短編
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…
目で追ってしまう人がいる。
挨拶できたら嬉しいし、おしゃべりできたらもっと嬉しい。青春、アオハル!…って何を思ってるんだ私は。
少女漫画的な脳みそになりかけてることに気がつき、やばいって思いながら昇降口をでると、銀髪クルクルキュートな設楽先輩がいた。
「あっ設楽先輩、一緒に帰りませんか?」
「俺もそのつもりでお前を待っていたんだ。よかったら喫茶店にでも寄らないか?」
「モチのロンでっせ!いきましょ!」
設楽先輩とは音楽室で出会ってからなにかと関わるようになり今ではこうして一緒に帰ったり、寄り道をしたり、あの時はこうなるとは思わなかったなぁ〜。
初めてあった時の、「お前誰」っての酷いよね。ぷぷ
「何笑ってんだ。」
「いえいえ、設楽先輩と仲良くなれて嬉しいなって。」
喫茶店へ入り、いつも頼むコーヒーを設楽先輩がスマートに注文してくれた。こういうところ良いよね。設楽先輩って。
運ばれてきた温かいコーヒーに口付けてると設楽先輩が私の指を見ていた。
気になったので熱くてあまり飲めていないコーヒーをテーブルにおくことに。
「どうかしたんですか?」
設楽先輩はテーブルに置かれてる私の手を取り小指を触れ「ここに切り傷があるぞ」と教えてくれた。
「あ、本当だ。なんか痛むなぁって思ってたんですよね。」
「相変わらずボケてるな。」
設楽先輩は私の手に触れたまま続けた。
「……お前の手、小さいな。」
「…?せっかくですし比べっこしましょう。」
私の手のひらと設楽先輩の手のひらがぴったりくっついた。設楽先輩の手の平からひんやりした体温が伝わる。
「設楽先輩の手は芸術品みたいで綺麗ですね。指が長くて羨ましいです。あ、コーヒー冷めちゃいますよ。」
喫茶店でおしゃべりをしていつものようにお家まで送ってくれた。
設楽先輩って優しいよね。
「なぁ。」
いつもは家の前に付いたらじゃあさよならって帰っていくのにどうしたんだろう?
「どうかしましたか?」
「……俺のこと、好きか?」
突然聞かれた設楽先輩から出るとは思わない単語に少し笑ってしまった。
「ふっふっふっ好きではない、大好き!」
「なっ」
「設楽先輩は?」
「俺だって…その…お前のことが好きだ。」
「何照れてるんですか?聞き取れなかったですよ。」
「あぁもう!うるさい。帰る。」と言い残して設楽先輩は帰っていった。
…
「日曜日空いてるか?はばたき城に行こうぜ。」
「う、うん!行きたい!!」
今日は不二山くんと沢山おしゃべりできて嬉しかったなぁ。名前も沢山読んでもらえたし、帰りにあそびに誘われた!ニヤニヤを隠すように昇降口へ向かった。
「おい、何ニヤニヤしてるんだ?」
昇降口付近で設楽先輩に話しかけられた。
隠していたはずなのにニヤニヤはバレていた。
「へへっ、設楽先輩奇遇ですね。もしかして私のこと待ってたり??」
「ああ待ってた。ほら帰るぞ。」
そして流れるように喫茶店へ。
設楽先輩はまた私の手を触ってきた。
ひんやり冷たい設楽先輩の手は熱のとき役立ちそう。
「お前、日曜日暇か?」
おっと、ここでまさかのお誘い!だけれど私にはもう先約があるのだ。
「ごめんなさい。用事があって…。」
設楽先輩の約束を断ったことがなかったので少しだけ申し訳なくなった。
そんな私の回答と顔を見て設楽先輩は目を丸くしていた。
「……なんだよ、せっかく誘ってやったのに。ってなにニヤニヤしてるんだ。」
でも、不二山くんとの約束を思い出して私の表情はニヤニヤしてしまう。
「へへへ。この話は次回聞いてくださいね!」
「……ふぅん、まあいい。また誘う。」
「じゃあ来週よろしくお願いしますね!」
「来週か、仕方ない遊んでやるよ。」
設楽先輩は満足げな顔でコーヒーに口をつけた。彼の手は私の手を離さずに包み込んでいた。
…
不二山くんと日曜日一緒にお出かけして幸せなひとときを過ごしたからこその憂鬱な月曜日が来た。不二山くんと過ごしたあの日曜日に一生いたかった。
あれ、でも冷静に考えると学校だと毎日不二山くんに会えるじゃん!やったね!っと気持ち切り替えてなんやかんやで放課後。
「一緒に帰らねぇか?」
「あっ!不二山くん!部活は大丈夫なの??」
「毎日部活ばっかしてねーよ。せっかくだし寄り道して帰ろうぜ。」
不二山くんに一緒に帰ることを提案されたのだ!
私は不二山くんと一緒に帰れた月曜日が大好きになった。
二人で昇降口に向かう途中、いつもの場所に設楽先輩がいた。もしかして私を待ってたり…?するよね?
私が話しかける前に設楽先輩に「遅い、ほら行くぞ。」と声をかけられたけれど、私の隣に不二山くんがいるのを見ると久々に眉間に皺を寄せて睨みつけてきた。
「設楽先輩、今日は約束があるのでごめんなさい!」
「ふぅん、日曜も駄目で今日も駄目なのか。」
珍しくしつこい設楽先輩。これはへそを曲げている???
困惑した表情で設楽先輩を見つめていると不二山くんが口を開いた。
「もしかして日曜日に約束があったのに俺を優先してくれたんか?」
「え、あっ違う。不二山くんのお誘いが先だったから気にしないで。」
「そっか、それなら良かった。」
この発言が後に地雷になるなんて誰が思うのでしょうか。
不二山くんが「今日は俺一人で帰るから、金曜日一緒に帰ろうぜ」と言ってくれたけれど目の前にいた設楽先輩は眉間に皺を寄せたまま無言で行ってしまった。
「あれ、設楽先輩…行っちゃった。」
「追いかけなくても大丈夫か?」
「ううん、不二山くんと一緒に帰りたかったからいいの。それに明日謝るから大丈夫だよ!」
「俺もお前と一緒に帰りたかったから、ありがとうな。」
設楽先輩と帰る時のように自然に二人で喫茶店に入り不二山くんの事を色々と聞いたり話したり。
心が満たされるような、なんだろう。私は不二山くんのことが好きなんだって心から思った。
「お前って誰かと付き合ってたりすんのか?」
不二山くんが家まで送ってくれたけど、唐突に聞かれた発言にドキドキがすごい。
「ぜっ全然そういう人いないよ」
「そうか、それなら良かった。……なぁ……俺…お前の事が…」
事が??もしかして告白?
「やっぱ今はまだやめとく、また明日な。」
不二山くんは照れ臭そうな表情をすると去ってしまった。不二山くんの背中が見えなくなっても私の胸のドキドキは止まらなかった。
…
終礼が終わり掃除当番を終えたので廊下に出ると不二山くんとすれ違った。不二山くんは私に近づき手を振ってくれたので振り返す。
「気をつけて帰れよ?」
「う、うん!不二山くんも部活頑張ってね!」
こうやって話すことが当たり前になって嬉しいけど、昨日の出来事を思い出してしまって不二山くんを見つめるのが恥ずかしい。彼の手に目線を移すと私の視線に気がついたのか不二山くんは私の手を取ってきた。
「ははっお前の手小さいな。」
不二山くんは笑いながら私の手に重ねてきて私の手の平は不二山くんの温かい体温が伝わる。
骨ばってゴツゴツした手には柔道をしてできたであろう豆がたくさんできており硬たくて男の人の手だなって。あぁどうしよう。ドキドキが止まらない。
「人の手ってあまり見ないけどお前の手綺麗だな。俺、好きだ。」
突如言われる発言に私の顔は絶対に真っ赤になってる。
「あ…私も不二山くんの手、好き。不二山くんのことも好」きと全て言い終えたのかは設楽先輩の「何やってるんだ?」の声が被せられてわからなかった。
「あ、設楽せ…」
「帰るぞ。」と言う設楽先輩に不二山くんと重なる私の手を取られてあっという間に離されてしまった。
不二山くんは離れたあとも手を振ってくれていたけど、設楽先輩がなんだか怖くて振り返せなかった。
靴を履き替えた後も設楽先輩が私の手を引き歩みすすめる。
「設楽先輩…?あのどこに行くんですか?」
私の手は設楽先輩に強く握られていてどうすればいいのかわからない。何度か聞いても無言で歩みすすめるので黙ってついていくしかなかった。
連れて行かれた場所は何度か来たこともある設楽先輩の家だった。
靴を脱いだ後も引っ張られながら設楽先輩の部屋へと連れて行かれた。
いつも設楽先輩はソファのあるテーブルに美味しいおやつと紅茶を用意してくれるけれど、そのテーブルを無視して一度も入れてくれなかった寝室の扉を開け私を中へ押し込んだ。
「設楽…先輩?」
やっと手首を離してくれたけれど私の前には設楽先輩がいる状態で恐怖を感じて寝室を観察してるほど心には余裕がなかった。
「あいつと日曜日に出かけたんだよな?」
一歩一歩近づいてくる設楽先輩に無意識的に私は後ろに下がってしまう。
「はい。そのことは次に喫茶店に行った時に…」
設楽先輩は私の声に被せるように続けた。
「昨日だってあいつと一緒に帰ったよな?」
「や。約束してましたし、それに、私…不二山くんのことが好きなんです。」
喫茶店に行ったときに設楽先輩に聞いてもらおうと思ってた不二山くんに対する思いを設楽先輩に投げた。
優しい設楽先輩は「仕方がないから相談に乗ってやるよ」って言ってくれると思ってたから。
でも設楽先輩は何を言ってるんだ?って言う時の表情をしていた。
「お前、俺のこと好きって言ってたじゃないか。」
いつの日か帰りに聞かれた単語だ。
私はもちろん友達だの意味で大好きと答えたのに。
「え、あのそれは…」という私にかぶせて設楽先輩が続ける。
「あいつがお前を誑かしたんだろ?答えろよ。」
「誑かすも何も…」
私の後ろはもう設楽先輩のベッドがあってこのまま下がることはできないのにそのまま近づいてきて設楽先輩にベットに押し倒された。
設楽先輩は押し倒されてどうしたら良いのか行き場をなくした手に触れてくる。
ひんやりと冷たい設楽先輩の手の平が私の手を包み込む。
「あいつ柔道やってるんだよな……知ってるか?金を渡せば何でもやってくれる人間なんて山ほどいることを。」
「え…?何言ってるんですか?」
設楽先輩が器用にワイシャツのボタンを外してくるけどそんなことはもうどうだって良かった。
「お前に触れたあいつの手を壊してくれる人間は沢山いるってことだ。」
すべてのボタンを外し終えた設楽先輩が「何だ、お前嫌がらないのか?」と聞いてくる。この先起こる事を拒否すればどうなるのかくらいわかる。
「わ、私も設楽先輩が好きなので嫌じゃない…ですよ?」
涙が溢れて震える声でようやく言えたその言葉に満足したのか冷たいキスを私に落とした。
設楽先輩の冷たい体温が私の体にも伝わり体の震えは止まらなかった。
愛をささやきながら包んでくれる設楽先輩はひんやりと冷たいまま。
私は考えるのやめて不二山くんと過ごした日曜日の事を思い返し、一緒に帰った月曜日に戻りたかった。
ただ言えるのは火曜日のことが嫌いになったのとこれから先、全部を放棄したくなった。
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目で追ってしまう人がいる。
挨拶できたら嬉しいし、おしゃべりできたらもっと嬉しい。青春、アオハル!…って何を思ってるんだ私は。
少女漫画的な脳みそになりかけてることに気がつき、やばいって思いながら昇降口をでると、銀髪クルクルキュートな設楽先輩がいた。
「あっ設楽先輩、一緒に帰りませんか?」
「俺もそのつもりでお前を待っていたんだ。よかったら喫茶店にでも寄らないか?」
「モチのロンでっせ!いきましょ!」
設楽先輩とは音楽室で出会ってからなにかと関わるようになり今ではこうして一緒に帰ったり、寄り道をしたり、あの時はこうなるとは思わなかったなぁ〜。
初めてあった時の、「お前誰」っての酷いよね。ぷぷ
「何笑ってんだ。」
「いえいえ、設楽先輩と仲良くなれて嬉しいなって。」
喫茶店へ入り、いつも頼むコーヒーを設楽先輩がスマートに注文してくれた。こういうところ良いよね。設楽先輩って。
運ばれてきた温かいコーヒーに口付けてると設楽先輩が私の指を見ていた。
気になったので熱くてあまり飲めていないコーヒーをテーブルにおくことに。
「どうかしたんですか?」
設楽先輩はテーブルに置かれてる私の手を取り小指を触れ「ここに切り傷があるぞ」と教えてくれた。
「あ、本当だ。なんか痛むなぁって思ってたんですよね。」
「相変わらずボケてるな。」
設楽先輩は私の手に触れたまま続けた。
「……お前の手、小さいな。」
「…?せっかくですし比べっこしましょう。」
私の手のひらと設楽先輩の手のひらがぴったりくっついた。設楽先輩の手の平からひんやりした体温が伝わる。
「設楽先輩の手は芸術品みたいで綺麗ですね。指が長くて羨ましいです。あ、コーヒー冷めちゃいますよ。」
喫茶店でおしゃべりをしていつものようにお家まで送ってくれた。
設楽先輩って優しいよね。
「なぁ。」
いつもは家の前に付いたらじゃあさよならって帰っていくのにどうしたんだろう?
「どうかしましたか?」
「……俺のこと、好きか?」
突然聞かれた設楽先輩から出るとは思わない単語に少し笑ってしまった。
「ふっふっふっ好きではない、大好き!」
「なっ」
「設楽先輩は?」
「俺だって…その…お前のことが好きだ。」
「何照れてるんですか?聞き取れなかったですよ。」
「あぁもう!うるさい。帰る。」と言い残して設楽先輩は帰っていった。
…
「日曜日空いてるか?はばたき城に行こうぜ。」
「う、うん!行きたい!!」
今日は不二山くんと沢山おしゃべりできて嬉しかったなぁ。名前も沢山読んでもらえたし、帰りにあそびに誘われた!ニヤニヤを隠すように昇降口へ向かった。
「おい、何ニヤニヤしてるんだ?」
昇降口付近で設楽先輩に話しかけられた。
隠していたはずなのにニヤニヤはバレていた。
「へへっ、設楽先輩奇遇ですね。もしかして私のこと待ってたり??」
「ああ待ってた。ほら帰るぞ。」
そして流れるように喫茶店へ。
設楽先輩はまた私の手を触ってきた。
ひんやり冷たい設楽先輩の手は熱のとき役立ちそう。
「お前、日曜日暇か?」
おっと、ここでまさかのお誘い!だけれど私にはもう先約があるのだ。
「ごめんなさい。用事があって…。」
設楽先輩の約束を断ったことがなかったので少しだけ申し訳なくなった。
そんな私の回答と顔を見て設楽先輩は目を丸くしていた。
「……なんだよ、せっかく誘ってやったのに。ってなにニヤニヤしてるんだ。」
でも、不二山くんとの約束を思い出して私の表情はニヤニヤしてしまう。
「へへへ。この話は次回聞いてくださいね!」
「……ふぅん、まあいい。また誘う。」
「じゃあ来週よろしくお願いしますね!」
「来週か、仕方ない遊んでやるよ。」
設楽先輩は満足げな顔でコーヒーに口をつけた。彼の手は私の手を離さずに包み込んでいた。
…
不二山くんと日曜日一緒にお出かけして幸せなひとときを過ごしたからこその憂鬱な月曜日が来た。不二山くんと過ごしたあの日曜日に一生いたかった。
あれ、でも冷静に考えると学校だと毎日不二山くんに会えるじゃん!やったね!っと気持ち切り替えてなんやかんやで放課後。
「一緒に帰らねぇか?」
「あっ!不二山くん!部活は大丈夫なの??」
「毎日部活ばっかしてねーよ。せっかくだし寄り道して帰ろうぜ。」
不二山くんに一緒に帰ることを提案されたのだ!
私は不二山くんと一緒に帰れた月曜日が大好きになった。
二人で昇降口に向かう途中、いつもの場所に設楽先輩がいた。もしかして私を待ってたり…?するよね?
私が話しかける前に設楽先輩に「遅い、ほら行くぞ。」と声をかけられたけれど、私の隣に不二山くんがいるのを見ると久々に眉間に皺を寄せて睨みつけてきた。
「設楽先輩、今日は約束があるのでごめんなさい!」
「ふぅん、日曜も駄目で今日も駄目なのか。」
珍しくしつこい設楽先輩。これはへそを曲げている???
困惑した表情で設楽先輩を見つめていると不二山くんが口を開いた。
「もしかして日曜日に約束があったのに俺を優先してくれたんか?」
「え、あっ違う。不二山くんのお誘いが先だったから気にしないで。」
「そっか、それなら良かった。」
この発言が後に地雷になるなんて誰が思うのでしょうか。
不二山くんが「今日は俺一人で帰るから、金曜日一緒に帰ろうぜ」と言ってくれたけれど目の前にいた設楽先輩は眉間に皺を寄せたまま無言で行ってしまった。
「あれ、設楽先輩…行っちゃった。」
「追いかけなくても大丈夫か?」
「ううん、不二山くんと一緒に帰りたかったからいいの。それに明日謝るから大丈夫だよ!」
「俺もお前と一緒に帰りたかったから、ありがとうな。」
設楽先輩と帰る時のように自然に二人で喫茶店に入り不二山くんの事を色々と聞いたり話したり。
心が満たされるような、なんだろう。私は不二山くんのことが好きなんだって心から思った。
「お前って誰かと付き合ってたりすんのか?」
不二山くんが家まで送ってくれたけど、唐突に聞かれた発言にドキドキがすごい。
「ぜっ全然そういう人いないよ」
「そうか、それなら良かった。……なぁ……俺…お前の事が…」
事が??もしかして告白?
「やっぱ今はまだやめとく、また明日な。」
不二山くんは照れ臭そうな表情をすると去ってしまった。不二山くんの背中が見えなくなっても私の胸のドキドキは止まらなかった。
…
終礼が終わり掃除当番を終えたので廊下に出ると不二山くんとすれ違った。不二山くんは私に近づき手を振ってくれたので振り返す。
「気をつけて帰れよ?」
「う、うん!不二山くんも部活頑張ってね!」
こうやって話すことが当たり前になって嬉しいけど、昨日の出来事を思い出してしまって不二山くんを見つめるのが恥ずかしい。彼の手に目線を移すと私の視線に気がついたのか不二山くんは私の手を取ってきた。
「ははっお前の手小さいな。」
不二山くんは笑いながら私の手に重ねてきて私の手の平は不二山くんの温かい体温が伝わる。
骨ばってゴツゴツした手には柔道をしてできたであろう豆がたくさんできており硬たくて男の人の手だなって。あぁどうしよう。ドキドキが止まらない。
「人の手ってあまり見ないけどお前の手綺麗だな。俺、好きだ。」
突如言われる発言に私の顔は絶対に真っ赤になってる。
「あ…私も不二山くんの手、好き。不二山くんのことも好」きと全て言い終えたのかは設楽先輩の「何やってるんだ?」の声が被せられてわからなかった。
「あ、設楽せ…」
「帰るぞ。」と言う設楽先輩に不二山くんと重なる私の手を取られてあっという間に離されてしまった。
不二山くんは離れたあとも手を振ってくれていたけど、設楽先輩がなんだか怖くて振り返せなかった。
靴を履き替えた後も設楽先輩が私の手を引き歩みすすめる。
「設楽先輩…?あのどこに行くんですか?」
私の手は設楽先輩に強く握られていてどうすればいいのかわからない。何度か聞いても無言で歩みすすめるので黙ってついていくしかなかった。
連れて行かれた場所は何度か来たこともある設楽先輩の家だった。
靴を脱いだ後も引っ張られながら設楽先輩の部屋へと連れて行かれた。
いつも設楽先輩はソファのあるテーブルに美味しいおやつと紅茶を用意してくれるけれど、そのテーブルを無視して一度も入れてくれなかった寝室の扉を開け私を中へ押し込んだ。
「設楽…先輩?」
やっと手首を離してくれたけれど私の前には設楽先輩がいる状態で恐怖を感じて寝室を観察してるほど心には余裕がなかった。
「あいつと日曜日に出かけたんだよな?」
一歩一歩近づいてくる設楽先輩に無意識的に私は後ろに下がってしまう。
「はい。そのことは次に喫茶店に行った時に…」
設楽先輩は私の声に被せるように続けた。
「昨日だってあいつと一緒に帰ったよな?」
「や。約束してましたし、それに、私…不二山くんのことが好きなんです。」
喫茶店に行ったときに設楽先輩に聞いてもらおうと思ってた不二山くんに対する思いを設楽先輩に投げた。
優しい設楽先輩は「仕方がないから相談に乗ってやるよ」って言ってくれると思ってたから。
でも設楽先輩は何を言ってるんだ?って言う時の表情をしていた。
「お前、俺のこと好きって言ってたじゃないか。」
いつの日か帰りに聞かれた単語だ。
私はもちろん友達だの意味で大好きと答えたのに。
「え、あのそれは…」という私にかぶせて設楽先輩が続ける。
「あいつがお前を誑かしたんだろ?答えろよ。」
「誑かすも何も…」
私の後ろはもう設楽先輩のベッドがあってこのまま下がることはできないのにそのまま近づいてきて設楽先輩にベットに押し倒された。
設楽先輩は押し倒されてどうしたら良いのか行き場をなくした手に触れてくる。
ひんやりと冷たい設楽先輩の手の平が私の手を包み込む。
「あいつ柔道やってるんだよな……知ってるか?金を渡せば何でもやってくれる人間なんて山ほどいることを。」
「え…?何言ってるんですか?」
設楽先輩が器用にワイシャツのボタンを外してくるけどそんなことはもうどうだって良かった。
「お前に触れたあいつの手を壊してくれる人間は沢山いるってことだ。」
すべてのボタンを外し終えた設楽先輩が「何だ、お前嫌がらないのか?」と聞いてくる。この先起こる事を拒否すればどうなるのかくらいわかる。
「わ、私も設楽先輩が好きなので嫌じゃない…ですよ?」
涙が溢れて震える声でようやく言えたその言葉に満足したのか冷たいキスを私に落とした。
設楽先輩の冷たい体温が私の体にも伝わり体の震えは止まらなかった。
愛をささやきながら包んでくれる設楽先輩はひんやりと冷たいまま。
私は考えるのやめて不二山くんと過ごした日曜日の事を思い返し、一緒に帰った月曜日に戻りたかった。
ただ言えるのは火曜日のことが嫌いになったのとこれから先、全部を放棄したくなった。
…