短編
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…
「ねぇ、俺の気持ちわかった?」
ベットで抱きしめてくる琉夏くんに私は首を横に振ることしかできない。
「どうしても?」
無言で頷く私に、琉夏くんはそんなの関係ないとでも言うように、「それでも美奈子は俺の元に来るよ。だって俺がオマエのヒーローなんだから。」と言うと再度キスしてきた。
嫌なのに琉夏くんの舌が気持ちよくていやらしい声漏れてしまう。
そんな自分が嫌で涙が溢れる。
「そんな声出されると俺、我慢できない。」
そう言うと琉夏くんは私の胸に顔を埋めてきた。
抵抗むなしく私はまたされるがままだった。
琉夏くんに送られて家の前についた。
優しく抱きしめてくる琉夏くん、優しくキスをする琉夏くん。
もしも恋人同士ならとても甘くて嬉しいことなのかもしれない。
でも私は違う、恐怖に縛られてるだけ。
琉夏くんを押し退けて家に入ろうとすると後ろから「今日のこと誰かに言ったらもっと酷いことになるの覚えておいてね。」という声が聞こえた。
怖かったので振り向かずにそのまま家に入った。
夜ご飯は食べられなくて、シャワーに入ると思い出して、自分のベットなのに眠れなかった。
明日が怖かった私は休むことにした。
目が覚めても何もできなくてボーッとして、現実逃避をするように目を瞑った。
携帯が震えまた目を覚ました。
学校が終わるであろう時間だ。
恐る恐るディスプレイを見ると新着メールが数件、そして今来たのは不二山くんから。
新着メールのうち、不二山くん以外はコウくん。あとは全部琉夏くんからだった。怖かったので不二山くんのメールだけを開いた。
“体調大丈夫か?桜井のやつ早速俺に自慢してきたぞ。俺にはよくわからないけどよかったじゃん。”
なんの事だろう?嫌な予感しかしない。
コウくんからのメールを見て嫌な予感は的中した。
“琉夏のやつと付き合うんだってな。おめでとう。
兄貴分として嬉しいぜ。
なにかあったら何でも相談しろよ?”
違う、違う、違う、違う。
メールの返信で否定する言葉を送ろうとしたら家のチャイムがなった。
母が対応しているみたいだ。
携帯のボタンの操作を間違いルカくんのメールを開いてしまった。
“体調大丈夫?美奈子の顔見に行く。”
階段の登る音がする。
やだ。やだ。やだ。
鍵を閉めて眠ったふりをしようとしたけれど、少し遅く扉が開かれ目の前には琉夏くん。
「出迎えてくれてたんだ?俺嬉しい。」
琉夏くんは私の部屋に入り、適当なところに座ると「ほら、こっちおいで」と隣をポンポン叩く。
もちろん私は隣になんか座らずに一番離れた端っこにいたけど、琉夏くんはお構いなしに私の隣に移動してきた。
「美奈子のお母さん変わんないね。挨拶したら喜んでたよ。」
「…挨拶って…?」
「メール見てないの?お前が仮病なんか使ったのが悪いんだよ。」
慌ててメールを開くと、学校に来なければ付き合ってる話をクラス中に言いまくるということだった。
「まぁ、俺も昨日ヤりすぎたし反省はしてるよ?でもさ、そんなに拒絶されたら俺傷つくよ。」
「ねぇ…、お母さんになんて言ったの?」
「もちろん付き合ってるって。こんなナリだけれどあの琉夏くんだってわかったらすごく喜んでたよ。」
琉夏くんは私の耳元で「もう逃げられないね。」と言うと「これ以上いたらまた駄目になっちゃうから俺帰るね。」と言うと帰っていった。
その後、母が琉夏くんが買ってきてくれたフルーツを切って持ってきてくれた。
付き合ってることは否定したけれど母は信じてくれなかった。
今度は夜ご飯一緒に食べましょうって。
外堀は全部埋められてしまった。
…
ベタベタしてくる琉夏くんに、冷たくする私。
琉夏くんに見つかる前に一人で昇降口を出ようとするとコウくんがいた。
喫茶店へ行くことになり、向かい合わせでコーヒーを飲む私とコウくん。
「オマエら喧嘩してんのか?」
「喧嘩とかじゃなくて、その…」
言葉に詰まる私。
「喧嘩じゃないならいいけどよ、もうちょい琉夏に優しくしてやってくんないか?」
嘘を否定するなとは言われていない。
私は意を決して言うことにした。
「違うの、付き合ってないの!」
コウくんは眉間にシワを寄せた。
「なぁ、くだらない冗談はやめろ。琉夏のやつが昔からどれだけオマエのことを好きでいたのか知っていて言ってんのか?」
「本当に付き合ってないの!」
コウくんはため息をつくと「お、来たな。じゃあオマエら早く仲直りしろよ」と言うとを席を立っていってしまった。
その代わりにコウくんの席に琉夏くんが座る。
「残念。誰も美奈子のことを信じてくれないね。」
「ルカくんの嘘つき、最低!」
私はそのまま席を立って自分の分だけお金を払ってお店を出た。
そしてその喫茶店でのやり取りを琉夏くんファンクラブの誰かが見られていた。絶対に琉夏くんが呼んだんだ。
琉夏くんファンクラブに呼び出されてお説教や嫌がらせを受けるようになった。
そしてタイミングよく琉夏くんが現れて、ヒーロー顔をする。そして冷たく当たる私。
そんな事をしてたら私は孤立していきはじめた。
不二山くんもなんだかよそよそしくなってしまった。
あの体操着さえ見つけてなかったら今頃は楽しい学園生活だったのに。
いや、もしかすると彼の本性を知らずに付き合っていたとか?ブルり震える私の体。
どっちみち今も別の可能性も最低最悪なのは間違いないことは確かだ。
…
今日も琉夏くんを置いて一人先に帰る私は気晴らしに商店街を歩いていた。
突然ヤンキーな人に「桜井弟の女だな」って絡まれ倉庫に連れて行かれ何度も「違う」と言っても、はば学の誰かに聞いたから絶対だと取り合ってくれなかった。
なんなんだろう、私って本当に運がない。
「お前の携帯で桜井弟を呼び出せ」と言われたので震える手で電話をした。
「もしもし?なんでまた俺に黙って帰ったの?」
「あの、琉夏くん」何故か倉庫に連行されたと言おうとしたらヤンキーな人に携帯を取られてしまった。
一通り話すと最後に「何か言え」って言われて携帯を差し出された。
何か言おうと考えていたけど、先に声を発したのはルカくんだった。
「琉夏くん助けてって言って。そうしたら助けてあげる。」
「え、あの…」
「このまま俺が行かなかったら美奈子はどんなことされるんだろうな。」
絶対に琉夏くんは助けてくれると思ってた。
だから思いもよらない反応で涙が出てきた。
「うっあの、琉夏くん」
「俺に助けてほしくないんだろ?」
「琉夏くん、ごめんなさい、助けて。」
「でもさ、俺はオマエのことを愛してるけど、オマエが嫌いな俺が助けに行っても俺に取ったら意味ないよね。」
泣いてる私にヤンキーみたいな人はイライラし始め「早く携帯を切れ」と怒鳴ってきた。
「じゃあさ、俺はオマエの何?」
「ルカくんは…私のヒーロー」
「うーん、どうしよっかな。」
「琉夏くんのこと愛して」
愛してると言い切る前にヤンキーみたいな人に携帯を奪われ通話が切れてしまった。
ヤンキーみたいな人たちが、笑いながら「さっきの調子だと来なさそうだな、1分に1枚脱がせようぜ」と言うや私の制服をナイフで切り始めた。
あっという間に数分が立って私は下着姿になっていた。
私はただ泣くことしかできなかった。
やっぱり琉夏くんは助けに来てくれないんだ。私が全部悪いんだ。
「おい、もう一分経過だ、どっちから行こうか?」「靴下は残そうぜ」「下着を脱がしたらリボンつけなおしてやろう」「写真撮って売りさばこう」
怖くて泣いてる私を無視してヤンキーみたいな人達は私の下着にナイフを当てた。
ふとバイクの音が聞こえたと思うとあたりが騒がしくなった。
そしてあっという間に血の海。
琉夏くんは大勢の人たちを一人で倒した。
琉夏くんは私に近寄ると抱きしめてくれた。
琉夏くんの温もりがあったかくて恐怖の涙ではないものが溢れ出た。
「ごめんね、少しだけ意地悪しちゃった。ここから出よう。」
琉夏くんは私にジャケットを羽織らせて落ちている制服の残骸を拾って私の手を握り建物から出た。
ワイシャツもキャミソールもナイフで切られてしまって着られなかったから、WestBeachに来た。
あの日以降、来ることがなかったWestBeach。
WestBeachにはいるや琉夏くんが口を開いた。
「ねぇ、さっきなんて言ったの?最後まで聞こえなかったんだ。」
助けてほしいから出た言葉です、なんて言ったら酷い目に合うことは間違いないことは確かだ。
「私も…、琉夏くんのことを愛してます。」
私の震える声が店内に響きわたる。
「本当?」
無言で頷く事しかできなかった。
琉夏くんは私にやさしいキスを落としながら
「俺がオマエのヒーロー。これからもずっとずっと。愛してる。」
どちみち、琉夏くんから逃げられるなんてもう思ってなかった私は琉夏くんのキスに応えるだけ。
きっとこれから先もずっと。