたいからまた学校で食べようね。」とお断りをするも、設楽くんの目は丸くなっていた。
「なに?カップラーメン…?だと…?」
そういえば前に学食に行ったときに食券機の使い方も知らないくらいだった。これが本気だったらカップラーメンも知らないのも一理ある。
コンビニ袋からカップラーメンを取り出し、設楽くんへと差し出した。
「3分でおいしいラーメンができるんだよ。」
「お湯を入れて3分…?なんだって?」
興味津々の設楽くんは「俺も食べてみよう、行くぞ。」と離してくれず、先程から掴まれていた手首をそのまま引っ張られ家とは違う方向へ足が進む。
内心、大切なカップラーメンは1人で食べたかったが、設楽くんがカップラーメンを初めて食べる瞬間を間近で見ることができるほうが面白いし大切だ。
「ん?どこに行くの?」
「俺の家だ。いつかお前を連れて来ようかと思ってたからいい機会だったな。」
しばらく談笑しながら、高級住宅街へ入り暫く歩き、立ち止まる設楽くん。
「ここだ。うるさくするなよ。」
「え?なにここ?」
「俺の家だが?」
カップラーメンを手に入れたことよりも驚きの大きなお屋敷が目の前にあった。家と言うよりも邸というのが正しいはずだ。
「いや、あの、なんか緊張するから私の家に来なよ?」
「なに怖気づいてんだ、あほか。…お前の家はまた今度にお邪魔しよう。」
設楽くんの後に続き、大きな玄関へ足を入れ、お手伝いさん?と言うのか使用人さん?と言うのかわからないが、お掃除をしていたり、別世界だった。
そりゃこんな世界に住んでたら入学式の日にあんな態度取るわな。と一人納得して笑ってしまう。
「何笑ってんだ?」
「入学式の日を思い出しちゃって。」
「やめろ、忘れろ。ほらこっちだ。」とシックな扉を開け通された設楽くんの部屋。
「おおぅふ。」とキョロキョロする私に、「ほらこっちに座れ。」と椅子を引いて座らせてくれる設楽くん。
こんな素敵でシックなお部屋で紳士的対応をされると、ちょっとだけ、ほんの少しだけときめいた気がした。
「何もないだろ。」
「おしゃれなモデルルームみたい。私の部屋なんて漫画だらけだよ?」
「俺の部屋においてないだけで映画のDVDくらいはもってるぞ?」
「なんだ、設楽くんも人間だね。」
「そういうお前は宇宙人じゃないだろうな?」
唐突な宇宙人発言にちょっと笑いつつ「さぁ?」と返し、カップラーメンを袋から出してテーブルへと置いた。
「本当に…、本当にお湯だけでできるんだな?」と再度確認するかのように聞いてきたのでまた笑ってしまった。この反応を見れただけで198円のカップラーメンを食べるよりいい1日だ。
「私を信じなさい!」
「わかった。お湯、持ってくるから少し待ってろ。なにか他に欲しいものとかないか?」
目を輝かす設楽くんに負けて、我慢していた単語が口に出た。
「じゃあ白米!」
「炒飯じゃなくていいのか?」
「ふふふ、カップラーメン初心者の設楽くんは黙って白米とお湯を持ってきたらいいのです。」
「わかった、持って来よう。コシヒカリでいいか?」
「えっ!コシヒカリ!?やったー!」
早速お湯とおひつに入っている白米を持ってきてくれて、うきうきとお湯を入れて3分、いつもは長く感じる3分は隣にいる設楽くんとおしゃべりをしていてあっという間にたった。
「よし、開けるぞ。」
「ふふ、どうぞ」
蒸気と共に笑顔になる設楽くん。そんな顔を見たら学食のときのように全部あげたくなる。まぁ今回のカップラーメンは少しだけは食べたいので、取皿用の小皿に少しラーメンとスープを取り分けて、カップの方のラーメンを設楽くんへ譲った。
「お前、いいのか?俺がこっちを食べて。」
「せっかくの初カップラーメン、カップのままいっちゃえ!」
学食の時も思ったが、高級な老舗の名店の蕎麦を啜るかの如く、上品に198円のカップラーメンをすする設楽くんは芸術そのものだと感じる。
「お湯を入れて3分でこのクオリティだなんて、こんなものが溢れたらシェフという仕事がなくなってしまうかもな…。」
お母さん…いや、お母様はやはり本当にシェフなのかもしれない。お母様のお仕事の心配をするなんてセイちゃんは優しいなぁ。と思いつつ、正直インスタントまずいわ!までは言わなくても微妙な反応が来ると思っていた。
美味しいものをたくさん食べてきたはずなのに同じ視線で語ってくれる設楽くんはやっぱいいヤツだなって思う。
「ふふふ、ラーメンを啜るだけじゃなくて、一度白米の上にダンクさせてーの、啜ってからダンク白米を食べるってのもいんだよなぁ〜。」
「なっ、そんな食べ方があるのか!?」
見本を見せるや、まるでピアノを弾くかの如くに上品に白米の上にラーメンを寝かせそして啜る設楽くんは、そしてすぐに上品にスープでテカテカになったまるでダイアモンドを箸でつまむようにお米をとりパクリと食べた。
「ほう、程よくスープがつくことに米の旨さが増した。一石二鳥がこれほど合う言葉もない。」
設楽くんはラーメンもご飯も上品に食べ、あっという間にカップの中は空になっている。
「ふふふ、そして最後に残ったスープにご飯をどーーんといれちゃえば一石三鳥!」
「一石三鳥…?だと?」
とっくにラーメンを食べ終えていた私は、おひつに入っていたご飯をスープの入った器へ入れてみせた。
設楽くんもご飯をカップへ丁寧にいれ、早速食べた。
「うん、これもうまいな。」
「でしょでしょ!では私も…」
「あ…おい、ちょっと貸せ。」
食べようとしていたのに、私の器をサッと取り上げると自分のカップも持って「大人しく待ってろよ。」と言い残し部屋を出ていってしまった。
んーーーいいところで持っていくなんてひどい!!うおーーーー
待ちきれない私は、椅子からふかふかのソファに移動してジタバタと足を動かしていた。
「なにやってるんだ?お前は馬鹿か?」
「あっ、設楽くん。ジタバタしてて戻ったの気が付かなかったよ。」
「ほら、早くこっちに来いよ。」
ダッシュで元の席へ戻ると、器には雑炊ではなくお雑炊というか、ラーメンスープでつくったリゾットというかなんというか素晴らしい一品料理が盛り付けられていた。
「はい、最高のやつ来ましたとさ。」
もう食べずにわかるほどの美味しい見た目だ。
「ネギと溶き卵を足してもう一度火にかけてもらったんだどうだ?」
「セイちゃん大好き。結婚しよ。」
「なっ…!」
「ほらほらセイちゃん食べよう!いっただーきまーす!」
「うるさい、セイちゃん言うな!」
ほかほかのラーメンスープリゾットはそりゃ美味しくて今日一番美味しかった。
「カップラーメンより、こっちのほうが美味しい。」
「そうか…?俺は…お前とのカップラーメンの方が…あ…、それなら夕食はうちで食ってけよ。シェフも喜ぶ。」
「設楽くんのお母様のご飯!?楽しみ!」
「何言ってるんだ?シェフだ。」
その発言でやっと気がついた。シェフはお母様ではなく、シェフはシェフだと。
メイドさんやお手伝いさんがいるレベルの設楽くん邸だ。そりゃシェフの1人や2人いてもおかしくはない。
「えっと、本当にいいの?」
「あぁ、今日の礼だ、気にするな。」
「やった!シェフに日頃のお礼を言わないと!」
「仕方がない。後で会わせてやるよ。」
楽しくカップラーメンを食べ終えた午後13時過ぎ。ごろごろソファに座り、設楽くんのピアノを聞いてたら睡魔に負けて眠ってしまった。
ゆさゆさと揺すられ目を覚ますと、テーブルには優雅なティーセットとお菓子が並べられていた。時計は15時。そう。3時のおやつタイムだ。
優雅に紅茶と焼き菓子を食べてそこから夕食の時間まで設楽くんのおすすめのB級映画をプロジェクターで鑑賞した。感想を言い合ったり、設楽くんにピアノを教えてもらったり楽しい時間だった。
そして夕食は素晴らしいほど美味しかったし、シェフの方にあえて嬉しかった。でも、なぜか設楽くんと一緒に色々したカップラーメンが一番美味しかったなと思う。
夕食を食べ終え、「散歩がてら外まで送る」と言う設楽くん。今日一日で設楽くんの色々な一面が見れてよかった。
お喋りをしながら歩いてるとあっという間に家の前についてしまい、カップラーメンにお湯を入れて待つ3分よりももっと短く感じたと思う。
「今日は有意義な時間だった、ありがとうな。」
「こちらこそ、お礼に美味しい夜ご飯までごちそうになりまして、ありがとうございました。じゃ…」
「なぁ、次の日曜日、空いてるか?」
「…?空いてるよ?どっか遊びに行く?」
「また俺に色々教えてくれ。礼ははずむ」
色々ってなんだろうと聞くのは野暮だと思ったので、聞くのはやめた。
「いいけど、礼は弾まないでよ。」
「じゃあいつでも夕食食いに来いよ。」
「ふふ、わかった。じゃあカップラーメン作る時、また誘うね。」
「ふっ楽しみにしてる。じゃあな。」
お家へ戻る設楽くんの背中はスキップをしているようになんだか楽しそうで、私もスキップしながら部屋へ戻った。
…