二度と会いたくない(福良拳)
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私は、パパとママに愛されていません。
頭がよくないからです。
お兄ちゃんは頭がいいので
とてもパパとママに可愛がられています。
「あんたなんか生まなきゃよかった。」
ママは私によくこういいます。
「ごめんね。」
私は謝るしかありませんでした。
お兄ちゃんは嫌いです。
パパとママを独り占めするから。
でもある日、パパとママはいなくなってしまいました。
交通事故でした。
「可哀そうに、拳くんもようやく大学生でしょ?」
「美緒ちゃんだって高校生になったばかりなのに…」
お葬式では知らない人たちがヒソヒソと話しています。
「美緒」
「なぁに、お兄ちゃん。」
「東京においで。一緒に暮らそう。」
嫌でした。
お兄ちゃんが嫌いだから。
仕方がないから東京に行きました。
東京の何も知らない同級生は
とてもよくしてくれました。
友達がたくさんいました。
でも、すぐに一人ぼっちになってしまいました。
哀しくて、つい、こぼしてしまいました。
「私、また一人ぼっちになったよ。」
「美緒が?どうして?」
お兄ちゃんは心配そうにうつむく私をのぞき込みます。
「昨日まで仲良くしてくれたのに、
絵里ちゃんも、美玖ちゃんも、無視してくるの。」
「そっか…辛かったね。
でもお兄ちゃんは美緒のこと大好きだよ。」
大嫌いなお兄ちゃんは私が大好きらしいのです。
初めて知りました。
「僕は、僕だけが美緒の味方だよ。
僕はね、美緒を愛しているんだ。」
お兄ちゃんの長い腕が私を抱きしめました。
あったかいです。
あんなに大嫌いだったお兄ちゃんが大好きになりました。
私にはもうお兄ちゃんしかいないのです。
私を愛してくれるのはお兄ちゃんしかいないのです。
「いい?美緒には僕が必要なんだ。
僕には美緒が必要だし、僕たちは運命共同体なの。
離れられないの。」
「運命共同体?」
「そう。僕、今まで美緒に嘘ついたことある?
間違ったこと、言ったっけ?」
お兄ちゃんはとても頭がいいのです。
間違ったことなど、1度もありません。
信じれるのはお兄ちゃんだけ?
外の世界はなぜか私を迫害する。
「お兄ちゃん。」
「お兄ちゃんって言葉、僕嫌いだな。
拳って呼んでよ。」
お兄ちゃんはお兄ちゃんと呼ぶと不機嫌になるので
拳くんと呼ぶことにしました。
拳くんと呼ぶとお兄ちゃんはとても喜びます。
いつの間にか、私もほだされてしまったようです。
だから黙っていました。
パパとママの事も
離れていった東京の友達の事も。
私は知っていました。
拳くんが全部やっているのだと。
だって彼は私を愛しているから。
感情も、嫌悪さえも彼が持っているから。
**Fin**
頭がよくないからです。
お兄ちゃんは頭がいいので
とてもパパとママに可愛がられています。
「あんたなんか生まなきゃよかった。」
ママは私によくこういいます。
「ごめんね。」
私は謝るしかありませんでした。
お兄ちゃんは嫌いです。
パパとママを独り占めするから。
でもある日、パパとママはいなくなってしまいました。
交通事故でした。
「可哀そうに、拳くんもようやく大学生でしょ?」
「美緒ちゃんだって高校生になったばかりなのに…」
お葬式では知らない人たちがヒソヒソと話しています。
「美緒」
「なぁに、お兄ちゃん。」
「東京においで。一緒に暮らそう。」
嫌でした。
お兄ちゃんが嫌いだから。
仕方がないから東京に行きました。
東京の何も知らない同級生は
とてもよくしてくれました。
友達がたくさんいました。
でも、すぐに一人ぼっちになってしまいました。
哀しくて、つい、こぼしてしまいました。
「私、また一人ぼっちになったよ。」
「美緒が?どうして?」
お兄ちゃんは心配そうにうつむく私をのぞき込みます。
「昨日まで仲良くしてくれたのに、
絵里ちゃんも、美玖ちゃんも、無視してくるの。」
「そっか…辛かったね。
でもお兄ちゃんは美緒のこと大好きだよ。」
大嫌いなお兄ちゃんは私が大好きらしいのです。
初めて知りました。
「僕は、僕だけが美緒の味方だよ。
僕はね、美緒を愛しているんだ。」
お兄ちゃんの長い腕が私を抱きしめました。
あったかいです。
あんなに大嫌いだったお兄ちゃんが大好きになりました。
私にはもうお兄ちゃんしかいないのです。
私を愛してくれるのはお兄ちゃんしかいないのです。
「いい?美緒には僕が必要なんだ。
僕には美緒が必要だし、僕たちは運命共同体なの。
離れられないの。」
「運命共同体?」
「そう。僕、今まで美緒に嘘ついたことある?
間違ったこと、言ったっけ?」
お兄ちゃんはとても頭がいいのです。
間違ったことなど、1度もありません。
信じれるのはお兄ちゃんだけ?
外の世界はなぜか私を迫害する。
「お兄ちゃん。」
「お兄ちゃんって言葉、僕嫌いだな。
拳って呼んでよ。」
お兄ちゃんはお兄ちゃんと呼ぶと不機嫌になるので
拳くんと呼ぶことにしました。
拳くんと呼ぶとお兄ちゃんはとても喜びます。
いつの間にか、私もほだされてしまったようです。
だから黙っていました。
パパとママの事も
離れていった東京の友達の事も。
私は知っていました。
拳くんが全部やっているのだと。
だって彼は私を愛しているから。
感情も、嫌悪さえも彼が持っているから。
**Fin**
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