①幼少期~雄英受験
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あれから私は雄英高校に入るため、ヒーローである消さんに訓練を付けてもらえるようになった。
一応消さんには親に挨拶と説明をしてもらって許可を取ってもらった。
親からは成長の妨げにならないように過度な訓練は避けることと朝と下校時刻から門限までとの約束で快諾してくれた。ありがたい。
無事に許可を貰った私は早速朝5時にランドセルを持って集合場所の公園に着いて見渡すと、まだ消さんは来ていないようだった。
そういえば自分がまだ小学生とは言ってないなと思い出しランドセルはその辺に隠した。
「あれ?消さんまだ来てないや…早すぎたかな…」
因みに消さんと呼んでいるのは相澤さんと呼ぶのが面倒になったからだ。
もっとロマンチックな流れを期待していたらごめん…人生なんてそんなもんだ…!
あと、この名前を呼んだとき彼は下まぶたピクピクさせてた。
ああ、ちょっと嫌なんだな(笑)って笑ってスルーした。
10分ほどブランコに座って待ってたら消さんが来たので、小走りで向かっておはようと挨拶して訓練を始めることにした。
「お前の場合身体が小さいから敵にも狙われやすいだろう。
しかも遠距離型だから余計にだな。
何か習い事とかやってたか?体術くらいは使えたほうがいいだろ」
「あー…うん、そうだね。今は別に習ってないよ。
まぁ前世の方で海軍の学校に通ってたから、多少の体術への要領は得てるけれども。
鎮守府に着任してからはそんなに活用しなかったから自信はない」
「そうか。でもまぁあと2年もあればなんとか間に合うだろう。」
「え?3年じゃないの?」
「…?お前中学1年生だろ」
…しまった!
「あっ…そうか!」
「…大丈夫か?」
「う、うーん!寝ぼけてたのかも!たまにあるんだよね!はは!」
まっずーい!嘘ついてたの忘れてたーっ
でもサバ読んでたなんて今更言えなーい!
なんて内心汗ダラダラで誤魔化す。
何かめっちゃジッと見られたけどこれ以上変な動きはしない。しないんだから。
こないだの喫煙が中学生でもやばいのに小学生がやってたなんて知ったら絶対殴られるし!
「とりあえずどれくらい出来るか判断したい。いくぞ」
「へっ、ええ!?」
そんな急に!?と思っていると消さんの手がこちらに伸びてきて私の腕を掴んだ。
ぐん、と身体を動かして昔習った合気道を思い出しながら切り抜けていく。
小気味好く繰り出される手に対応していくと、この体はまだ知らないものの、前世での感覚を思い出して来て攻撃を捌くのに慣れてきた。
「はぁっ…はっ…まだまだ…っ」
それでもだいぶ消さんは手加減してくれてるだろうと思う。
まぁ、一応最初だし私がギリギリ切り抜けられるくらいの強さにはしてくれているんだろうなーと思いながら訓練していると顎を食らってしまった。痛い。
「いてて…」
「思っていたよりは出来たな」
「はぁ、はぁ…ホント?」
「全くの初心者よりは、だがな」
「はーっだよねー!」
知ってた!と叫びながら天を仰ぐとすっかり空は明るくなっていたので公園の時計を見ると8時だった。
「あっもうそろそろ学校いかなきゃならないから一旦家に帰るね!それじゃあ消さん!15時に海浜で!」
「ああ、いってらっしゃい。」
そんな感じでごまかして、こっそりと人目につかない場所に隠していたランドセルを背負って私は登校して行った。
ー…そんなやりとりで訓練をして二年。
「よし。これで終わりだな」
「…はい」
今日は訓練が最後の日だった。
結局この2年、消さんには1歳サバ読んでることを言えなかった。
毎日個性のことや体術について厳しくも優しく教えてくれた師匠。
なのにこんな恩を仇で返すようなことでいいのか…と、もやもや。
「澪」
「!な、何?」
「何か言いたそうだな」
ぎく、と露骨に肩をすくめて目をそらしてしまった私。しまった。
いや、もういっそ言ってしまうか……。
そう思い、くるりと消さんに背中を向けて口を開いて覚悟を決めた。
「…………実は1歳サバ読んでたって言ったら……怒る?」
「…ほう」
「っ最初会った時吸ってたのが小学生だともっとやばいと思ってごまかしてました!ごめンなさーい!」
バッと勢いよく消さんに向けて頭を下げて謝ると、何も答えてくれなかった。
「消さん…?」
少し顔を上げて相手を伺ってみるとあろうことか消さんは顔をそらし、口元を手で押さえて…肩を震わせて…た。
「…あの……」
「なんだ」
「つかぬ事をお聞きしますが」
「ああ」
「知ってたんですか?」
ぶはっ
「あああああああっもぉおおおおおおっっっ!!!
なんで分かった時点で言ってくれなかったのぉおおおおっっ!!!」
「元はと言えばお前が嘘吐いたからだろう」
「うっそうだけどっ…っ!えっというかいつから…!?」
「訓練二日目。朝お前がランドセル背負って公園にくるのを民家の屋根から見ていた。
必死に人目のつかないところにランドセル隠してたな」
いやぁあああっっずっと知ってたんだこの人ぉおおおっっ
私は必死に1つサバ読んでること誤魔化してたのにそれをこの男は陰で笑ってたんダァああっっ
ええいピースやめろ!おっさんがダブルピースしてチョキチョキするな!くそぉ!
「だが訓練は一応これで最後だ。」
「え」
「毎年俺は忙しいが4月からもっと忙しくなるんだ」
「………ベルトコンベアで流れて来たものが倒れてたら直す虚無った働くおじさんにでもなるの?」
「まだ反省してないみたいだな」
「いやぁっごめんっごめんなさいって!だから捕縛布で縛り付けるのやめてよ!」
「楽しいな」
楽しくないよこの陰キャ!
ギリギリ言ってるから体やばいから解放しろ!と思った瞬間、パラリと捕縛布を緩め、私を解放した。
「お前はこの二年間俺から教わり、残りの一年でどう仕上げるべきか、何をするべきか、わかっているはずだ」
「…うん、わかる」
「今までみたいな訓練は今日が最後だが、3ヶ月に一度くらいは時間作って経過を見てやる。」
「わかった。なんとか仕上げるね」
「ああ、期待してる」
ポンポン、と今までで一番優しい手つきで撫でられ、ほんの少しだけ目が潤んだ。
別に永遠の別れじゃないのにね。
さぁ、あと一年だ。踏ん張っていこう。