①幼少期~雄英受験
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朝。私はいつも通りの時間に公園へ来ていた。
最後の仕上げだ。
「よし。ギリギリ間に合ったな」
「消さん!ほんっっっとーーーに!ありがとうございました!!!」
「今日で本当に最後だ。雄英の試験、頑張りなさい」
「はい"…っ!」
ズズ、と涙と鼻水を引っ込めて精一杯の感謝を込めて正面から抱き締めると、消さんは驚いていた。
「…今日の弟子はずいぶん素直だな」
「消さぁん…私いつも素直だよ…」
この男は本当に。
若干イラッとしたのでキツイくらいに抱きしめた。
今は個性使っていて力も強くなっているから相当キツイはず。
予想通り、上から少し呻き声が聞こえたが知らないフリだ。
「苦しいから離れてくれ」
「えー」
なんて戯れているとベリッと簡単に剥がされた。
あ、少し鼻水ついてる。ごめん消さんいわないどくね。
「…さて、いい加減俺も行かないとだ。今日は俺も用事があってな。」
「そうなの?」
「ああ。じゃあまたな」
「うん、また縁があれば!いってきます!」
鞄を持って雄英高校に受験に行くと、中学とは違い、建物の規模がとても大きかった。
まずゲートがあるってどういうことさ…。
「はー、これが雄英…」
「どけチビ!」
「わっ…!」
驚いて通り過ぎて言った人物を見ると、それはもう人相の良くないヴィラン顔負けの悪人ヅラの男の子だった。
「ああ?何見てんだこら」
「あ、ううん何でもないよ、ごめんね」
「けっ!」
ドカドカとガラ悪く去って行く男の子。
…何と言えばいいのか。
私自身の精神だか中身だかが消さんよりも年上…っていう年齢だからこの男の子がどれだけメンチ切られても特に怖いというのは出てこない。
むしろ…。
「若いな…」
この感想しかない。
悲しいよ全く、と思っていると他校の受験生がひそひそ話をしているのが聞こえた。
「おい今のって…」
「ヘドロ事件の…」
ヘドロ事件?
脳内に検索をかけてみる。ああ、そう言えば最近ヘドロの個性のヴィランに襲われた学生がいたっていうニュースがあったな。
「あれか」
大変ねぇあの若者も…と思って見ていたら、私の左側を横切ろうとした男の子が盛大に転びそうになっていた。
「っぶな!」
助けようと腕を掴んで引っ張ると、それは予想外にもふわりと動いた。
あれ?とお互い目を合わせて見るも、お互いの個性ではないらしい。
よく見ると男の子の横にもう一人女の子が立っていた。
その子は浮いた男の子に大丈夫?と聞いてから下ろすと、非常に麗らかな笑顔で話しを続けた。
「私の“個性”。ごめんね勝手に!でも転んじゃったら縁起悪いもんね」
緊張するよねぇ、とのんびりしたような声で喋る女の子と完全にキョドキョドとしてしまっている男の子。
そうしている間に彼女は「お互い頑張ろう」と去ってしまった。
いや、それでいいのか男の子………あ、でもわりと満足そうな顔をしている。
完全に私は忘れられていそうなのでこの場を去ることにした。
会場に入って始まるのを待つと、プレゼント・マイクが説明をしてくれた。
そういえば消さんと訓練してる時、雄英の出身だって言ってたなぁ。
あの人と同期だったみたいだけど昔からああいう髪型だったんだろうか。ハゲそう。
なんて考えているとプレゼント・マイクに質問をしている子がいた。
あれは完全に学級委員長のタイプだ。
あ、さっき助けた?子が怒られてる。縮毛て。いや合ってるけど。
≪それでは良い受難を!!≫
ああ、終わった。
えーとなになに。A会場に移動…あっちか。
皆更衣室に行って制服から自前の動きやすい服に着替えて行様子を見て私もそれにならう。
そしてA会場に行くとそこには街があった。
「すご…あ、さっきの若者だ」
集団の中にひときわ目立つ人相ですぐにわかった。
なんかこっち見た気がしたけどさも見てません感を出して目を伏せた。
同列だとしてもかなり遠くから見てたのに視線に気付くとか敏感すぎでしょ。獣か。
≪はいスタート!≫
(お、はじまった)
言葉通り普通にスタートするとプレゼント・マイクが催促する言葉が聞こえた。
≪どうしたあ!?試験を受けるのは一人だけかぁ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?≫
その声とともにドドドドと後ろから足音が聞こえてくる。
おお、流石雄英の受験者なだけある。みんな反応速度早い。
でも私だって負けない。
市街地に入るとともに有象無象いる仮装敵をまず戦艦モードに換装して一発お見舞いしてやる。
一番乗りだから人を巻き込む事はないので思い切りやっても大丈夫だろう。
「この46cm砲をくらってみなさいな!ってーーー!!!」
轟音とともに正規空母に換装するやいなや
そしてすぐにモールス信号で連絡が入り、1P仮装敵を2体倒してくれたようだった。
艦攻達に乗っている小さな妖精さんには礼を言って、『こちらに引き返しつつ倒せそうなのがいれば撃破。ただし無理はせずに帰還せよ』と命令し、換装を解きながら仮想敵がいる方へ向かった。
燃料は限られている。少しでも節約しながら行って頑張るぞ。
「退きやがれクソチビ!」
「おわっ!」
そう思った矢先、誰かが口汚い罵倒と共に私を追い抜き、少し先にいた仮装敵を倒した。
うわ、ヘドロの子だ。別にいるのはいいけど関わるのは面倒だ。
さっさと消えよう。
…しかし。
「ってなんで付いてくるのさ!?」
「あ!!?うるせぇな勘だわ!」
怖い。私は情報あるからどこの地点に仮想敵がいるかわかるけれど、全部勘やら物音で敏感に反応してる。
「っ私も見習わなきゃね!」
軽巡洋艦に換装して主砲を撃てばまた一体、また一体と撃破していく。
そんな中、後ろの方でも大きな物音がして勢いよく仮想敵の破片が飛んできた。
それはヘドロ君の背後へ向かっていて、ダッシュで私は向かった。
「危ない!」
「!」
ヘドロ君に覆いかぶさり、腕の艤装で弾いて防いだ。
きっと他の受験生が暴れた時に飛んできた破片だろう。
「っぶな…大丈夫?」
「おい!重ェんだよ!!!んなもんすぐ避けれたわ!」
「あ、ごめん。避けるわ」
よいしょと立ち上がって、じゃあね!と今度こそヘドロ君の前から去った私は大急ぎでもう一度空母に換装して戻ってきた艦攻たちを迎え、今度は遠くの敵を倒す目的で別の艦攻を発艦させた。
「っし。何だかんだ結構ギリギリだからあとは軽巡で……」
そうしようとした時だった。
先ほどよりも大きい轟音が聞こえ、振り返ると試験前に説明されていた噂のお邪魔ヴィランが出てきた。
「でっか…」
しかし私のいる位置は幸いにもアレから遠かった。
私は確実にポイントを取るため、艦攻達にあの大きな機体には近づかないよう指示し、引き続き戦った。
***
試験終了の声が響き、無事にベストを尽くせた実技試験。
筆記もまぁまぁ大丈夫くらいだろうという感じなので、のんびりお家で合否を待ちながらちゃんちゃんこを着てコタツに入ってみかんを堪能していた。至福。
そう思ってると玄関からパスン、と手紙が投函される音が聞こえた。
「きたきた」
「合否きたの?」
「うん。大丈夫だと思うけどちょっと部屋で見てくるー。」
自室に入り、とりあえず開けてみると手紙には普通入っていない機械が入っていた。
何だこれ、と思って手のひらに乗せて適当にいじるとそこから映像が流れてきた。
「うわ、ハイテク〜」
初めて見た機械にワクワクしてると、映像から艦澪
、と聞き慣れた声が私を呼んだ。
「…え、消……さん?」
≪筆記、実技共に申し分ない。合格だ。
因みに敵ポイントは55点。そして救助活動ポイント20点。
救助活動ポイントは雄英側が見ていたもう一つの基礎能力で審査制だ。
おめでとう。だがお前はまだまだ未熟だ。置いていかれないよう、更に頑張りなさい≫
プツンと映像はそこで終わった。
「えっと…どういうこと…?」
未だに理解できていない脳みそ。
そして私はやっと今まで先生に騙されていたのだと気づき、思わずその機械を掴み取って叫んだ。
「また騙したなぁあああああああああっっっっっ!!!?!?!!?????!」
何がまた縁があれば、だっっ!!!
あれ?でもそういや『またな』っていってた気が。
………。
「………いや、でもこれは普通にもうあれで最後だと思うでしょ。」
ほんといい加減にしろ。ドライアイ酷くさせてやろうか。
私は一体何度あの人に騙されれば気がすむんだろう…。
はぁ、とため息をついてひとまず親へ報告に足を運ばせた。
……正直、こんな残念な気持ちになる合格発表ほどないと思う…。