金曜日、窓際のあの人(河村拓哉)
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私の思い人は毎週金曜日にこの喫茶店に来る。
ご主人が経営している小さな、
でも常連さんに愛されている素敵なお店。
金曜日の14時頃、
メガネの彼はいつも窓際で静かに本を読んでいる。
その横顔の麗しい事。
「ブレンドコーヒー、ホットで。」
「はい、少々お待ちください。」
喫茶店でアルバイトしている私は、
毎週彼の来店を心待ちにしている。
以前までは金曜日にシフトを入れていなかったが、
たまたま手伝いに来た金曜日に彼を見つけ、
マスターに聞いたところ最近金曜日にくるのだとか。
ほかのバイトの子に言って曜日を代わってもらい、
今は私は金曜日にホールに立っている。
「はぁ…素敵…、」
カウンター越しに彼の横顔を眺める。
ずっと見てると、バレちゃいそうだから、
仕事をしながらちらちらと彼を眺める。
何度見ても素敵である。
今日は蝶ネクタイをしている。
私服で蝶ネクタイとかどんなおしゃれさんよ。
え、指なっが。
キレイ。
好き。
「美緒ちゃん、コーヒーよろしく。」
「あっ、はい。」
彼に見とれていると後ろから声がかかる。
トレンチにコーヒーを乗せて窓際に向かう。
「おまたせしました、ブレンドコーヒーです。」
「どうも」
少し私から視線を外してペコリとした彼は、
優雅にティーカップを持つと口をつける。
小さく「ほぅ…、」というとまた難しそうな本に視線を戻す。
「ごゆっくりどうぞ。」
この日がずっと続けばいいのに。
少なくとも、私が大学で過ごす間は。
名前はなんだろう。
読書が趣味なら、おすすめは?
今まで一番面白かった本は?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「美緒、早くない?」
「あ、うん。
なんとなく、読書したくて。
拓朗も昔から本好きだったよね。」
今日は幼馴染である拓朗とランチの約束。
私も拓朗も大阪から出てきたけど、
もうほとんど関西弁はでない。
「どう、最近。」
「伊沢拓司さんって知ってる?」
「あぁ、クイズ王の?
たまにテレビでも出てるよね。」
「そう、YouTubeを始めるらしくて、
その手伝いをすることになった。」
「…え?拓朗、YouTuberやるの⁉」
「…そういうことになる。」
「まーじーか!」
拓朗がYouTuberデビューか。
まぁ、今はこういうご時世だしなぁ。
「美緒は。最近変わったことないの?」
「私?私は…えへへ、久しぶりに恋をしました。」
「…は?」
拓朗の目が点になる。
それもそのはず、高校まで女子高で、
近くの男性と言えば拓朗のみ。
でも拓朗は本当に親友である。
「珍しい。どこのだれ?」
「名前はわからないの。
でもね、私のバイトしてる喫茶店の常連さんなの。
素敵なのよ?」
「いや、何も伝わらない。」
「もうっ…、メガネをかけてて、
あ、最近パーマをかけたみたい。
私服なのに蝶ネクタイを付けてる時があって…
ブラックのコーヒーで読書してるわ。」
「…ふぅん」
「もう、なに?
そっちから聞いてきたくせに。」
考え込むように、
いつもの癖で口元に指をあてる拓朗。
「今度、オフィスに遊びに来なよ。」
「え?申し訳ないよ。
伊沢さんのファンもいるわけだし…
知り合いだからって…、」
「いいから。」
「そう?」
こうして拓朗とオフィスとやらにお邪魔することが決まった。
約束は1週間後の土曜日。
なんだかドキドキしちゃう。
東大の知識王に会えるのだもの。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
住所を渡されたのはとあるマンションの一室。
恐る恐るインターホンを押すと、
「美緒?」と拓朗の声。
自動ドアが開いて中に入ると、
部屋の扉の前で拓朗が待っていてくれた。
「お疲れ。」
「お疲れ様。これ、少しだけどお菓子。」
「いいのに。気、使わなくて。」
「そういうわけにはいかないわよ。」
オフィスを開けると廊下にすでにホワイトボード。
「お邪魔しまーす…。」
玄関には男物の靴が4足。
「なんか靴多くない?」
「伊沢さんと、ネット記事のライターさんが何人か今日はいるから。」
「へぇ…そうなの…」
奥の部屋の扉を拓朗がガチャリと開けて
「美緒、来ましたよ伊沢さん。」
と声をかける。すると中から「おぉ、」と返事。
「やだ、緊張する。」
「はい、入りまーす。」
腕をぐいぐいと引かれて中に飛び込む。
拓朗のドS野郎め。
心の準備ができないまま顔を上げると、
「あ、」
見慣れた人物を中に見つけた。
「おや。」
彼も私に気が付くと不思議そうに首を傾げた。
「あれ、河村さん、美緒と知合いですか?」
「あぁ、彼女の働く喫茶店に僕がよく行くんですよ。
ご主人の珈琲がおいいくてね。」
ふわりと笑う彼は今日も美しい。
長い脚を優雅に組んで膝の上にパソコンが置かれている。
「へぇ。」
すべてを悟ったように拓朗がにやりと口元を上げる。
「た、拓朗!挨拶!伊沢さんに挨拶しなきゃ!」
余計なことを言われる前にと腕をつかむ。
舌打ちが聞こえてきそうな顔をされるがそんなこと知ったこっちゃない。
「初めまして。綾瀬です。お茶の水女子大の3年です。
拓朗がいつもお世話になってます。」
「初めまして、QizuKnock編集長の伊沢です。」
爽やかに笑う伊沢さんはテレビのまんま。
こりゃ、女の子におモテになりますわ。
「で、実際のところどうなの?」
「はえ?」
「川上と。付き合ってないの?
随分仲良さそうだけど。」
「はっ⁉いやいやいや!
拓朗なんて腐れ縁ですよ⁉
まぁ、顔は悪くないし頭もいいですけど!
こんなの絶対に彼氏にしたくないです。」
「まぁ美緒好きな人いるしな。」
「ちょっと!!」
「ほぉ、それは僕も気になりますね。」
「俺も。好きな人ってことは、彼氏はいないんだ。」
そこで何で乗ってくるんですかお兄さん方!
こんな人たちばっかりですか⁉
この会社は!
「この際だから、言っちゃえば。」
コソリと拓朗が耳打ちをしてくる。
無理。絶対無理。
そんな目で見てたなんてバレたらもうお店に来てもらえない。
「ふむ。面白くないですね。」
すると彼がメガネの奥からじ、とこちらを見つめて一言。
「え…」
全身から血の気が引く。
え、やばい?
この一瞬で嫌われた⁉
「あ、ご、ごめんなさい、
うるさくして…、」
「いえ、そうではなくて。」
彼は静かに手で制すると、拓朗の腕を引っ張る。
これは、まさか。
そういうことですか?
彼、拓朗のことが好き⁉
ていうかすでに恋人⁉
「た、拓朗の裏切り者ー!」
「いや、なんでそうなる。」
きっと先週の私の恋バナを
心の中で笑ってたんだ。
「綾瀬美緒さんといいましたか。」
「は、はひっ、」
「僕は貴方のことが好きであの喫茶店に通ったんです。」
「はい?」
「ですから、貴方が好きなので
川上と仲良くしている様を目の当たりにするのは面白くはありません。」
部屋が異様に静かだ。
いや、異様でもない。
この部屋にいる人、
すべてが彼の言葉に黙りこくってしまった。
「え、と…」
「話したこともなく気持ち悪いでしょうが…、
僕は貴方の事が好きです。」
なんとなく最初は混乱したものの、
状況をよく吟味すると途端に顔が熱くなる。
「あっ、えっ、」
「河村さん。
こいつも河村さんの事好きだって言ってます。」
「なんで言うのよ!!拓朗のおバカ!」
自分より幾分か身長の高い拓朗を叩こうとした手は
彼に紳士的につかまれて、
白い大きな手できゅ、と握られた。
「して、綾瀬さんのお返事は?
川上の言葉ではなく、貴方の言葉でお聞きしたい。」
「…私も、貴方がずっと好きでした。」
聞こえてるんだろうか。
今までにないぐらいに小さい声だったような気がする。
「それはよかった。」
にこりと笑った彼の美しい事。
あぁ、こんなので今後彼の隣にいられるのだろうか。
もう4つぐらいは心臓が欲しい。
**Fin**
ご主人が経営している小さな、
でも常連さんに愛されている素敵なお店。
金曜日の14時頃、
メガネの彼はいつも窓際で静かに本を読んでいる。
その横顔の麗しい事。
「ブレンドコーヒー、ホットで。」
「はい、少々お待ちください。」
喫茶店でアルバイトしている私は、
毎週彼の来店を心待ちにしている。
以前までは金曜日にシフトを入れていなかったが、
たまたま手伝いに来た金曜日に彼を見つけ、
マスターに聞いたところ最近金曜日にくるのだとか。
ほかのバイトの子に言って曜日を代わってもらい、
今は私は金曜日にホールに立っている。
「はぁ…素敵…、」
カウンター越しに彼の横顔を眺める。
ずっと見てると、バレちゃいそうだから、
仕事をしながらちらちらと彼を眺める。
何度見ても素敵である。
今日は蝶ネクタイをしている。
私服で蝶ネクタイとかどんなおしゃれさんよ。
え、指なっが。
キレイ。
好き。
「美緒ちゃん、コーヒーよろしく。」
「あっ、はい。」
彼に見とれていると後ろから声がかかる。
トレンチにコーヒーを乗せて窓際に向かう。
「おまたせしました、ブレンドコーヒーです。」
「どうも」
少し私から視線を外してペコリとした彼は、
優雅にティーカップを持つと口をつける。
小さく「ほぅ…、」というとまた難しそうな本に視線を戻す。
「ごゆっくりどうぞ。」
この日がずっと続けばいいのに。
少なくとも、私が大学で過ごす間は。
名前はなんだろう。
読書が趣味なら、おすすめは?
今まで一番面白かった本は?
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「美緒、早くない?」
「あ、うん。
なんとなく、読書したくて。
拓朗も昔から本好きだったよね。」
今日は幼馴染である拓朗とランチの約束。
私も拓朗も大阪から出てきたけど、
もうほとんど関西弁はでない。
「どう、最近。」
「伊沢拓司さんって知ってる?」
「あぁ、クイズ王の?
たまにテレビでも出てるよね。」
「そう、YouTubeを始めるらしくて、
その手伝いをすることになった。」
「…え?拓朗、YouTuberやるの⁉」
「…そういうことになる。」
「まーじーか!」
拓朗がYouTuberデビューか。
まぁ、今はこういうご時世だしなぁ。
「美緒は。最近変わったことないの?」
「私?私は…えへへ、久しぶりに恋をしました。」
「…は?」
拓朗の目が点になる。
それもそのはず、高校まで女子高で、
近くの男性と言えば拓朗のみ。
でも拓朗は本当に親友である。
「珍しい。どこのだれ?」
「名前はわからないの。
でもね、私のバイトしてる喫茶店の常連さんなの。
素敵なのよ?」
「いや、何も伝わらない。」
「もうっ…、メガネをかけてて、
あ、最近パーマをかけたみたい。
私服なのに蝶ネクタイを付けてる時があって…
ブラックのコーヒーで読書してるわ。」
「…ふぅん」
「もう、なに?
そっちから聞いてきたくせに。」
考え込むように、
いつもの癖で口元に指をあてる拓朗。
「今度、オフィスに遊びに来なよ。」
「え?申し訳ないよ。
伊沢さんのファンもいるわけだし…
知り合いだからって…、」
「いいから。」
「そう?」
こうして拓朗とオフィスとやらにお邪魔することが決まった。
約束は1週間後の土曜日。
なんだかドキドキしちゃう。
東大の知識王に会えるのだもの。
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住所を渡されたのはとあるマンションの一室。
恐る恐るインターホンを押すと、
「美緒?」と拓朗の声。
自動ドアが開いて中に入ると、
部屋の扉の前で拓朗が待っていてくれた。
「お疲れ。」
「お疲れ様。これ、少しだけどお菓子。」
「いいのに。気、使わなくて。」
「そういうわけにはいかないわよ。」
オフィスを開けると廊下にすでにホワイトボード。
「お邪魔しまーす…。」
玄関には男物の靴が4足。
「なんか靴多くない?」
「伊沢さんと、ネット記事のライターさんが何人か今日はいるから。」
「へぇ…そうなの…」
奥の部屋の扉を拓朗がガチャリと開けて
「美緒、来ましたよ伊沢さん。」
と声をかける。すると中から「おぉ、」と返事。
「やだ、緊張する。」
「はい、入りまーす。」
腕をぐいぐいと引かれて中に飛び込む。
拓朗のドS野郎め。
心の準備ができないまま顔を上げると、
「あ、」
見慣れた人物を中に見つけた。
「おや。」
彼も私に気が付くと不思議そうに首を傾げた。
「あれ、河村さん、美緒と知合いですか?」
「あぁ、彼女の働く喫茶店に僕がよく行くんですよ。
ご主人の珈琲がおいいくてね。」
ふわりと笑う彼は今日も美しい。
長い脚を優雅に組んで膝の上にパソコンが置かれている。
「へぇ。」
すべてを悟ったように拓朗がにやりと口元を上げる。
「た、拓朗!挨拶!伊沢さんに挨拶しなきゃ!」
余計なことを言われる前にと腕をつかむ。
舌打ちが聞こえてきそうな顔をされるがそんなこと知ったこっちゃない。
「初めまして。綾瀬です。お茶の水女子大の3年です。
拓朗がいつもお世話になってます。」
「初めまして、QizuKnock編集長の伊沢です。」
爽やかに笑う伊沢さんはテレビのまんま。
こりゃ、女の子におモテになりますわ。
「で、実際のところどうなの?」
「はえ?」
「川上と。付き合ってないの?
随分仲良さそうだけど。」
「はっ⁉いやいやいや!
拓朗なんて腐れ縁ですよ⁉
まぁ、顔は悪くないし頭もいいですけど!
こんなの絶対に彼氏にしたくないです。」
「まぁ美緒好きな人いるしな。」
「ちょっと!!」
「ほぉ、それは僕も気になりますね。」
「俺も。好きな人ってことは、彼氏はいないんだ。」
そこで何で乗ってくるんですかお兄さん方!
こんな人たちばっかりですか⁉
この会社は!
「この際だから、言っちゃえば。」
コソリと拓朗が耳打ちをしてくる。
無理。絶対無理。
そんな目で見てたなんてバレたらもうお店に来てもらえない。
「ふむ。面白くないですね。」
すると彼がメガネの奥からじ、とこちらを見つめて一言。
「え…」
全身から血の気が引く。
え、やばい?
この一瞬で嫌われた⁉
「あ、ご、ごめんなさい、
うるさくして…、」
「いえ、そうではなくて。」
彼は静かに手で制すると、拓朗の腕を引っ張る。
これは、まさか。
そういうことですか?
彼、拓朗のことが好き⁉
ていうかすでに恋人⁉
「た、拓朗の裏切り者ー!」
「いや、なんでそうなる。」
きっと先週の私の恋バナを
心の中で笑ってたんだ。
「綾瀬美緒さんといいましたか。」
「は、はひっ、」
「僕は貴方のことが好きであの喫茶店に通ったんです。」
「はい?」
「ですから、貴方が好きなので
川上と仲良くしている様を目の当たりにするのは面白くはありません。」
部屋が異様に静かだ。
いや、異様でもない。
この部屋にいる人、
すべてが彼の言葉に黙りこくってしまった。
「え、と…」
「話したこともなく気持ち悪いでしょうが…、
僕は貴方の事が好きです。」
なんとなく最初は混乱したものの、
状況をよく吟味すると途端に顔が熱くなる。
「あっ、えっ、」
「河村さん。
こいつも河村さんの事好きだって言ってます。」
「なんで言うのよ!!拓朗のおバカ!」
自分より幾分か身長の高い拓朗を叩こうとした手は
彼に紳士的につかまれて、
白い大きな手できゅ、と握られた。
「して、綾瀬さんのお返事は?
川上の言葉ではなく、貴方の言葉でお聞きしたい。」
「…私も、貴方がずっと好きでした。」
聞こえてるんだろうか。
今までにないぐらいに小さい声だったような気がする。
「それはよかった。」
にこりと笑った彼の美しい事。
あぁ、こんなので今後彼の隣にいられるのだろうか。
もう4つぐらいは心臓が欲しい。
**Fin**
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