さあ映画を見よう(山本祥彰・福良拳)
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「うわぁぁぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁ!」
撮影部屋から各々の叫び声が聞こえる。
ただいまキズナアイちゃんとコラボ撮影中。
河村さんがちょうどホラードッキリを行い終わったところだろうか。
「こんなのどう?」
自分の写真をホラー風に加工したものを見せてきたときの河村さんの輝いてる顔よ。
大成功したらしく、数十分後、げっそりした編集長、山本くん、福良さんと、清々しい顔をした河村さんが執務室に帰ってきた。
「河村さん、大成功みたいですね!」
「めっちゃ楽しかった。」
「え⁉美緒ちゃん知ってたの⁉」
福良さんが驚いたように目をむく。
「いや、加工した河村さんの写真を見ただけです。」
「言ってよ、もー!」
怖いのがあまり得意じゃない福良さんは頬を膨らまして抗議してくる。
はい、可愛い。
ここで、
私は今日、自分が見るようにレンタルショップで借りたDVDを思い出す。
「皆さん夜お時間ありますか?映画鑑賞しません?」
何も知らずに「お、いいね!」と反応したのは山本くん。
「最近見てないから見たいかも」と福良さん。
「今日は東大王の打ち合わせが」と編集長。
「用事があるから帰る」と河村さん。
「じゃあ山本くんと福良さん、3人で決定ですね!」
無意識なのか口角が上がったらしい。
河村さんは私の肩をぽんと叩くと小さな声で「録画よろしく」と一言。
任せてくださいよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方にかけて飲み物やご飯の買い出しを終え、
テーブルの上に準備。
モニターの横にひっそりと設置させたカメラは暗闇対応にしてある。
ソファーに3人で並んで座って部屋の電気を消す。
「え?電気けす必要ある?」
「え?消さないの?」
疑問を口にした福良さんに私が疑問で返すと、
まさかというようにテーブルに置かれたレンタルショップのケースを開ける。
「嘘だ…。」
今日見る映画は有名なアメリカのホラー映画。
山本くんもパッケージを見て顔を引きつらせる。
「見ないの?」
にこやかに再生ボタンを押すと
「「ムリムリムリ!!!」」
と両端から腕を掴まれる。
懇願されるように見つめられる。
そんな可愛いお顔で見つめられたらあきらめようかと思ってしまうが、やはり二人の怖がる姿はこの目に焼き付けておきたい。
「ねぇ、美緒ちゃん、本当にダメ?」
山本くんがチワワのごとく見つめてくる。
しかし私の答えは
「ダメです♡はーい、押しますよー」
再生ボタンを無慈悲にも押し、震える二人を両腕に携えて
映画が始まったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
映画終了後。
「はぁ…はぁ…」
2人はもう叫びすぎて息切れ寸前。
声も心なしかガラガラだ。
「河村の画像より怖いじゃん!」
と若干涙目の福良さんに縋りつかれる。
「そうですか?」
映画館で見なかったら借りたものの、
友人たちに言われたほど怖くなかった気がする。
首をかしげると福良さんのメガネの奥が何故と言いたげに見つめてくる。
「うぅ…怖くて帰れない。」
山本くんが勢いに任せて缶酎ハイを煽る。
お酒で何とかしようという魂胆か。
「僕も…今日ここに泊まろうかな。」
福良さんの言葉に「僕も」と山本さんが続く。
「そうですか。
じゃあ私イイ感じにお酒飲んだから帰りますね。」
自分も手に持った缶ビールの残りを口の中に入れ、
ごくりと嚥下する。
「「え?」」
食べ物に手を付けようとしていた2人が振り向く。
「…え?」
「待って美緒ちゃん帰るの?」
「や、当たり前じゃないですか。私ココから2駅だし…、」
「僕たちを置いて?」
「いや、山本くん福良さんもいるじゃん。」
「怖いのダメな2人置いても意味ないじゃん!
お願い一緒に居て!」
「ぎゃっ、」
福良さんの長い腕が腰に絡みついてくる。
そして背も大きくて意外と方幅の広い福良さんは意外と重たいのだ。
「重いです福良さん。」
「やだ、美緒ちゃんが一緒に居るって言うまで離さない。」
「くそ可愛い。」
ほんのり酔っぱらって少し駄々っ子になった福良さん。
「帰りますけど離してください。」
そう言ってグイグイと肩を押すとさらに足にすり寄ってくる。
どうしたものかとため息をつくと横からツイと袖を引っ張られる。
「美緒ちゃん…」
今にも泣きだしそうな山本くんだった。
心臓がぎゅうと締め付けられる。
「わかった!私も泊まるからね!」
小柄な彼を腕の中に収めると、下から「ちょっと」と不服そうな声。
「なんで俺はだめで山本はいいわけ、」
「はいはい、拗ねないでくださいねー。」
山本くんのサラサラの髪を梳くように撫でると、
腹黒属性を持つ彼は自分のお願いが通った瞬間私から離れていく。
なんて世知辛い世の中。
「お風呂…、」
お酒を飲んだたため少しフラフラとしながら山本くんが自分のクリアボックスを漁る。
「ちょっと、山本くん。
お風呂入るなら福良さんも一緒に!
多分後で一人だと怖いって言って入らないから!」
「えー…、」
なんだって福良さんはこんなにべろべろなのだろうか。
と床を見ると
福良さんの足元に転がる何本ものストロング缶。
…これか!
大してお酒強くないくせに!
山本くんはまだ私に縋りついている福良さんを見て明らかに嫌そうな顔をする。
「溺れると困るし、
福良さんは明日の朝シャワーでいいよ。」
無慈悲にそれだけ言い残すと「じゃあ行ってくるから絶対帰っちゃだめだからね!」と念を押してお風呂に。
山本くん、お風呂は怖くないのだろうか。
と思った矢先がしゃんという音とともに「ひっ、」と聞こえてきたので相当無理をしているとみる。
仕方ない、山本くんが帰ってくるまでお布団の準備でもしますか。
「福良さーん。私撮影部屋からお布団持ってきますから
離れてくださーい。」
「むう…、」
「だめだこりゃ…、よいしょっと…、」
無理やり福良さんを引きはがし、ごろりと床に置く。
急いで撮影部屋に行きお布団を持ってくる。
一組しかないため、お布団には福良さんと山本くんを寝かせて、
私はデスクのブランケットを羽織ってソファで寝るとしよう。
「ほーら、福良さん。お布団ですよー。」
彼をごろごろと転がしてお布団に寝かせる。
「美緒ちゃんは、」
「あー私は後でお風呂入るんでまだ寝ませーん。
もう少しで山本くん帰ってきますからね。」
幼稚園児をお世話しているようだ。
「…こら、」
私の言葉など聞いてないのかぐいぐいと私の腕を引く。
強い強い!
「い、痛いです福良さん、」
メガネが邪魔になったのか片手でメガネをはずして放り投げる。
「ぎゃー!!福良さんのアイデンティティが!」
見た感じレンズは割れてないがフレームがひしゃげちゃいないか心配だ。
「っと、わっ!」
メガネに気を取られた隙に布団の中に引きずり込まれて見事に抱き枕に。
これは非常にヤバイ。
すると浴室の扉が開く音がした。
「山本くん!ヘルプ!助けて!」
パタパタと音が聞こえてきてガチャリと開く。
「あー!」
ジャージを着た山本くんに指をさされる。
「叫んでる場合じゃない!助けて!」
「僕も。」
「はぁ⁉」
タオルを放り投げてもそもそと福良さんとは反対側にくっついてくる。
「こら!お風呂入ったんなら少し酔い覚めたでしょ⁉
福良さん引きはがしてよー!」
「もういいじゃん、このまま川の字で寝れば。」
「一つの布団に3人は狭すぎ!
私つぶれる!」
「もー!うるさい!」
前から福良さん後ろから山本くん。
ファンが見たら卒倒する。
山本くんは私の意見を一蹴りにするとスヤスヤと眠りに入ってしまった。
福良さんはとっくの昔に夢の中。
「あ、あのー。山本くん?」
声をかけるも反応はなし。
しかたない、この状態で寝るか。
男二人に挟まれてその場を抜け出せるほど力が強いわけではないし…。
少し重たくなった瞼を閉じて私も夢の中に引き込まれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「美緒さん、」
ゆさゆさと身体を揺さぶられる。
お布団あったかいもう少しと顔を埋めると
「どういう状況か説明してください。」
「んむ…?」
うっすらと目を開けると長いまつげと白い肌が目に入る。
そして背中もあったかい。
朝日が眩しい。
目を細めて声の主を確かめる。
「おはようございます、川上さん…ふぁ…。」
「いや、おはようございますじゃなくて。」
「何時ですか?」
「8時ですけど。いやそうじゃなくて。」
ごまかそうと思ったけど不可能らしい。
「…昨日、ホラー見てたら、二人が怖がるから。」
「で、こうなったと。」
「いや二人とも怖さを紛らわそうとお酒をたくさん飲んだようで。」
視線でソファの奥を指すと、川上さんは納得したように「あぁ」とつぶやいた。
「おっすー…、って、え?」
「あ、伊沢さん。」
そこに現れたのは編集長。
彼もまた目が点。
「いや、あのさ。
社内恋愛は禁止してないけど、
場所と人間関係はわきまえてね?」
「違いますから!」
声を荒げると前後がもぞもぞと動く。
この騒がしさでよくもここまで寝れたものだ。
「…頭、痛い…、」
眉間にしわを寄せて目を開いたのは福良さん。
「おはようございます。福良さん。」
「うん、おはよう…おはよう?
わぁぁぁぁぁ!」
「い゛っ…⁉」
耳が痛い。叫ばないでほしい。
目の前に私がいることに吃驚したのか、慌てて起き上がる。
「えっ、なっ、はっ⁉」
ようやく解放された私も起き上がって、
同じ姿勢で固まった首や肩を動かす。
起き上がった拍子に山本くんは仰向けに転がり
ぱちりと目を覚ます。
「あ…れ?」
と一言。
「おはよう山本くん」
「え、おはよう美緒、ちゃん。」
「昨日は大変可愛らしかったよ。」
微妙に記憶は残っているのか途端に顔が赤くなる。
あたふたしている福良さんと顔を赤くする山本さん。
立ち上がってさりげなくカメラを確認すると、
まだランプがついていた。
あとでこっそり回収して
河村さんと大鑑賞会ですね。
「…強引な福良さんと小悪魔な山本くんも悪くないですねー」
と口に出すと
「うちの社員に変なことさせるのやめなさい」
と編集長に怒られました。
**Fin**
「ぎゃぁぁぁ!」
撮影部屋から各々の叫び声が聞こえる。
ただいまキズナアイちゃんとコラボ撮影中。
河村さんがちょうどホラードッキリを行い終わったところだろうか。
「こんなのどう?」
自分の写真をホラー風に加工したものを見せてきたときの河村さんの輝いてる顔よ。
大成功したらしく、数十分後、げっそりした編集長、山本くん、福良さんと、清々しい顔をした河村さんが執務室に帰ってきた。
「河村さん、大成功みたいですね!」
「めっちゃ楽しかった。」
「え⁉美緒ちゃん知ってたの⁉」
福良さんが驚いたように目をむく。
「いや、加工した河村さんの写真を見ただけです。」
「言ってよ、もー!」
怖いのがあまり得意じゃない福良さんは頬を膨らまして抗議してくる。
はい、可愛い。
ここで、
私は今日、自分が見るようにレンタルショップで借りたDVDを思い出す。
「皆さん夜お時間ありますか?映画鑑賞しません?」
何も知らずに「お、いいね!」と反応したのは山本くん。
「最近見てないから見たいかも」と福良さん。
「今日は東大王の打ち合わせが」と編集長。
「用事があるから帰る」と河村さん。
「じゃあ山本くんと福良さん、3人で決定ですね!」
無意識なのか口角が上がったらしい。
河村さんは私の肩をぽんと叩くと小さな声で「録画よろしく」と一言。
任せてくださいよ。
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夕方にかけて飲み物やご飯の買い出しを終え、
テーブルの上に準備。
モニターの横にひっそりと設置させたカメラは暗闇対応にしてある。
ソファーに3人で並んで座って部屋の電気を消す。
「え?電気けす必要ある?」
「え?消さないの?」
疑問を口にした福良さんに私が疑問で返すと、
まさかというようにテーブルに置かれたレンタルショップのケースを開ける。
「嘘だ…。」
今日見る映画は有名なアメリカのホラー映画。
山本くんもパッケージを見て顔を引きつらせる。
「見ないの?」
にこやかに再生ボタンを押すと
「「ムリムリムリ!!!」」
と両端から腕を掴まれる。
懇願されるように見つめられる。
そんな可愛いお顔で見つめられたらあきらめようかと思ってしまうが、やはり二人の怖がる姿はこの目に焼き付けておきたい。
「ねぇ、美緒ちゃん、本当にダメ?」
山本くんがチワワのごとく見つめてくる。
しかし私の答えは
「ダメです♡はーい、押しますよー」
再生ボタンを無慈悲にも押し、震える二人を両腕に携えて
映画が始まったのだった。
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映画終了後。
「はぁ…はぁ…」
2人はもう叫びすぎて息切れ寸前。
声も心なしかガラガラだ。
「河村の画像より怖いじゃん!」
と若干涙目の福良さんに縋りつかれる。
「そうですか?」
映画館で見なかったら借りたものの、
友人たちに言われたほど怖くなかった気がする。
首をかしげると福良さんのメガネの奥が何故と言いたげに見つめてくる。
「うぅ…怖くて帰れない。」
山本くんが勢いに任せて缶酎ハイを煽る。
お酒で何とかしようという魂胆か。
「僕も…今日ここに泊まろうかな。」
福良さんの言葉に「僕も」と山本さんが続く。
「そうですか。
じゃあ私イイ感じにお酒飲んだから帰りますね。」
自分も手に持った缶ビールの残りを口の中に入れ、
ごくりと嚥下する。
「「え?」」
食べ物に手を付けようとしていた2人が振り向く。
「…え?」
「待って美緒ちゃん帰るの?」
「や、当たり前じゃないですか。私ココから2駅だし…、」
「僕たちを置いて?」
「いや、山本くん福良さんもいるじゃん。」
「怖いのダメな2人置いても意味ないじゃん!
お願い一緒に居て!」
「ぎゃっ、」
福良さんの長い腕が腰に絡みついてくる。
そして背も大きくて意外と方幅の広い福良さんは意外と重たいのだ。
「重いです福良さん。」
「やだ、美緒ちゃんが一緒に居るって言うまで離さない。」
「くそ可愛い。」
ほんのり酔っぱらって少し駄々っ子になった福良さん。
「帰りますけど離してください。」
そう言ってグイグイと肩を押すとさらに足にすり寄ってくる。
どうしたものかとため息をつくと横からツイと袖を引っ張られる。
「美緒ちゃん…」
今にも泣きだしそうな山本くんだった。
心臓がぎゅうと締め付けられる。
「わかった!私も泊まるからね!」
小柄な彼を腕の中に収めると、下から「ちょっと」と不服そうな声。
「なんで俺はだめで山本はいいわけ、」
「はいはい、拗ねないでくださいねー。」
山本くんのサラサラの髪を梳くように撫でると、
腹黒属性を持つ彼は自分のお願いが通った瞬間私から離れていく。
なんて世知辛い世の中。
「お風呂…、」
お酒を飲んだたため少しフラフラとしながら山本くんが自分のクリアボックスを漁る。
「ちょっと、山本くん。
お風呂入るなら福良さんも一緒に!
多分後で一人だと怖いって言って入らないから!」
「えー…、」
なんだって福良さんはこんなにべろべろなのだろうか。
と床を見ると
福良さんの足元に転がる何本ものストロング缶。
…これか!
大してお酒強くないくせに!
山本くんはまだ私に縋りついている福良さんを見て明らかに嫌そうな顔をする。
「溺れると困るし、
福良さんは明日の朝シャワーでいいよ。」
無慈悲にそれだけ言い残すと「じゃあ行ってくるから絶対帰っちゃだめだからね!」と念を押してお風呂に。
山本くん、お風呂は怖くないのだろうか。
と思った矢先がしゃんという音とともに「ひっ、」と聞こえてきたので相当無理をしているとみる。
仕方ない、山本くんが帰ってくるまでお布団の準備でもしますか。
「福良さーん。私撮影部屋からお布団持ってきますから
離れてくださーい。」
「むう…、」
「だめだこりゃ…、よいしょっと…、」
無理やり福良さんを引きはがし、ごろりと床に置く。
急いで撮影部屋に行きお布団を持ってくる。
一組しかないため、お布団には福良さんと山本くんを寝かせて、
私はデスクのブランケットを羽織ってソファで寝るとしよう。
「ほーら、福良さん。お布団ですよー。」
彼をごろごろと転がしてお布団に寝かせる。
「美緒ちゃんは、」
「あー私は後でお風呂入るんでまだ寝ませーん。
もう少しで山本くん帰ってきますからね。」
幼稚園児をお世話しているようだ。
「…こら、」
私の言葉など聞いてないのかぐいぐいと私の腕を引く。
強い強い!
「い、痛いです福良さん、」
メガネが邪魔になったのか片手でメガネをはずして放り投げる。
「ぎゃー!!福良さんのアイデンティティが!」
見た感じレンズは割れてないがフレームがひしゃげちゃいないか心配だ。
「っと、わっ!」
メガネに気を取られた隙に布団の中に引きずり込まれて見事に抱き枕に。
これは非常にヤバイ。
すると浴室の扉が開く音がした。
「山本くん!ヘルプ!助けて!」
パタパタと音が聞こえてきてガチャリと開く。
「あー!」
ジャージを着た山本くんに指をさされる。
「叫んでる場合じゃない!助けて!」
「僕も。」
「はぁ⁉」
タオルを放り投げてもそもそと福良さんとは反対側にくっついてくる。
「こら!お風呂入ったんなら少し酔い覚めたでしょ⁉
福良さん引きはがしてよー!」
「もういいじゃん、このまま川の字で寝れば。」
「一つの布団に3人は狭すぎ!
私つぶれる!」
「もー!うるさい!」
前から福良さん後ろから山本くん。
ファンが見たら卒倒する。
山本くんは私の意見を一蹴りにするとスヤスヤと眠りに入ってしまった。
福良さんはとっくの昔に夢の中。
「あ、あのー。山本くん?」
声をかけるも反応はなし。
しかたない、この状態で寝るか。
男二人に挟まれてその場を抜け出せるほど力が強いわけではないし…。
少し重たくなった瞼を閉じて私も夢の中に引き込まれた。
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「美緒さん、」
ゆさゆさと身体を揺さぶられる。
お布団あったかいもう少しと顔を埋めると
「どういう状況か説明してください。」
「んむ…?」
うっすらと目を開けると長いまつげと白い肌が目に入る。
そして背中もあったかい。
朝日が眩しい。
目を細めて声の主を確かめる。
「おはようございます、川上さん…ふぁ…。」
「いや、おはようございますじゃなくて。」
「何時ですか?」
「8時ですけど。いやそうじゃなくて。」
ごまかそうと思ったけど不可能らしい。
「…昨日、ホラー見てたら、二人が怖がるから。」
「で、こうなったと。」
「いや二人とも怖さを紛らわそうとお酒をたくさん飲んだようで。」
視線でソファの奥を指すと、川上さんは納得したように「あぁ」とつぶやいた。
「おっすー…、って、え?」
「あ、伊沢さん。」
そこに現れたのは編集長。
彼もまた目が点。
「いや、あのさ。
社内恋愛は禁止してないけど、
場所と人間関係はわきまえてね?」
「違いますから!」
声を荒げると前後がもぞもぞと動く。
この騒がしさでよくもここまで寝れたものだ。
「…頭、痛い…、」
眉間にしわを寄せて目を開いたのは福良さん。
「おはようございます。福良さん。」
「うん、おはよう…おはよう?
わぁぁぁぁぁ!」
「い゛っ…⁉」
耳が痛い。叫ばないでほしい。
目の前に私がいることに吃驚したのか、慌てて起き上がる。
「えっ、なっ、はっ⁉」
ようやく解放された私も起き上がって、
同じ姿勢で固まった首や肩を動かす。
起き上がった拍子に山本くんは仰向けに転がり
ぱちりと目を覚ます。
「あ…れ?」
と一言。
「おはよう山本くん」
「え、おはよう美緒、ちゃん。」
「昨日は大変可愛らしかったよ。」
微妙に記憶は残っているのか途端に顔が赤くなる。
あたふたしている福良さんと顔を赤くする山本さん。
立ち上がってさりげなくカメラを確認すると、
まだランプがついていた。
あとでこっそり回収して
河村さんと大鑑賞会ですね。
「…強引な福良さんと小悪魔な山本くんも悪くないですねー」
と口に出すと
「うちの社員に変なことさせるのやめなさい」
と編集長に怒られました。
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