君に片膝つく5秒前(山本祥彰)
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(山本祥彰Side)
「航平!」
「こうちゃーん」
「ねぇねぇ航平。」
「あのね…」
僕が思いを寄せる美緒ちゃんは
こうちゃんと大変仲良しである。
パーマがかかったフワフワの髪を揺らして
暇さえあればこうちゃんの元へ。
作業をする時も大抵こうちゃんの隣にいるのだ。
美緒ちゃんをここに連れてきたのも
もちろんこうちゃんである。
美緒ちゃんがライターとしてQuizKnockに入りたての頃から
彼女の特等席はこうちゃんの隣であった。
まぁ、学部も年も一緒で居心地がいいのだろう。
でも、
時折こうちゃんの右手に光る指輪を眺めては
「いいなぁ」とつぶやいていることを僕は知っている。
もしかしたら、
美緒ちゃんはこうちゃんに思いを寄せているのかもしれない。
かなわない恋を胸に秘めてるのかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日は授業が休講になり、いつもより早めにオフィスに到着した。
玄関を開けると、かわいらしいパンプスが一足。
これは美緒ちゃんがいつも履いているもの。
今日はまだ彼女しかいないのだろうか。
「お疲れ様でーす。」
いつものように入るが、
中から返答はなかった。
代わりにキッチンの方から、
コーヒーメーカーの音がした。
コーヒーのほろ苦い香りが鼻を掠める。
キッチンを覗くと、
彼女の背中が見えた。
僕には気づいていないようだ。
「美緒ちゃん、おはよう。」
「わひゃっ⁉」
後ろから声をかけると、
こっちも1歩後ずさってしまうほどの驚き様。
「やっ、やまっ!
山本しゃんっ…⁉」
「お、落ち着いて!
急に声かけてごめんね、」
彼女は深呼吸をするようにして、息を整える。
「おはようございます…。
はぁ…びっくりした。」
そんなにびっくりされるとちょっと悲しい。
「今日は早いんだ?」
「あ、はい。
そうなんですよ。」
「こうちゃんは?」
「あ、えっと、航平は…、
彼女ちゃんとデートです…。」
しょんぼりしたように彼女が口を開く。
というか、
彼女、一回も僕と目を合わせてくれない。
あれ、僕、もしかして嫌われてる?
「そうなんだ、僕もコーヒーもらおうかな。」
「わかりました!
ブラックにします?牛乳あるのでカフェオレもできますけど、」
「じゃあカフェオレで!」
彼女にお願いして自分の荷物の元にいく。
背を向けると丁度彼女のスマートフォンから、
彼女の好きなバンドの曲が流れる。
「もしもし、航平?」
またこうちゃんだ。
楽しそうだなー…。
てかこうちゃん、彼女とデートじゃないのかよ。
いいの、美緒ちゃんに電話なんかして。
「えっ…うん、そう、だけど。
いや感謝してるよ?
でもさ…
わかった!わかったよー!
だからそんなこと言わないで!」
何の話だろう。
電話が終わったのか、
彼女は湯気が上がるマグカップを2個持ってきた。
「山本さん、どうぞ。」
「あ、ありがとう。
こうちゃんと電話?
なんか用事だったの?」
「あ、いや、用事というか、その…」
…、何、顔赤くしちゃって。
「っ…お隣、よろしいですか!」
「え、あ、うん?」
マグカップを持ったまま小さく「うー…」とうなると、
何かを決したように顔を上げる。
僕の隣の椅子を引いて、勢いよく座る。
…座ったのはいいものの、
僕も彼女も会話がない。
思い返してみれば、
オフィスで二人になったことなんて、あっただろうか。
なんだか僕も緊張してきた。
「あの、山本さん、
今日お時間ありますか?」
「え、うん。」
「よ、夜、よかったら、一緒に、
ごはんに、」
「え?」
「あっ、嫌ならいいんです!
ほんとに!」
嫌なわけ、嫌なわけないじゃん!?
可愛い美緒ちゃんと夜ご飯、
絶対に行く!
「い、行く!
嫌じゃないし、全然嫌じゃないし!
むしろ嬉しいし!」
「え、や、やったぁ!」
勢いあまって立ち上がって返事をすると
彼女も立ち上がった。
「「あ…」」
なんだか恥ずかしくなって、お互い顔を見合わせる。
さて、どこに行こう、何を食べよう。
女の子って何が好きなんだ?
「えへへぇ、
嬉しいなぁ、山本さんとご飯、」
「…かわいすぎ、」
あぁ、もう可愛い、
するとまた彼女のスマートフォンが鳴る。
「あ、航平⁉
うん、そうなの!
山本さんごはんに誘え…た…」
嬉しそうに電話をとった彼女は、
何かを話した途端、僕の存在に改めて気づいた。
今度こそ、見る見るうちに顔が赤くなっていく。
これは、もしかして、
口角が自然と上がる。
彼女の手の内のものをするりと抜き取って
「ってことだから、
こうちゃん。あんまり美緒ちゃんと仲良くしすぎないでね。
妬けちゃうからさ。」
そういって電話を切る。
驚いたような彼女に膝をつく5秒前。
**Fin**
「航平!」
「こうちゃーん」
「ねぇねぇ航平。」
「あのね…」
僕が思いを寄せる美緒ちゃんは
こうちゃんと大変仲良しである。
パーマがかかったフワフワの髪を揺らして
暇さえあればこうちゃんの元へ。
作業をする時も大抵こうちゃんの隣にいるのだ。
美緒ちゃんをここに連れてきたのも
もちろんこうちゃんである。
美緒ちゃんがライターとしてQuizKnockに入りたての頃から
彼女の特等席はこうちゃんの隣であった。
まぁ、学部も年も一緒で居心地がいいのだろう。
でも、
時折こうちゃんの右手に光る指輪を眺めては
「いいなぁ」とつぶやいていることを僕は知っている。
もしかしたら、
美緒ちゃんはこうちゃんに思いを寄せているのかもしれない。
かなわない恋を胸に秘めてるのかもしれない。
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その日は授業が休講になり、いつもより早めにオフィスに到着した。
玄関を開けると、かわいらしいパンプスが一足。
これは美緒ちゃんがいつも履いているもの。
今日はまだ彼女しかいないのだろうか。
「お疲れ様でーす。」
いつものように入るが、
中から返答はなかった。
代わりにキッチンの方から、
コーヒーメーカーの音がした。
コーヒーのほろ苦い香りが鼻を掠める。
キッチンを覗くと、
彼女の背中が見えた。
僕には気づいていないようだ。
「美緒ちゃん、おはよう。」
「わひゃっ⁉」
後ろから声をかけると、
こっちも1歩後ずさってしまうほどの驚き様。
「やっ、やまっ!
山本しゃんっ…⁉」
「お、落ち着いて!
急に声かけてごめんね、」
彼女は深呼吸をするようにして、息を整える。
「おはようございます…。
はぁ…びっくりした。」
そんなにびっくりされるとちょっと悲しい。
「今日は早いんだ?」
「あ、はい。
そうなんですよ。」
「こうちゃんは?」
「あ、えっと、航平は…、
彼女ちゃんとデートです…。」
しょんぼりしたように彼女が口を開く。
というか、
彼女、一回も僕と目を合わせてくれない。
あれ、僕、もしかして嫌われてる?
「そうなんだ、僕もコーヒーもらおうかな。」
「わかりました!
ブラックにします?牛乳あるのでカフェオレもできますけど、」
「じゃあカフェオレで!」
彼女にお願いして自分の荷物の元にいく。
背を向けると丁度彼女のスマートフォンから、
彼女の好きなバンドの曲が流れる。
「もしもし、航平?」
またこうちゃんだ。
楽しそうだなー…。
てかこうちゃん、彼女とデートじゃないのかよ。
いいの、美緒ちゃんに電話なんかして。
「えっ…うん、そう、だけど。
いや感謝してるよ?
でもさ…
わかった!わかったよー!
だからそんなこと言わないで!」
何の話だろう。
電話が終わったのか、
彼女は湯気が上がるマグカップを2個持ってきた。
「山本さん、どうぞ。」
「あ、ありがとう。
こうちゃんと電話?
なんか用事だったの?」
「あ、いや、用事というか、その…」
…、何、顔赤くしちゃって。
「っ…お隣、よろしいですか!」
「え、あ、うん?」
マグカップを持ったまま小さく「うー…」とうなると、
何かを決したように顔を上げる。
僕の隣の椅子を引いて、勢いよく座る。
…座ったのはいいものの、
僕も彼女も会話がない。
思い返してみれば、
オフィスで二人になったことなんて、あっただろうか。
なんだか僕も緊張してきた。
「あの、山本さん、
今日お時間ありますか?」
「え、うん。」
「よ、夜、よかったら、一緒に、
ごはんに、」
「え?」
「あっ、嫌ならいいんです!
ほんとに!」
嫌なわけ、嫌なわけないじゃん!?
可愛い美緒ちゃんと夜ご飯、
絶対に行く!
「い、行く!
嫌じゃないし、全然嫌じゃないし!
むしろ嬉しいし!」
「え、や、やったぁ!」
勢いあまって立ち上がって返事をすると
彼女も立ち上がった。
「「あ…」」
なんだか恥ずかしくなって、お互い顔を見合わせる。
さて、どこに行こう、何を食べよう。
女の子って何が好きなんだ?
「えへへぇ、
嬉しいなぁ、山本さんとご飯、」
「…かわいすぎ、」
あぁ、もう可愛い、
するとまた彼女のスマートフォンが鳴る。
「あ、航平⁉
うん、そうなの!
山本さんごはんに誘え…た…」
嬉しそうに電話をとった彼女は、
何かを話した途端、僕の存在に改めて気づいた。
今度こそ、見る見るうちに顔が赤くなっていく。
これは、もしかして、
口角が自然と上がる。
彼女の手の内のものをするりと抜き取って
「ってことだから、
こうちゃん。あんまり美緒ちゃんと仲良くしすぎないでね。
妬けちゃうからさ。」
そういって電話を切る。
驚いたような彼女に膝をつく5秒前。
**Fin**
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