本編
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俺達が利用しているこの合宿場は、なかなかの歴史がある。……といえば聞こえはいいが、要するに古いのである。古い宿であるにも関わらず、否、古い宿だからこそ温泉は豪華だ。
監督はこの温泉に入りたいがためにこの合宿場を選んでいるという噂もあるくらいにはこだわっていて、大きい。
しかし何度もいうように古い宿だからプライバシーとか、防犯とか、そういう設備は整っていない。男湯と女湯の区別だって、あってないようなものなのだ。元々ひとつの大きな脱衣所と温泉だったものを板で区切っただけ。上の方では繋がってるし、仕切りの板も厚いとは言えない。
――何が言いたいのかというと、男湯にいても女湯の話し声は聞こえてしまう、ということだ。
「マヤちゃん、折入って相談があるんだけど……」
「なんですかー?」
水の跳ねる音と共に聞こえてきた相田さんの声。
何となく、男湯内は静かになる。
「あの、さ……」
切り出した側の相田さんが言い淀むと言うことは、余程深刻な内容なのか。
「ど、どうしたらそんなに大きくなるのかな!」
「……へ?」
恐らく、俺は今仕切りの向こう側にいるマヤと同じ顔をしているのだろう。もっと深刻な相談かと思ったのに、拍子抜けだ……と言ったら相田さんに失礼か。
「あー特別やっていることはないですよ、両親共身長は高めだからきっと遺伝じゃないかと」
「あ、いや、身長のことじゃなくて、」
「……あー」
数秒間を置いて、どこか気まずそうなマヤの声が聞こえてくる。……そして、俺も遅れて相田さんが言いたかったことがわかった。わかってしまった。
「……おい、日向顔真っ赤だぞ」
「そういうコガも一緒だろうが」
すぐにはわからなかった面々も、日向さんと小金井さんの反応で察したようだ。
普段は運動する時に邪魔だからと言って押し潰しているが、マヤの胸は大きい方だ……と思う。もちろん生で見たわけではない(当たり前だ!)。
以前マヤの家にお邪魔した時マヤは普段着を着ていたのだが、その時に目についただけだ。……思わずそちらに目が行ってしまったのは仕方ないだろう。いくら他の奴よりも精神年齢が高いと言っても俺も男だ。
……いや、誰かに責められたわけではないのだから、こんなに必死に言い訳する必要はないのだが。
「んー、私は別にリコさんくらいが丁度いいと思いますけ、どっ!?」
「そんなことはないわ!だってね、この前桐皇のマネージャーが来たとき、」
桐皇のマネージャー……というと、やはり桃井だろうか。彼女も確かに発育はよかったが、女性にとってデリケートなそういう話題で誰かを弄るような人ではなかったと思ったが。
「――つまり、桃井サンの胸をガン見していた部員の中にリコさんの想い人がいてとっても悔しい、ということですか?」
「ちっ、違うわよ!なんでそうなるの!」
「あれ、違いますか?てっきりそういう話かと」
「違う違う!そういう話題にくらいつく男が許せないだけで、別に見返したいとかそういうことは……」
「なんだーやっぱり見返したいんじゃないですかー。で、誰なんですか?」
また別の意味で男湯は静まり返る。……やはり、皆気になるのか。
「そんなのはどうでもいいのよ!」
「えー?」
不満げなマヤの声。だが、マヤはそれ以上追求することはなかった。
男湯にもどこかホッとした空気が流れ、また賑やかさを取り戻す。
さて、俺もそろそろ上がろうか。
―――――――
―――――
――
「あ、真ちゃん!」
湯上がりにジュースでも飲もうと自動販売機の前を陣取っていると、マヤの声からかけられた。
相田さんも一緒にいる。二人も今さっきあがったようで、その肌はまだ熱を帯びていた。
「真ちゃん達も入ってたんだね」
「まぁ、な」
だからお前達の声も聞こえたとはさすがに言えず、曖昧に返す。それがきっかけになったのか風呂での会話が思い出されてしまい……思わず視線は下へと向かってしまう。
これから朝まで練習がないから、だろうか。完全に自宅にいる時と同じ格好だった。……つまり、あの日俺が見た、魅力的なマヤが目の前にいるということだ。
これは、まずい。
誰かが変な気を起こさないとも限らないし、何よりあんな話を聞いた後だ。きっと皆視線はそちらに行ってしまうだろう。マヤがそういう目で見られるのは、許しがたい。
「……真ちゃん?」
「羽織っていろ」
だから、とりあえずは俺のこのぶかぶかの服で、体のラインを隠させる。
マヤは不思議そうにこちらを見つめているが、先に隣にいたリコさんが俺の意図に気付いたようだ。マヤに何か耳打ちしている。
みるみるうちにその頬が赤くなっていくから……俺の意図を伝えられた、ということか。
余計な事を、と思わないでもないが、可愛いマヤを見られたので良しとする。
「……わかったなら、以後気を付けるのだよ」
「う、うん、ありがと」
そっとジャージの上着を着込み僅かに頬を緩めたマヤは、抱き締めたくなるくらい可愛かった。
無防備な君へ
((しかし元はといえば、この人があんな話を振ったから……))
((なんか緑間君からの視線が鋭くなった!?))
((わ、わわ、真ちゃんの匂いがする……!))
監督はこの温泉に入りたいがためにこの合宿場を選んでいるという噂もあるくらいにはこだわっていて、大きい。
しかし何度もいうように古い宿だからプライバシーとか、防犯とか、そういう設備は整っていない。男湯と女湯の区別だって、あってないようなものなのだ。元々ひとつの大きな脱衣所と温泉だったものを板で区切っただけ。上の方では繋がってるし、仕切りの板も厚いとは言えない。
――何が言いたいのかというと、男湯にいても女湯の話し声は聞こえてしまう、ということだ。
「マヤちゃん、折入って相談があるんだけど……」
「なんですかー?」
水の跳ねる音と共に聞こえてきた相田さんの声。
何となく、男湯内は静かになる。
「あの、さ……」
切り出した側の相田さんが言い淀むと言うことは、余程深刻な内容なのか。
「ど、どうしたらそんなに大きくなるのかな!」
「……へ?」
恐らく、俺は今仕切りの向こう側にいるマヤと同じ顔をしているのだろう。もっと深刻な相談かと思ったのに、拍子抜けだ……と言ったら相田さんに失礼か。
「あー特別やっていることはないですよ、両親共身長は高めだからきっと遺伝じゃないかと」
「あ、いや、身長のことじゃなくて、」
「……あー」
数秒間を置いて、どこか気まずそうなマヤの声が聞こえてくる。……そして、俺も遅れて相田さんが言いたかったことがわかった。わかってしまった。
「……おい、日向顔真っ赤だぞ」
「そういうコガも一緒だろうが」
すぐにはわからなかった面々も、日向さんと小金井さんの反応で察したようだ。
普段は運動する時に邪魔だからと言って押し潰しているが、マヤの胸は大きい方だ……と思う。もちろん生で見たわけではない(当たり前だ!)。
以前マヤの家にお邪魔した時マヤは普段着を着ていたのだが、その時に目についただけだ。……思わずそちらに目が行ってしまったのは仕方ないだろう。いくら他の奴よりも精神年齢が高いと言っても俺も男だ。
……いや、誰かに責められたわけではないのだから、こんなに必死に言い訳する必要はないのだが。
「んー、私は別にリコさんくらいが丁度いいと思いますけ、どっ!?」
「そんなことはないわ!だってね、この前桐皇のマネージャーが来たとき、」
桐皇のマネージャー……というと、やはり桃井だろうか。彼女も確かに発育はよかったが、女性にとってデリケートなそういう話題で誰かを弄るような人ではなかったと思ったが。
「――つまり、桃井サンの胸をガン見していた部員の中にリコさんの想い人がいてとっても悔しい、ということですか?」
「ちっ、違うわよ!なんでそうなるの!」
「あれ、違いますか?てっきりそういう話かと」
「違う違う!そういう話題にくらいつく男が許せないだけで、別に見返したいとかそういうことは……」
「なんだーやっぱり見返したいんじゃないですかー。で、誰なんですか?」
また別の意味で男湯は静まり返る。……やはり、皆気になるのか。
「そんなのはどうでもいいのよ!」
「えー?」
不満げなマヤの声。だが、マヤはそれ以上追求することはなかった。
男湯にもどこかホッとした空気が流れ、また賑やかさを取り戻す。
さて、俺もそろそろ上がろうか。
―――――――
―――――
――
「あ、真ちゃん!」
湯上がりにジュースでも飲もうと自動販売機の前を陣取っていると、マヤの声からかけられた。
相田さんも一緒にいる。二人も今さっきあがったようで、その肌はまだ熱を帯びていた。
「真ちゃん達も入ってたんだね」
「まぁ、な」
だからお前達の声も聞こえたとはさすがに言えず、曖昧に返す。それがきっかけになったのか風呂での会話が思い出されてしまい……思わず視線は下へと向かってしまう。
これから朝まで練習がないから、だろうか。完全に自宅にいる時と同じ格好だった。……つまり、あの日俺が見た、魅力的なマヤが目の前にいるということだ。
これは、まずい。
誰かが変な気を起こさないとも限らないし、何よりあんな話を聞いた後だ。きっと皆視線はそちらに行ってしまうだろう。マヤがそういう目で見られるのは、許しがたい。
「……真ちゃん?」
「羽織っていろ」
だから、とりあえずは俺のこのぶかぶかの服で、体のラインを隠させる。
マヤは不思議そうにこちらを見つめているが、先に隣にいたリコさんが俺の意図に気付いたようだ。マヤに何か耳打ちしている。
みるみるうちにその頬が赤くなっていくから……俺の意図を伝えられた、ということか。
余計な事を、と思わないでもないが、可愛いマヤを見られたので良しとする。
「……わかったなら、以後気を付けるのだよ」
「う、うん、ありがと」
そっとジャージの上着を着込み僅かに頬を緩めたマヤは、抱き締めたくなるくらい可愛かった。
無防備な君へ
((しかし元はといえば、この人があんな話を振ったから……))
((なんか緑間君からの視線が鋭くなった!?))
((わ、わわ、真ちゃんの匂いがする……!))