他短編夢
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今日も疲れた。眠い。眠すぎる。どうしてこう毎日寝る時間がないのか。
人手が足りないにしても寝る間もないなんて人間の尊厳が失われる。
どよどよとした感情を背負いながら家へ帰れば「おかえり」と僕の奥さんである名前が棒型のアイスを食べながらのほほんと出迎えてくれた。
「ただいまかえりました」
「お疲れ様。子供はもう寝てるよ」
「そうですかそうですか…顔だけでも見ておこう…」
お風呂に入ってご飯を食べてから、寝室に向かって子供の寝顔を見れば眠気は取れることはなかったが疲れはいくらかとんでいった。どうして子供というのはこうも親を癒してくれるのだろう。
よしよし、と頭を撫でて見つめていればいつのまにか寝ていたのか、嗅ぎ慣れた匂いによってハッと起こされた。
子供部屋からリビングに戻れば名前はテーブルに二つハーブティを置いてくれていた。
向かい合って座ればその振動でお茶がゆらりと揺れる。
「今日もお疲れ様」
「お茶、ありがとうございます」
ズズズ、と一口。彼女は音を立てても怒らないしなんだったら彼女もズズズと音を立てて飲むのだ。
飲んで鼻に抜けていくハーブティの香りにホッとする。ああ、今日も仕事終わった。このお茶を飲まなきゃ一日の終わりだと感じることができない。それだけ僕は彼女のハーブティを飲んできたんだなぁ、とぼんやり思う。
この時間は結婚して一緒に住むようになってからだけど、いつも仕事の関係で緊張しながら寝ている僕の様子を見た名前が少しでも安眠できるようにとある時からハーブティを入れてくれるようになったのだ。
最初は入れ方が雑で少々味が微妙だったりしたこともあった。けど今の彼女が入れるハーブティはもうめちゃくちゃ美味い。それぐらいとても美味しいし安心するのだ。
「今度のお休み、一緒に出かけられそう??」
「確実に休みが取れるように有給も使いました。もぎ取ります」
お茶を飲んでからいつもは覇気のない声を少し張ってみて言えば名前は頬杖をつきながら可笑しそうに、でも嬉しそうに笑ってくれた。
ああ、この笑顔好きなんだよなぁ。
「愛してます」
「え?どうしたの、急に」
「いつでも思ってるので急じゃないです」
「あ、ありがと」
「照れてるの可愛いです」
「…」
あぁ、あんまり攻めたから今度はちょっと拗ねてる。でも仕方ない。事実だ。
謝る必要もないので一口ハーブティを口に含めば、頬杖をついた状態で口元を隠した名前が顔を少し下げた状態でジロリとこちらを睨んでいた。
耳まで真っ赤な状態なので、特に怖さもなくただただ愛おしさが増すだけでなんの効果もない。
「…そんなに可愛いって思うんだったらギュッてしてよ」
撤回します。効果絶大。
言われた瞬間飲んだお茶が変な所に入って盛大にむせ、鼻にもちょっと入ってしまったせいかめちゃくちゃツーンと痛い。ああ、目頭までそんな。
でもそんなの関係ない。僕は心配の声を上げる彼女を無視してしっかりと抱きしめた。
「げほげほ」
「ああ、もう噎せながら抱き締めないの!」
「げっほ、っでも…こうしたら僕の奥さんがげほっさすってくれる」
「全く…!」
呆れながらも名前は僕が言うように背中を擦ってくれる。優しいですホント。
この騒ぎで寝ぼけ眼で起きてきた子供が「あーっお父さんだ!」と言って僕たちの腰に抱きつくまであと二分。
それまで僕たちは恋人のように抱きしめ合うのだった。
今日はベッドに入ってもすぐには眠れないかもしれないですね。
なんて。
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